日本酒の等級をあらわす特撰、上撰、佳撰とは?
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長年に渡る日本酒の級別制度の名残り
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日本酒のラベルなどで時々見かける特撰、上撰、佳撰という表現。じつはこれには明確な基準はありません。では、なぜこのような等級分けは生まれたのでしょうか。それには日本酒の歴史が関わっています。
かつて日本酒は、国税局での審査により特級、一級、二級の等級が認定され、区分ごとの税率が課されていました。専門家などで構成された酒類審議会が日本酒の官能審査を行い、アルコール度数や酒質により、品質の高いものから順に特級、一級、二級と区分していたのです。
近年、日本酒の造り方が多様化し、実際の品質と対応していないなどの理由から、1992年に法律が改正され、この呼び名は廃止されました。その際、変化に戸惑う消費者も多かったため、今までの特級、一級、二級に対応させた、特撰、上撰、佳撰という呼び名を独自で使用するようになったのです。
味わいの違いを示す蔵元独自のランク付け
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このように特撰、上撰、佳撰という表現は、各蔵元が独自の基準によって付けているものです。原料米の品種や精米歩合などによって区分けした、いわゆる「当社比ランク」といえるでしょう。
もちろん同銘柄の場合、特撰はクオリティーや値段が高く、佳撰はもっともリーズナブルなお酒となっています。好みの銘柄がある人は、その時の気分や予算によって、それぞれを飲み比べてみるのもおもしろいでしょう。
また、これらの表現は、「吟醸酒」「純米酒」「本醸造酒」などの特定名称酒に区分されない普通酒に使用されることが多いようです。現在市場に出ている普通酒は、じつに全体の7割程度を占めています。
酒造メーカーの中には、「生活に近いものこそ高品質でなければならない」という理念のもと、普通酒の品質向上に力を注ぐ企業も少なくありません。
とはいえ、数が多い分、値段も品質も幅広く、手頃でおいしい普通酒を見つけるのは意外に難しいもの。そんな時に、「いくつかの銘柄の『特撰』だけを飲み比べてみる」など、ひとつの基準として知っておくと、好みの味わいを見つけやすくなるでしょう。ぜひ参考にしてみてください。