「スピリタス」とは世界最強のお酒!? アルコール度数や味わい、おいしい飲み方、注意点などを紹介

「スピリタス」とは世界最強のお酒!? アルコール度数や味わい、おいしい飲み方、注意点などを紹介
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「スピリタス」はアルコール度数の高さで知られる蒸溜酒。「世界最強のお酒」ともいわれています。ここでは、驚きのアルコール度数や製造方法、原産国や歴史といった基本情報から、「最強」ならではの注意事項、おすすめのカクテルレシピまで紹介します。

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「スピリタス」という名前は聞いたことがあっても、実際に口にしたことはない人は少なくないでしょう。その実態に迫ります。

「スピリタス」が「世界最強の酒」といわれる理由

スピリタスのアルコール度数は96度

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数あるお酒のなかで、「スピリタス」が「世界最強」、ときには「世界最凶」とも呼ばれる理由。それは、スピリタスのとてつもないアルコール度数にあります。

「スピリタス」は世界最高のアルコール度数96度で有名

「スピリタス」のアルコール度数は、なんと96度。「強いお酒」というイメージのあるテキーラですら35〜55度程度なので、96度というアルコール度数は驚異的です。

ここで少し難解な化学の話をすると、水とエチルアルコール(エタノール)は、水4%、エタノール96%で「共沸混合物(沸点が異なる液体を混ぜているのに同じ温度で沸騰し気化してしまう液相)」となります。かんたんにいえば「それ以上は何度蒸溜しても組成が変わらない状態」になるため、通常の蒸溜で96度以上の濃さのエタノールは得られないということになります。

スピリタスのアルコール度数96度が「世界最高」とされているのは当然といえるでしょう。

スピリタスを扱うときは火気厳禁

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「スピリタス」はアルコール純度が高いので、取り扱い要注意!

96度という高アルコール度数ゆえ、「スピリタス」のラベルには「火気に注意してください」という飲み物らしからぬ警告文が書かれています。

日本の消防法では一般的に、アルコール度数が67.7度以上のお酒は「第四類(引火性液体)/アルコール類」の危険物に該当する場合があり、ガソリンや灯油などと同等の管理が求められているのです。

(参考資料)
総務省消防庁 消防法(別表第1抜粋)

過去にはスピリタスを飲みながらタバコに火をつけようとして引火、やけどを負うなどの事故が複数発生していて、実際に東京消防庁が公開している実験動画では、スピリタスを袖口やテーブルにこぼした状態で火を近づけると、液体に触れる前に気化したアルコールに火がつき、瞬時に、しかも大きく燃えあがりました。

安全のため、スピリタスを扱うときはくれぐれも「火気厳禁」を心がける必要があります。

「消毒剤になる」との噂でスピリタスが品薄に

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過去には「スピリタスが消毒剤として代用できる」との風説も

そのアルコール度数の高さから、コロナ禍で除菌・消毒剤が不足したときには、厚生労働省が特例として消毒液の代わりに高濃度のアルコール酒使用を認めた時期も。そのため「スピリタスが消毒剤の代わりになる」とのうわさが広まり、一時期は店頭やECサイトで「スピリタス」が品薄になる事態にもなりました。

その後、専門家や医療関係者から、

◇アルコール度数が高すぎて消毒の効果がでる前に揮発してしまう
◇市販の消毒用エタノールと同程度の76.9〜81.4度に希釈すれば一定の効果は見込めるが、濃度管理が難しく、効果を保証することはできない
◇スプレーにして噴霧することで引火の危険性もある

といった発信があり、除菌・消毒剤が手に入りにくい状況も改善されたため、「スピリタスを除菌・消毒剤として利用する」というムーブメントも落ち着いていったようです。

「スピリタス」はウォッカの一種

スピリタスは蒸溜して造られるウォッカの一種

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さて、「世界最強」「アルコール度数が高すぎて取扱注意」「原液では消毒効果を発揮する前に揮発してしまう」とまで言われる「スピリタス」とは、いったどんなお酒なのでしょうか。

「スピリタス」は酒税法でスピリッツに分類されるお酒

「スピリタス」は、日本の酒税法による酒類の定義でいうと、「蒸留酒類」のなかの「スピリッツ」に分類されるお酒です。
「蒸留酒類」とは、蒸溜技術を用いて造られるお酒全般を指し、スピリッツのほかに焼酎やウイスキー、ブランデーなどが含まれます。

そして「スピリッツ」にはウォッカ(ウオツカ)やラム(ラム酒)、ジン、テキーラなどがあり、スピリタスはウォッカの一種となります。

ウォッカ(ウオツカ)とは? 基本情報をおさらい

ウォッカはラム、ジン、テキーラと並ぶ「世界4大スピリッツ」のひとつです。一般的には、小麦や大麦、ライ麦、トウモロコシ、ジャガイモなどの原料を糖化・発酵・蒸溜して高アルコール濃度のスピリッツを精製。そのスピリッツに水を加えてアルコール濃度を40〜60度程度に調整し、白樺の活性炭などでろ過して仕上げられます。

「スピリタス」の歴史と製法

ポルモス・ワルシャワ社製のスピリタス

出典:ミリオン商事株式会社サイト

さて、ここからはもっと詳しく、スピリタスというお酒をひもといていきましょう。

「スピリタス」はポーランドで造られるお酒

「スピリタス」のおもな生産国はポーランド。日本で手に入りやすいスピリタスはミリオン商事が輸入・販売している「Polmos Warszawa(ポルモス・ワルシャワ)」社製の「Spirytus Rektyfikowany(ポーランド読みでスピリトゥス レクティフィコヴァニ)」という緑色のキャップのものです。

「Polmos(ポルモス)」とは、「Polski Monopol Spirytusowy(Polish spirits monopoly)」の略称。1920年代からの歴史をもち、ウォッカをはじめとした蒸溜酒などの製造を行っていたポーランド国営の組織でした。「Monopol/monopoly」は独占、専売という意味なので、日本語にすると「ポーランド蒸溜酒専売公社」といったところでしょうか。

ポーランドは戦争や社会主義政権への移行など激動の時代を経て、1989年に民主化。それにともないポルモスも分割・民営化され、現在はそれぞれがひとつの蒸溜所と1〜2つのブランドを持つ独立した企業体になっています。ポルモス・ワルシャワ社はそのうちの1社で、「Spirytus Rektyfikowany(スピリトゥス レクティフィコヴァニ)」という名称は現在、ポルモス・ワルシャワ社の登録商標となっています。

日本のバーや酒店、ECサイトなどで見かけるのはほとんどがこの商品なので、「スピリタス」そのものをブランド名だと思っている人が少なくないかもしれませんが、スピリタスというのは、いわばひとつの「ジャンル」。本場ポーランドにはたくさんの種類、銘柄があり、アルコール度数95〜96%のスピリタスだけでも「Gdanski Spirytus」「LVOV Spirytus」「Spirytus Duch Puszczy」「Spirytus Kaliski」「Spirytus Spożywczy」「Spirytus Zbozowy」「Spirytus Wratislavia」など、豊富な選択肢が並んでいます。

70回以上の蒸溜で純度の高いアルコールを精製

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「スピリタス」は穀物を原料に70回以上蒸溜を繰り返して造られる

スピリタスのおもな原料はライ麦などの穀類。ウォッカと同じように原料を糖化・発酵させて蒸溜し、雑味を取り除いていきます。

ちなみに「蒸溜」とは、異なる成分が含まれた液体を熱してできた蒸気を冷やし、もう一度液体に戻すことで、沸点の異なる成分を分離・精製する操作のこと。水の沸点は100度、アルコールの沸点は約78度なので、水とアルコールの混合液を熱するとアルコールのほうが早く沸騰・気化します。その蒸気を冷やせば、もとの混合液よりもアルコール濃度の高い液体が得られるわけです。

ウォッカの場合、先述したように数度の蒸溜のあと加水してアルコール濃度を40〜60%程度に調整し、白樺の活性炭などでろ過して仕上げるのですが、スピリタスはこの蒸溜の過程を70回以上も繰り返し、水も一切加えません。だからこそ、通常の蒸溜ではほぼ限界に近い純度まで精製された、アルコール濃度96%のクリアなお酒ができあがるのです。

スピリタスの味わいは刺激的

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「スピリタス」の味わいは?

スピリタスは70回以上にわたる蒸溜の過程で原料由来の風味などがほぼそぎ落とされ、クセのないクリアな味わいに仕上がります。もはや純粋なアルコールに近いニュートラルスピリッツになっているので、「味」らしい「味」はないといったほうが正しいかもしれません。

試しにスピリタスを小さなスプーンなどに垂らし少量唇に触れさせると、焼けるような刺激を感じます。舌やのどに届くほどの量を口に含むと、「味」ではなく、アルコールそのものの刺すような「痛み」を感じるようです。

海外の商品レビューなどをみても、スピリタスの味わいは「人体がこのような強い物質を消化できるかどうかは疑問」「ウォッカファンでもひと口飲んだだけで暴れ出しそう」などと表現され、いちばん興味深く強烈な比喩は「death in a bottle with a hellish burning aftertast(地獄のような灼熱の後味を持つ瓶詰めの死)」でした。

これらは少なからずジョークを含んでいるとしても、スピリタスがECショップなどの商品説明で味わいに言及されることはほぼありません。本場ポーランでも、ポーランド語で「Nalewka(ナレフカ)」という果実やナッツ、ハーブなどを漬け込んで作る自家製リキュールのベースや、カクテルのベースにぴったりのスピリッツと紹介されています。

「スピリタス」のおいしい飲み方

スピリタスはカクテルのベースにおすすめ

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口に含むと「痛い」などと表現されてしまう「スピリタス」。どうすればおいしく、たのしく味わえるのでしょうか。

ストレートやロックは危険!! 「スピリタス」の安全な飲み方を押さえておこう

まず押さえておきたいのは、「スピリタスはストレートで飲むためのお酒ではない」ということ。ウォッカはストレート(しかもショットでくいっとグラスを空けるスタイル)でたのしむことの多い本場ポーランドでも、スピリタスをそのまま飲む習慣はほぼないといわれています。

SNSや動画サイトで、スピリタスをストレートで一気に飲む様子が公開されていたりますが、絶対に真似しないようにしましょう。スピリタスほどアルコール度数の高いお酒を短時間のうちに多量に摂取すると、血中アルコール濃度が急激に上昇して急性アルコール中毒をおこす危険性もあります。重症になると意識を失ったり、命を失うこともあるので注意が必要です。

飲みの席の「ノリ」や罰ゲームなどで、スピリタスを一気に飲んだり、飲ませたりといった危険な飲み方は絶対に避けたいものです。

スピリタスはウォッカベースのカクテルに使える

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「スピリタス」で作るおすすめカクテル

「スピリタス」の飲み方でイチ押しなのは、カクテルのベースに使うことです。
スピリタスはウォッカの一種。ウォッカベースのカクテルなら、ベースをスピリタスに替えてもおいしいカクテルになります。ここではウォッカベースの定番カクテルをいくつか紹介しましょう。

ただ、一般的なウォッカのアルコール度数が40度程度なのに対し、スピリタスはその倍以上の96度。レシピにあるウォッカの分量と同じだけスピリタスを入れてしまうとアルコール度数が高くなり、思った以上に酔ってしまうかもしれません。スピリタスの量はレシピの半分以下にするなど、適宜調整しましょう。

モスコミュール(モスコーミュール)

スピリタスで作るモスコミュール

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モスコミュールはウォッカをジンジャーエールで割り、ライムジュースか生搾りのフレッシュライムを加えて作る、飲み口さわやかな定番カクテル。基本的なレシピはウォッカ45ミリリットルにジンジャーエール90ミリリットルですが、スピリタスで作る場合はウォッカの半分以下の分量にして、ジンジャーエールやライムジュースの割合を増やすのがおすすめです。

スクリュードライバー

スピリタスで作るスクリュードライバー

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スクリュードライバーもモスコミュール同様、ウォッカを使った定番カクテルのひとつです。一般的にはウォッカ:オレンジジュースの比率を1:3くらいにすることが多いですが、スピリタス:オレンジジュースなら1:6〜1:8くらいがおすすめです。フルーティーで口あたりのよいカクテルなので飲み過ぎにはくれぐれも注意してください。

チチ

スピリタスで作るトロピカルカクテル「チチ」

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ウォッカ30ミリリットル・パイナップルジュース80ミリリットル・ココナッツミルク45ミリリットルを氷とともにシェイクし、クラッシュドアイスを詰めたグラスに注げば、ハワイ生まれのトロピカルカクテル「チチ」のできあがり。レシピのウォッカをスピリタス10〜15ミリリットルに替えても、ミルキーで甘酸っぱい南国気分を十分にたのしめます。

少量のスピリタスでいろいろなカクテルに挑戦を

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「スピリタス」はシンプルな飲み方でもたのしめる

「スピリタス」ほど雑味がなく純度の高いアルコールは、割り材の味を邪魔することがありません。気軽にたのしみたいときは好きなソフトドリンクに少量加えて飲むのがおすすめです。

スピリタスをオレンジジュースで割る「スクリュードライバー」はすでに紹介しましたが、りんごジュースで割ると「ビッグアップル」、トマトジュースで割ると「ブラッディ・マリー(ブラッディ・メアリー)」というカクテルになります。

また、コーラやトニックウォーター、炭酸入りの清涼飲料水などとの相性も抜群。いずれもベースのスピリタスの量は控えめにして、口あたりのよさから飲み過ぎてしまわないよう注意しましょう。

スピリタスが「世界最強」と呼ばれる理由は、96度という高いアルコール度数にありました。ウォッカ代わりにカクテルのベースにするときは少量でOK。火気に十分留意しつつ、力強いスピリタスの味わいをたのしみましょう。

輸入元:ミリオン商事株式会社
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