日本酒をぬる燗でおいしく飲む、その温度とポイント
日本酒は「ぬる燗」などのように温めると、香りがいっそう引き立ちます。日本酒を温める「燗」という習慣はいつからスタートしたのでしょうか? 燗酒の歴史をはじめ、「ぬる燗」「熱燗」など温度による違い、ぬる燗に合う日本酒の種類などを解説します。
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日本酒を燗で飲む歴史は奈良時代から
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日本酒を温めて飲む「燗」という習慣が始まったのは、奈良時代(710~794年)の頃とされています。
当時の書物には、菊の節句(現在の9月初旬)から桃の節句(現在の3月初旬)にかけて、日本酒を温めて飲んだという記録があるのだとか。現在のような暖房器具がない時代、こうした冬の寒い時期には、燗酒が人々の体を温める貴重な存在だったことでしょう。
とはいえ、それはまだ上流貴族のみに許された習慣でした。広く一般庶民に広がったのは江戸時代になってからといわれています。
当初は冬だけのものとされていた燗酒ですが、江戸時代の後半になって徳利(とっくり)が普及すると状況が一変します。日本酒をかんたんに温められるようになったことから、一年を通して燗酒が親しまれるようになります。
その後、日本酒がさまざまな温度帯でたのしまれるようになり、現在の「熱燗」や「ぬる燗」といった分類につながっていくのです。
日本酒のぬる燗の温度は何度? 相性のよい種類は?
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日本酒をぬる燗にするといっても、何度くらいに温めればよいのでしょう? 一般的に「ぬる燗」とされる温度は40度前後。徳利を手にもって熱くはない程度、じんわりとした温かさを感じるのが「ぬる燗」です。
ちなみに、同じ燗でも温度によって「熱燗(50度)」「人肌燗(35度)」など呼び方が異なるので覚えておきましょう。
日本酒はぬる燗にすると、お米のやわらかな香りが引き立ち、ふくらみのある味わいを感じられるようになります。温度によって変化する味わいをたのしめるのも、日本酒の大きな魅力といえるでしょう。
味わいの好みは人それぞれですが、日本酒の種類によっては、燗よりも冷や(常温)のほうが適しているものもあります。一般に、フルーティで華やかな香りを追求する大吟醸酒や吟醸酒は、温めると香りのバランスが崩れてしまい、本来のよさを発揮しづらくなるといわれています。
おいしいぬる燗をたのしむには、しっかりとした旨味やコクを感じる純米酒、本醸造酒や普通酒などの日本酒がおすすめです。
日本酒をぬる燗でたのしむ作り方のコツ
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日本酒をおいしくぬる燗にしたい場合、短時間で温めるのもおすすめ。おいしいぬる燗を作る手順を紹介しますので、ぜひ自宅でたのしんでみてください。
(1)日本酒を徳利の九分目まで注いだら、徳利の注ぎ口にラップをかけます。
(2)深めの鍋に、徳利の半分が浸かる程度に水を張ります。
(3)鍋が沸騰したらそこで火を止め、お湯のなかに静かに徳利を置きます。
(4)2~3分ほど経つと、日本酒が徳利の注ぎ口まで上がってくるので、それを目安に徳利を取り出します。
(5)徳利の底を触ってみて、温かいと感じる程度になっていれば、おいしいぬる燗の完成です。
徳利にラップを必ずかけなければならないというわけではありませんが、日本酒の香り成分を揮発させたくない場合にはおすすめです。お湯に浸す時間は、徳利の厚みや材質によっても異なりますので、何度か試して最適な時間を見つけましょう。
日本酒をぬる燗にすることで、同じ日本酒でもまた違った側面が見えてきます。おいしいぬる燗に仕上げて、温度によって変化する日本酒の奥深い味わいをたのしみましょう。