アメリカのウイスキー通をうならせてきたバーボンの歴史とは?
世界5大ウイスキーのなかでも禁酒法の影響を大きくうけてきたアメリカンウイスキー。バーボンもその例外ではありません。禁酒法を経て、アメリカのウイスキー通をうならせてきたバーボンの歴史を紐解いてみましょう。
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禁酒法とウイスキー戦争とは?
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バーボンが生まれた背景に大きく影響しているのが、1790年代に起こったウイスキー戦争。これは、建国まもないアメリカ合衆国政府が、財政を安定させるために設けた「ウイスキー税」に反対する人たちが起こした暴動のこと。
ウイスキーの祖国であるスコットランドやアイルランドからアメリカに移住してきた人たちは、畑を耕す合間に余った穀物を使ってウイスキーづくりを細々と続けていましたが、ウイスキー税の導入で生活が窮地に立たされたのです。
そこで、その税から逃れるために当時まだアメリカ合衆国に属していなかったケンタッキー州やテネシー州へウイスキー生産者たちが移り住み、この地の特産品であるトウモロコシを主原料としたウイスキーを作り始めました。すでにケンタッキー州では、バーボンの祖といわれる牧師、エライジャ・クレイグ氏によってバーボン造りは始まっていましたが、多くの移民たちが加わることでさらにバーボンづくりが盛んになりました。
順調に成長を続けたアメリカのウイスキー業界でしたが、1920年に施行された禁酒法で状況が一転します。一部、医薬目的として蒸留を公式に許可された蒸留所もありましたが、20世紀初頭に3000軒近くあったといわれる蒸留所は、禁酒法の煽りを受けてほとんどが廃業に追い込まれる事態に。1933年には禁酒法が廃止されましたが、そのダメージはあまりにも大きく、禁酒法時代に台頭したカナディアンウイスキーの売り上げを大きく上回ったのは禁酒法廃止から77年後の2010年。その痛手の大きさがよくわかります。
現在は、再び息を吹き返し、歴史ある蒸留所のほか、小規模で個性的なウイスキーをつくる蒸留所も出てきています。
バーボンの原料
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バーボンウイスキーは、トウモロコシを主原料(51%以上)とすることが原料規定として定められています。トウモロコシのほか、ライ麦、小麦、モルトを混ぜ合わせていますが、その混合比率は蒸留所ごとに異なり味わいの個性にもつながっています。
一般的にトウモロコシの割合が多いと甘くまろやかな味わいになり、ライ麦が多いとスパイシーでオイリーに、小麦が多いとマイルドでソフトな味わいになるといわれています。
原料以外にも、ややアルカリ性の硬水であるライムストーンウォーターを仕込み水に使用していること、熟成時に内側を焦がした新樽を使っていることがバーボン特有の力強い味わいとパンチのあるフレーバーにつながっています。
バーボン入門
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バーボンでもっとも有名な銘柄といえば、バーボン市場の4割を占めるといわれる「ジム・ビーム」。前述のウイスキー税に反発してケンタッキーに逃れてきた農民のひとりが、創業者のジェイコブ・ビーム氏。
1795年の創業以来、7代200年以上にもわたってバーボン界を牽引し続けています。ジム・ビームの味わいは比較的ライト。スパイシーで爽やかな味わいはハイボールとの相性も良く、バーボン入門におすすめの1本です。
同じく、1780年代にペンシルベニアからケンタッキーに移住してきたスコッチ・アイリッシュ系移民のロバート・サミュエルズ氏が作ったバーボンからスタートした銘柄が「メーカーズマーク」。
蒸留所の大きさとしては非常に小さく、1本1本、手造りにこだわった丁寧な仕事ぶりが有名。原料にも独自のこだわりがあり、ライ麦の代わりに蒸留所から10マイル圏内で収穫される冬小麦を使用。バーボン特有のスパイシーさが薄れ、リッチな味わいのわりにソフトでスイートな飲み心地が特徴です。
メーカーズマークとは対照的な味わいなのが「ワイルドターキー」。ほかのバーボンと比べてもライ麦と大麦麦芽の割合が多く、トウモロコシの比率が低め。ゆえに、トウモロコシ特有の甘さは控えめで、ライ麦由来のスパーシーさが目立ち、ケンタッキーバーボンらしい味わいがたのしめます。
比較的初心者にも飲みやすい代表的なバーボンを、ぜひ試してみてください。