焼酎を樽で貯蔵すると、その色は透明ではなく、なんと〇〇色に……!
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焼酎の色には規定がある!
無色透明な液体が一般的に知られている焼酎の色。しかし、中にはほんのり琥珀色をした焼酎もあります。樽貯蔵された焼酎がそれです。しかし、ウイスキーやブランデーのような濃い色ではなく淡い色。ウイスキーのような光沢のある琥珀色の焼酎を見ることはありません。
実は、焼酎には「色」の規定があるのです。酒税法及び酒類行政関係法令等解釈通達に、「光電光度計を用いて430ナノメートル及び480ナノメートルの吸光度をそれぞれ測定し、その着色度合がいずれも0.080以下」と定められています。ちなみに、一般的なウイスキーの着色度は0.4~0.8程度です。こういわれてもなんのことやらわかりませんよね。要は、「焼酎の着色度(色の濃さ)は、ウイスキーやブランデーの5分の1から10分の1以下の値にしなければならない」ということ。いったい、これはどういうことなのでしょうか?
ウイスキーやブランデーの色は、樽貯蔵によって色が着いていきます。焼酎の「樽貯蔵」も樽で長期保存されるため同じように色が着きます。
焼酎の税率が現在より低かった旧酒税法当時、高価であったウイスキーのように、樽で熟成して付加価値を高めるのは認められない、という考え方があったと推測されます。焼酎の樽熟成期間が長くなることで前述の色の濃さ基準を超えると、酒税法上の分類がスピリッツ扱いになって「焼酎」を名乗れなくなります。おまけにウイスキーなどよりアルコール度数が低くてもウイスキー並みの酒税が課せられるのです。
そのため着色度が基準値を超えた場合は、ろ過して脱色したり、ほかの焼酎とブレンドして色を薄めて基準値を守り、、「酒税法での焼酎」に調整しているのです。
酒の琥珀色はどうしてできるのか?
ウイスキーやブランデーの魅力的な琥珀色はどのように生まれるのでしょうか? ウイスキーやブランデーの色は、貯蔵に使われるホワイトオークなどを使用した樽材から抽出される成分に由来します。
樽材の色が酒に移るのは、樽材から出るタンニンなどの成分がアルコールに溶出することによるもの。貯蔵年数とともに、酒の中のタンニンなどの成分の割合も上昇していき、色も濃くなっていきます。
焼酎も色の規制がなければ、あの美しい琥珀色の熟成された味をたのしむことができたかもしれません。
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樽貯蔵の焼酎とはどんなもの?
ストレートやロックはもちろん、お湯や水、ソーダ、果汁で割ることのできる焼酎は、アルコールの苦手な人も比較的飲みやすい酒といえます。
そのイメージを変えるのが、樽貯蔵された焼酎。熟成された味わいは、長期貯蔵されたウイスキーやブランデーのような高級感があります。樽貯蔵の元祖といわれるのが、田苑酒造の樽貯蔵麦焼酎「田苑 ゴールド(DEN-EN Gold)」。これに続いて人気を博したのが、宮崎県の黒木本店「百年の孤独」や鹿児島県の薩摩酒造「神の河」です。
「田苑 ゴールド」は全量3年貯蔵、樽貯蔵、音楽仕込み。バニラのような香り、重厚で力強さがありながらも、まろやかで余韻が続く深い味わいには、エイジングスピリッツの頂を目指した蔵元の想いが詰まっています。
「百年の孤独」は九州産の大麦を使用しホワイトオーク樽で熟成。その味わいと稀少性で入手困難になり、幻の焼酎と言われプレミア価格がつきました。いまでも貴重な人気の樽貯蔵焼酎です。
「神の河」は二条大麦を使用しホワイトオーク樽で熟成しています。一時は品切れが続出するほど人気になり、現在もその、まろやかな味わいにファンの多い焼酎です。
機会があれば、普段飲む焼酎とは少し違った芳醇な味と香り、樽焼酎ならではの色をたのしんでみてください。
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