【しっかりとした味わいが魅力】東京の日本酒の人気銘柄をご紹介

【しっかりとした味わいが魅力】東京の日本酒の人気銘柄をご紹介
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東京といえば日本酒造りとはかけ離れた大都市と思われがちですが、じつは地下水や伏流水に恵まれ、江戸時代から酒造りが盛んな土地です。時代の流れとともに変化する東京の日本酒造りとはどのようなものでしょうか? 代表銘柄とともに紹介します。

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東京の酒造りは時代とともに変化する

東京の酒造りは時代とともに変化する

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東京における日本酒造りの歴史は、江戸時代にさかのぼります。当時、酒造りのメインは「にごり酒」でしたが、江戸の町では関西方面から入ってくる清酒が圧倒的な人気。江戸っ子のお金が関西へ流れることを懸念した時の老中・松平定信は、蔵元を集めて幕府の所有米を貸し与えて清酒を造ることを命じました。これを機に、江戸の蔵元がこれまでのにごり酒ではなく、清酒造りに取り組むようになったのだとか。

江戸の蔵元が造る清酒は徐々に醸造量を増やし、質を高め、江戸っ子をうならせる良質なお酒が増えていきました。明治になって、江戸から東京に名を改めた頃には60を超える蔵元があったとされ、現在もなお、9つの蔵元が日本酒造りに精を出しています。

東京の地酒はしっかりとした味わいが魅力

東京の地酒はしっかりとした味わいが魅力

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東京といえば「ビルに囲まれた都会」というイメージが強いためか、「東京と日本酒がイコールで結びつかない」という人も多いかもしれません。日本酒造りには良質な水が欠かせない要素ですが、じつは、東京は良質な地下水や伏流水に恵まれた、日本酒造りにはぴったりの土地でもあるのです。

東京で造られる日本酒は、もともと甘口のものが主流でしたが、時代や食文化の移り変わりに従い、お酒の味わいもキレのある辛口へと幅を広げました。

関西では薄く甘い「うどんの文化」がありますが、東京を中心とした関東では、醤油が濃い「そばの文化」があります。このため東京の日本酒は東京の食事に合うように、醤油に押し負けないしっかりとした味わいが特徴であり、魅力です。東京の地酒を飲みたいという人は、味わいのどっしりとしたものを選ぶと、より東京らしい1杯と出会えるでしょう。

東京の人気銘柄

東京の人気銘柄

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東京では現在、9つの蔵元がさまざまな銘柄を発表しています。なかでも人気を集めている銘柄をチェックしてみましょう。

奥多摩の大自然が生んだ人気銘柄【澤乃井(さわのい)】

「澤乃井」の蔵元は、元禄15年(1702年)創業という長い歴史をもつ小澤酒造です。秩父古生層の岩盤を掘り抜いた、洞窟の奥から湧き出る水を使用して日本酒を仕込んでおり、良質な水を活かした豆腐造りでも成功を収めています。
「澤乃井」はそんな良質で清らかな水や、澄み切った奥多摩の空気をはじめとする奥多摩の大自然が育んだ銘柄。なかでも「澤乃井大吟醸凰(こう)」はやや辛口な仕上がり。はなやかな香りを感じさせる、醸造センスあふれる1本で、「ワイングラスでおいしい日本酒アワード2017」で金賞を獲得しています。

製造元:小澤酒造株式会社
東京の日本酒【澤乃井(さわのい)】奥多摩の名水が生んだ美しい東京の地酒

東京の地酒のなかでも入手困難な人気銘柄【屋守(おくのかみ)】

全国新酒鑑評会において、多くの金賞受賞歴を誇る豊島屋酒造は、慶長元年(1596年)以来の歴史をもつ、東京でも指折りの老舗蔵です。江戸ではいち早く白酒の醸造を行い、結婚式で祝いの樽酒を用いるようになったのは、この蔵が発祥ともいわれています。
そんな豊島屋酒造を代表する銘柄が、無ろ過、無加水で造られる「屋守」です。米の香りが濃厚でありながらもキレのある味わいが魅力の日本酒。できるだけよい状態で飲む人の手に届くようにと、全量を瓶貯蔵している点も特徴です。東京の地酒のなかでも近年、たいへん人気が高く、入手困難になっています。

製造元:豊島屋酒造株式会社
公式サイトはこちら

伝統の味と新しい味の両面を追求する銘柄【金婚(きんこん)】

豊島屋酒造が手掛ける日本酒のなかでも、「屋守」と人気を二分する銘柄が「金婚」です。明治天皇の銀婚式を祝う気持ちを込めて命名された銘柄で、長く日本酒ファンを魅了してきました。なお「金婚」は明治神宮と神田明神の御神酒として使用されていることでも知られています。
量よりも質を重視するという蔵元の醸造スタイルは、数々の受賞歴にも現れており、その清らかなおいしさは折り紙つき。東京サミットの晩餐会でも用いられた「金婚 純米大吟醸吟の舞」や、東京産の原料米「キヌヒカリ」を用いて江戸酵母で醸した「金婚 純米吟醸 江戸酒王子」など、充実したラインナップにも注目です。

東京の日本酒【金婚(きんこん)】その名に込められた歴史が裏づける、江戸の“祝い酒”

寒造りに最適な環境が育む銘酒【千代鶴(ちよつる)】

清流にしか棲まないとされる鮎が多く生息する、東京のヒーリングスポット・秋川渓谷。その流域に蔵を構えるのが、文化元年(1804年)創業の中村酒造です。この地は都内としては冬の冷え込みが厳しく、日本酒の寒造りに適した環境です。中村酒造では多くの酒に四段仕込みを採用し、淡麗でありながらも米の旨味を存分に感じられる日本酒造りを目指しています。全国新酒鑑評会や東京国税局主催清酒鑑評会などでの受賞歴も数多い実力派の蔵元です。
代表銘柄「千代鶴」は、秋川に鶴が飛来したことにちなんで命名されたもの。富山にも同じ銘柄の日本酒があるので、購入の際には蔵元名を確認することをおすすめします。「千代鶴 純米大吟醸」は低温で長期発酵させることで、のびやかな香りと上品な味わいを引き出した魅力の1本です。

製造元:中村酒造
東京の日本酒【千代鶴(ちよつる)】奥多摩・あきる野の老舗蔵が醸す酒

都心で醸造される話題の日本酒【江戸開城(えどかいじょう)】

日本酒といえば自然の恩恵を受けて醸すイメージがありますが、「江戸開城」が醸造されるのは、なんと鉄筋コンクリート4階建てのビル内。こうした常識を覆す酒造りを行っている蔵元が、東京都港区芝の東京港醸造です。
その前身となるのは「江戸無血開城」を導いた会談の舞台ともいわれる造り酒屋「若松屋」。明治末期に廃業しましたが、それから約100年を経た2016年に、その子孫が再興を果たしました。
テレビや雑誌などメディアへの露出も多く、話題性に富んだ「江戸開城」。革新的な経営スタイルでありながらも、味わいは伝統的な日本酒だと高く評価されています。

製造元:株式会社若松 東京港醸造
東京の日本酒【江戸開城(えどかいじょう)】幕末以来の伝統を復活させた東京・港区の地酒

東京のそのほかの注目銘柄

東京のそのほかの注目銘柄

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伝統を守りつつも時代に合った酒造りをする東京の日本酒。ほかにも覚えておきたいさまざまな銘柄があります。

上品な吟醸香とほどよいキレ感が魅力【蒼天(そうてん)】

東京の地酒の代表格「澤乃井」の蔵元、小澤酒造が手がける純米吟醸生酒が「蒼天」です。その名のとおり、さわやかで口いっぱいに広がる吟醸香が特徴的ですが、香りが立ちすぎることはなく上品な味わいに仕上がっています。飲み口はとろりとしていながらも、きちんとキレがある、しっかりとした味わいです。
小澤酒造は自然環境に恵まれた奥多摩にあり、その環境と高度な醸造技術が美酒を造り上げています。東京の地酒を語るうえでは、はずせない蔵元のひとつです。

製造元:小澤酒造株式会社
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瓶燗火入れを採用していねいに造られたお酒【田むら(たむら)】

江戸時代から続く旧家・田村家が文政5年(1822年)に秩父奥多摩で酒造業を始めたことが田村酒造の興りとされています。ていねいな酒造りとともに、早くから「ていねいに売る」ことに着目した経営センスの感じられる蔵元です。昭和に入り、今では東京の日本酒として欠かせない人気銘柄「嘉泉 幻の酒」、そして「田むら」が誕生します。
「かねじゅう 田むら」は大吟醸造りと変わらぬていねいさで造る純米吟醸酒です。火入れのときの温度変化で酒の風味を壊さない反面、たいへんな手間と時間がかかると「瓶燗火入れ」により、酒米の味わいを存分に感じることができます。

製造元:田村酒造場
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東京神田エリアの店頭でのみ購入できる希少酒【利他(りた)】

「屋守」や「金婚」で知られる豊島屋酒造が、神田の地で「豊島屋ビル」を運営するグループ会社、神田豊島屋のオリジナルブランドとして造る銘柄が「利他」。“自分よりも他人の利益を大事にする”との想いが込められた日本酒です。
「利他」は火、水、土、木をイメージしたモダンでオシャレなラベルデザインが特徴的。軽やかな香りをたのしみながらも、しっかりとした味わいを感じられる「これぞ東京の酒」というパワフルな日本酒に仕上がっています。話題性もあり、東京土産としてもおすすめです。

製造元:豊島屋酒造株式会社
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販売元:神田豊島屋
公式サイトはこちら

「八反錦」を使用した淡麗辛口【十右衛門(じゅうえもん)】

豊島屋酒造は「屋守」「金婚」「利他」など、豊島屋グループ各社が販売する日本種銘柄の生産を一手に担っています。豊島屋グループの創業者の名を冠した「十右衛門」は、豊島屋本店が販売する純米酒。東京の地酒としては珍しく、原料に広島の酒造好適米である「八反錦(はったんにしき)」を使用。同じ豊島屋本店の「金婚」のような香り立つ日本酒ではなく、静かな香りと辛口で深い飲み口が特徴的です。
「純米無濾過原酒 十右衛門」は、ミラノ万博サテライトイベント「ミラノSake Week」にも出品され、国内外を問わず注目を浴びています。

製造元:豊島屋酒造株式会社
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販売元:株式会社豊島屋本店
公式サイトはこちら

有名蔵元の地元流通限定酒【東村山(ひがしむらやま)】

「屋守」や「金婚」で知られる豊島屋酒造が、地元流通限定酒として販売している銘柄が「東村山」。酒質としては「金婚」と変わりませんが、地域で販売するからには、その地を冠した酒にしようと、蔵のある東村山市の名を冠したのだとか。非常に珍しいラベルですので、豊島屋酒造ファンならぜひ手に入れておきたい1本です。

製造元:豊島屋酒造株式会社
公式サイトはこちら

東京の日本酒は、江戸前の食文化にピッタリ合う、しっかりとした味わいが感じられるのが特徴。都会的なイメージが強い東京ですが、豊かな水環境が生み出す珠玉の味わいを体感してみてください。

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