酒税法改正2026でビール・第3のビールはどうなる?酒類流通のプロ2人に聞いた

酒税法改正2026でビール・第3のビールはどうなる?酒類流通のプロ2人に聞いた

「第3のビールが値上がりする」と聞いたけど、実際いくら変わるの?2026年10月の酒税改正で何が変わるのか、家計への影響を専門家とともにわかりやすく読み解きます。

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2026年10月、ビール・発泡酒・第3のビール(新ジャンル)の税率がいよいよ一本化されます。
「ビールが安くなる」「第3のビールが値上がりする」——実際にお酒の出費はどう変わるのか、スーパーの売り場はどうなるのか。三菱食品株式会社で酒類流通の最前線に立つ2人に、現場のリアルを聞いてみました。

今回お話を聞いた2人

坂部旭彦さま

坂部旭彦さま(三菱食品株式会社 商品本部)
コンビニエンスストアや量販店への営業を経て、経営企画、商品開発、展示会事務局を歴任。現在は商品本部でメーカーとの窓口を担当し、自らメーカー幹部と商談する仕入れと企画のプロフェッショナル。

平田宗太郎さま

平田宗太郎さま(三菱食品株式会社 営業部)
2008年の入社以来、一貫してスーパーマーケットへの酒類営業に従事。長年大手スーパーの担当としてバイヤーに寄り添い、二人三脚で数々のお酒売り場を形にしてきた現場主義のスペシャリスト。売り場の実情と消費者の動向を熟知している。

そもそも、なぜ今のタイミングで酒税を変えるの?

そもそも、なぜ今のタイミングで酒税を変えるの?

―そもそも、今回の酒税改正はいつ、なぜ決まったのでしょうか。
坂部:平成29年度税制改正大綱によって、ビール・発泡酒・新ジャンルの税率を段階的に一本化することが決定しました。
背景にあるのは、酒税制度のひずみです。各メーカーが頭をひねって発泡酒や新ジャンルを開発した結果、消費者が新ジャンルに流れて酒税収入のバランスが崩れてしまっていました。国としては酒税収入のバランスを取り直す必要があった、というのが私の見立てです。

―「税収を増やしたい」という意図ではない、と?
坂部:そうですね。国が儲けようとしているのではなく、市場構成の変化に合わせてバランスを取り直している、ということです。
平田:「同じようなお酒なのに違う税率にするのは変では?」と思っていた消費者も多いはずです。そう説明されると、確かに腹落ちするのではないかと思います。

ビール・第3のビールの税率は、実際どれくらい変わるの?

―今回の改正で、第3のビール(新ジャンル)とビールの税率差は具体的にどうなるのでしょうか。
坂部:今回の最後の酒税改正でビールと第3のビールの酒税は統一され、販売価格差はぐっと縮まります。
2020年から3段階で進んできた改正の最終フェーズが、いよいよ今回です。毎回「激変を避ける」という方針で段階的に変えてきたわけですが、これが終着点になります。

2026年までの酒税改正による税額の変化

―「第3のビール(新ジャンル)は安いもの」というイメージがありますが、実際のところはどうなのでしょうか?
坂部:これは意外かもしれませんが、第3のビールの製造原価は、じつはビールより高い場合も多いんです。製法が複雑で手間がかかるので。
これまでは税率差があったから安く売ることができていましたが、今回の改正でその差がほぼゼロになります。「普通のビールのほうが素直に造れるぶん、製造コストが低い」——という、製造コストと販売価格の関係が、より実態に近づくわけです。

スーパーやコンビニで買うお酒の値段は、実際いくら変わる?

税率が変わるといっても、実際に財布への影響はどれくらいなのか——ここでは、消費者が実際に手に取るパック単位や本数ベースで、生活感のある数字を教えてもらいました。

ビール・第3のビールの価格はどう変わる?

―ビールや第3のビールの価格は、どのぐらい変わりますか?
平田:実際にスーパーで手に取るパック単位でみると、6缶パックのビールは60円前後の値下がり、新ジャンルは50~60円程度の値上がりになる見込みです。どちらも差額は100円を切る範囲に収まりますね。

6缶パック 想定価格変化の比較図

チューハイ(RTD)は値上がりする?

―チューハイについてはいかがでしょうか?
平田:チューハイは、350ミリリットル缶1本あたり10円前後の値上がりが見込まれています。

チューハイが値上がりしたら、焼酎・ウイスキーで"家割り"する人が増える?

―チューハイが約10円値上がりすると、焼酎を炭酸で割って飲む、いわゆる“家割り”を選ぶ人が増えると思いますか?
平田:正直、そういう大きなスイッチはほぼないと思います。
「4リットルの焼酎を買ってきて炭酸と合わせて……」というのは、もともとそれをしている人がしている世界で、新たな大きな流れにはならない、というのが私の現場感です。
坂部:冷蔵庫を開けたら2秒で完璧なものができあがっているのが、チューハイの魅力なんです。出先でもおうちでも電車でも(笑)、すぐ飲める。あの利便性はなかなか代替できません。
ただ、値上がり直後に「ちょっと高くなったな」と感じて、一時的に家割りの焼酎やウイスキーに流れる人が一定数出ることは、市場の読みとしてあります。10円という価格差への慣れが進んでいけば、やはりチューハイの便利さは捨てがたい。時間が経てば、元の需要に戻ってくる部分のほうが大きいはずです。

スーパーの売り場は変わる?「第3のビール」のコーナーはどうなる?

スーパーの売り場は変わる?「第3のビール」のコーナーはどうなる?

価格が変わって、スーパーの売り場の見た目はすぐに変わるのでしょうか。長年、実際の売り場を見続けてきたお二人の目線から、10月以降の動きを探ります。

2026年10月の改正直後、売り場の見た目はほぼ変わらない

―スーパーの売り場は2026年10月を境に変わりますか?
平田:10月以降、いきなり大きく変わることはないと思います。小売業の立場では、「ビールと第3のビールをまとめて同じコーナーにすると、安値に引っ張られて単価が下がるリスクがある」という懸念が強い。なので、一旦は今の区分を維持しながら、半年ほど売れ行きを見てから再編を検討する——という流れになるはずです。

半年〜1年後、売り場はどう動く?

―今の「ビールコーナー」「第3のビールコーナー」という見た目がしばらく続く、と。
平田:そうなると思います。ただ、長い目で見れば再編は避けられません。
坂部:今回のビール化で注目したいのは、「ビール化するブランド」と、「しないブランド」が混在することです。後者については、ビール化せずに新ジャンルのまま既存ユーザーの維持を図るブランドと、淘汰されるブランドが出てくるでしょう。今回のビール化は「市場での存在感を確保する」ための動きが大きい。
平田:各メーカーが新ジャンル時代に獲得してきた売り場を手放さないための施策であって、そのブランドを絶対に残したいわけではないものも、正直あると思います。

「第3のビール」がなくなったら、これからどれを選べばいい?

「第3のビール」がなくなったら、これからどれを選べばいい?

―消費者の、第3のビールへのブランド愛着はどれくらい強いのでしょうか。
平田:「このブランドしか飲まない」という人に、現場でほとんど出会ったことはありません。他のブランドへ気軽に乗り換えられるカテゴリーで、価格や手に入りやすさで選んでいる人が多い。「今日はこっちが安いからこれ、明日はこっち」という買い方が現場では多いですね。
一方で「ビール」は固定ファンが強い。スーパードライしか飲まない、黒ラベルしか飲まないという人は実際にいます。第3のビールよりビールのほうが、ブランドへの思い入れは強い印象です。

―価格差がなくなったとき、消費者はどれを選べばいいのでしょうか。
坂部:シンプルにいえば、「好きなものを選べばいい」状況になる、ということです。これまでは「安いから新ジャンル」という選択をしていた人も多かった。価格という縛りがなくなれば、今度は味や好みで選べる——ある意味、今こそ価値で選ぶ機会ともいえます。
平田:それが全員ビールに向かうかというと、そうでもない気がしますが。
坂部:そこが面白いところで。メーカー各社はビールへのシフトを期待しているわけですが、実際にリスクとして大きいのはチューハイ(RTD)への流出なんです。第3のビールの値上がりで、「じゃあビール」ではなく「じゃあチューハイ」になる消費者が相当数いる可能性がある。

第3のビール消費者の行き先

―そのチューハイ市場は、これからどう動くと見ていますか?
坂部:数字としてはずっと堅調なのですが、正直なところ「次の一手」が難しい段階でもありますね。季節限定・地域限定、各社が似たような手を打って群雄割拠の状態で、このカテゴリーがどこへ向かうのかはまだ読み切れない部分があります。
一方で「RTS(ベース酒+炭酸水で自分で割るタイプ)」の市場は、じつは少し縮小傾向です。チューハイの「開けたら即飲める」という優秀さに対抗しきれていません。

―クラフトビールはどうでしょう?ここ数年で存在感が増しています。
坂部:クラフトビールは今回の改正でも値段はほぼ変わりません。もともとプレミアム価格帯にあるので。ただ、日常的な晩酌に定着しているかというと、まだそこまでではないのが現実です。「特別な日の一本」という位置づけから抜け出すには、もう少し時間がかかるかな、と。
平田:日常使いにはまだ少し高い、という感覚は正直あります。

家計全体でみると、酒税改正は「得」なのか「損」なのか?

家計全体でみると、酒税改正は「得」なのか「損」なのか?

―三菱食品として、今回の改正の影響をどう見ていますか?
坂部:じつは、弊社でもさまざまなシナリオでシミュレーションした結果、各カテゴリーで上がるものと下がるものがあって、全体としてほぼニュートラルという判断に至りました。

―業界全体として、今回の改正で一番懸念していることは何でしょうか。
平田:一番怖いのは、「値上がりを機にお酒をやめてしまう離脱層」ですね。「ちょっと高くなったし、もうやめようか」という層が増えること——これが一番気になるところです。

酒税が変わった後、お酒のたのしみ方はどう変わる?

―今回の酒税改正を前にして、消費者に伝えたいことはありますか?
平田:今回の改正で、ビールと第3のビールの税の差はほぼなくなります。つまり「安いから仕方なくこれ」ではなく、「好きだからこれ」といえる時代になる、ということだと思っています。これを機に、いつも飲んでいるもの以外をちょっと試してみようという動きにしてもらえたら。「価格」より「価値」に目を向ける、よいチャンスだと思いますね。

坂部:数字の話でいえば、大局を見てあまり大きな影響はないと思います。ただ、個人的にこの機会に伝えたいのは、お酒の「価値」の話です。
日本酒はその土地の水と米で造られ、同じ土地で育った料理と合わせると最高においしい。ワインも土地の品種と気候が味わいをつくる。そういうストーリーや背景を知ると、選び方がまったく変わってきます。
価格差がなくなってきたからこそ、「自分がおいしいと思うものを選ぶ」という価値観がより大切になる時代に入ったと思います。お酒と食の組み合わせ、造り手の思い——そういうところに関心が向いていったら、お酒のたのしみ方はもっと豊かになるのでは、と感じています。

FAQ

Q. 2026年10月の酒税改正で、ビールの値段は下がる?
はい。6缶パックあたり60円前後の値下がりが見込まれます。ただし発泡酒・第3のビールは値上がりするため、何を飲んでいるかによって影響は異なります。

Q. 第3のビールはなくなるの?
カテゴリー区分がなくなるわけではありませんが、主要ブランドの多くがビール税率に統合されます。価格差は大幅に縮まり、競争についていけないブランドは事実上姿を消していく可能性があります。

Q. チューハイ(RTD)は値上がりする?
はい。350ミリリットル缶1本あたり10円前後の値上がりが見込まれますが、それでもビールより安い価格帯は維持されます。利便性の高さも変わらないため、引き続き選ばれやすいカテゴリーです。

Q. 結局、酒税改正で家計はプラス?マイナス?
飲んでいるお酒の種類によって異なります。業界全体では「影響は軽微でほぼニュートラル」という見立てが大勢です。

Q. スーパーの売り場は10月以降すぐ変わる?
基本的には、改正直後に大きく変わることはないとみられます。小売り側が単価ダウンのリスクを慎重に見ているため現状の区分を維持し、半年程度の様子見の後、徐々に再編が進むと推測されます。


取材協力:三菱食品株式会社 商品本部・坂部さま/営業部・平田さま(2026年7月取材)
文:たのしいお酒.jp 編集部

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