【酒蔵のシンボル】杉玉の秘密!その色変わりが教える日本酒の飲み頃とは?

【酒蔵のシンボル】杉玉の秘密!その色変わりが教える日本酒の飲み頃とは?
出典 : やえざくら / PIXTA(ピクスタ)

日本の酒蔵を象徴する「杉玉(すぎだま)」。その緑が示すのは新酒の誕生。杉玉の色変わりが「夏酒」や「ひやおろし」の飲み頃を教えてくれます。杉玉の由来、材料の杉について、杉玉を手に入れる方法などを紹介します。

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「杉玉」がどんなものか、その概要からみていきましょう。

「杉玉」「酒林(さかばやし)」とはどんなもの?

杉玉の概要

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「杉玉」とは、杉の葉を束ねて球状にしたもので、「酒林(さかばやし)」などとも呼ばれています。

杉玉は、お酒を造っている酒蔵の軒先や軒下に飾られるほか、酒販店や居酒屋の入り口などに吊される場合もあります。

よく見かけるのは、緑色のものや、杉の葉が枯れて茶色になったもの。そのほかに、小さな屋根(笠)やしめ縄がついている杉玉もあります。

「杉玉」にはどんな意味があるの?

杉玉の意味合い

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杉玉は、飾られている建物がお酒を造る酒蔵であること、あるいはお酒を扱う酒販店や居酒屋であることを示す目印の意味合いがあるものです。

酒蔵に飾られる杉玉の場合、新酒のできあがりを知らせる意味合いや、だんだんと枯れていく杉の葉の色合いの変化から、日本酒の熟成度や飲みごろを知らせるという意味合いもあります。

建物の軒先や軒下に飾られる理由は、お酒を造っていることやお酒を扱っている場所であることを示しつつ、新酒の完成やお酒の熟成度を、より多くの人々に知ってもらうためと考えられます。

「杉玉」の色合いを目安に季節ごとの日本酒を味わう

杉玉の色合いの変化を目安にたのしむ季節ごとの日本酒

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杉玉の色合いを目安に、季節ごとの日本酒の魅力を紹介します。

鮮やかな緑色の「杉玉」は日本酒ファン待望の「新酒」の目印

酒蔵の杉玉は多くの場合、新酒の時期につけ替えられます。杉の葉の緑色が鮮やかな新しい杉玉は、日本酒ファンが待ち望む新酒の目印といえるものです。

新酒の魅力は、みずみずしいフレッシュな味わいにあります。緑色の杉玉を見かけたら、新酒をぜひ手に取ってみてくださいね。

また、春先には各蔵元が趣向を凝らす季節限定の「春酒」も出回ります。こちらも緑色の杉玉の時期にたのしめるお酒といえます。

杉玉の緑色がくすんできたら味わいたい夏酒

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「杉玉」の緑色がくすんできたら夏到来! 軽やかな「夏酒」を味わおう

杉玉の緑色がくすんできたら、夏が近づいてきているサイン。さまざまな「夏酒」が出荷される時期となります。

「夏酒」と称されるお酒はさまざまで、すっきりとした味わいのものや、さわやかな酸味があるもの、またスパークリング日本酒なども含まれます。

杉の葉の色味が落ち着いてきたら、よく冷やした「夏酒」で暑気払いするのがおすすめです。

ひやおろしの飲みごろ示す茶色になった杉玉

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「杉玉」が茶色になる秋口には「ひやおろし」が飲みごろに

秋が訪れ、杉の葉が枯れて杉玉が茶色になるころには「ひやおろし」が飲みごろとなります。

「ひやおろし」は一般に、冬場に搾ったお酒を1回だけ火入れをして貯蔵し、ひと夏熟成させた日本酒を指します。

熟成させているため、コクのあるまろやかな飲み口のものが多く、常温でもお燗でもおいしく飲める傾向があります。

収穫の秋は食べ物がおいしい季節でもあるので、料理と一緒にたのしむのもよいでしょう。

起源は不明!? 「杉玉」の由来をひもとく

杉玉の由来

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杉玉は、江戸時代にはすでに広まっていたことがわかっていますが、その起源ははっきりしません。ここではまず、由来とされている神社と杉玉のかかわりからみていきます。

「杉玉」の由来とされる奈良県の大神(おおみわ)神社

奈良県桜井市にある大神神社は、大物主大神(おおものぬしのおおかみ)を祭神とする神社です。その歴史は古代にまでさかのぼるといわれ、『古事記』や『日本書紀』に由緒となる記述があります。

太古の昔、崇神(すじん)天皇に命じられた高橋活日命(たかはしのいくひのみこと)が、大物主大神に捧げるためのお酒を造ったところ、大物主大神の助力を得て一夜にして美酒を醸したと伝わることから、大物主大神は酒造りの神、高橋活日命は杜氏(とうじ)の神様として敬われるようになりました。

また、大神神社では杉を神木としていることから、大物主大神の霊威(れいい)が宿る杉の枝を酒屋の目印とする風習が生まれたとされ、これが杉玉の由来ともされています。

大神神社では、毎年11月に酒造関係者も参列する「醸造安全祈願祭(酒まつり)」が行われます。
祭りの前日には、拝殿と祈祷殿に取りつけられている直径約1.5メートル、重さ約200キログラムの大杉玉が新しいものに取り替えられ、祭りのあとには「酒栄講(さかえこう)」という講に属する蔵元に杉玉が授与されます。

一休さんの和歌にも登場する杉の葉

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「杉の葉」はとんちで知られる一休さんの和歌にも登場!?

とんちで知られる一休(いっきゅう)さんこと、一休宗純(そうじゅん)は室町時代の禅僧で、当時世俗化していた禅に反抗し、自由奔放に生きたことで知られています。

一休は書画に優れ、和歌も詠みました。その作とされるものに「極楽を いづくのほどと 思ひしに 杉葉立てたる 又六が門」があります。

「どこにあるのだろうと思っていた極楽は、門に杉の葉を立てている酒屋の又六にあったよ」というような意味で、当時すでに「杉の葉」を門に飾っている酒屋があったことを示唆しています。

この和歌を題材とした江戸時代の画家・英一蝶(はなぶさいっちょう)の「一休和尚酔臥図(いっきゅうおしょうすいがず)」には、杉の葉を束ねたものを入り口に飾る酒屋の前に、酔っぱらった一休が伏している様子が描かれています。

江戸時代の丸くない杉玉に似ている戸隠そばのそば玉

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江戸時代の百科事典には丸くない「杉玉」が掲載されている!?

江戸時代の百科事典『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』には、杉の葉の束の真ん中を紐で縛った、丸くない杉玉が掲載されています。

丸くない杉玉は江戸時代のほかの資料にも散見されます。杉の葉の束を縛る位置は真ん中とは限らず、杉玉が江戸期を通じて形を変え、広まっていったことを示すかのように、幕末期の資料には今の杉玉と同じ球状のものも描かれています。

杉玉は、意外なところにも影響を与えています。戸隠(とがくし)そばで知られる長野県長野市の戸隠では、『和漢三才図会』などに見られる丸くない杉玉に似た形の「そば玉」が見られます。

新そばが入ったことの目印としてそば屋さんの店先に飾られるもので、お酒の杉玉をヒントに、2006年から製作がスタート。現在では戸隠そばのシンボルとして知られるようになりました。

杉は日本酒と深いかかわりを持つ樹木

日本酒と深いかかわりのある杉

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ここで、杉玉の材料となる杉について確認しておきましょう。
杉はスギ科の常緑高木で、日本の特産種です。加工しやすく香りもよいため、古くからさまざまな用途で使われています。

日本酒とのかかわりも深く、お祝いごとの鏡開きで使われる酒樽の原料として広く知られています。

日本酒の醸造工程でも杉は重宝され、仕込みや貯蔵の際に使う木桶や醪(もろみ)などを混ぜる櫂(かい)、麹(こうじ)造りで使う「麹蓋(こうじぶた)」という長方形の容器にも杉が使われています。

「杉玉」を入手するには?

杉玉の入手方法

Khun Ta / Shutterstock.com

杉玉の入手方法は、おもに2つ。

ひとつ目に杉玉の製造販売を行っている業者から購入する方法。個人向けのミニチュアサイズの杉玉もネット通販などで入手可能です。

2つ目は、自作する方法。杉玉は、針金などで作った芯にたくさんの杉の葉を挿し込み、カットして形を整えれば完成します。

仮に個人が自作する場合、ネックとなりそうなのが杉の葉の入手先です。小ぶりのものでも軽トラック半分ほどの杉の葉が必要といわれています。

また、杉の花粉でアレルギー反応が引き起こされる場合もあるようです。花粉症を持っている人は、自作する際、購入する際に気をつけましょう。

新酒の季節に鮮やかな緑色の杉玉を見ると心が躍ります。近所に酒蔵があるとは限りませんが、蔵元見学に行った際などには、杉玉にも注目してみてくださいね。

飲食店様など、杉玉を購入されたい方はこちらからご購入可能です。

杉玉(酒林)制作・販売 楠玉屋

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