日本酒と地酒は何が違う? 地酒の定義やたのしみ方

日本酒と地酒は何が違う? 地酒の定義やたのしみ方
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「地酒」は日本酒の一種で、一般的には全国的に流通している製品や、日本酒の主生産地である兵庫県・灘や京都府・伏見以外で造られる日本酒のことを指します。今回は地酒の定義や特徴、各県の代表的な銘柄、たのしみ方などを紹介します。

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地酒とは?

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各地域の蔵元がその土地の材料で造り、おもにその土地で消費されてきた「その土地の酒」のことを「地酒」と呼びます。近年は、「CRAFT SAKE」などとも呼ばれ、地方で小規模生産される日本酒にも消費者の注目が集まっていることがうかがえます。

日本酒と地酒の違いとは?

地酒は日本酒の一種です。「その土地の酒」という意味では、ワインやウイスキー、ビールなど日本酒以外のお酒でも「地酒」と呼べるものがありますが、一般的に「地酒」とは、全国的に流通するメーカーの製品や、日本酒の主生産地である兵庫県の灘や京都府の伏見以外で造られる日本酒のことを指します。

日本酒には、特定名称酒に分類される純米酒や純米吟醸酒、純米大吟醸酒、特別純米酒、吟醸酒、大吟醸酒、本醸造酒、特別本醸造酒、特定名称酒以外の普通酒などがありますが、これらはもちろん、地酒としても味わえます。

地酒が注目されはじめたのは昭和の終わり

江戸時代のころは、灘や伏見が日本酒の名醸地であり、その酒が樽詰めされて全国に出回っていました。それに対して、灘や伏見以外で造られた地元の酒を「地酒」と呼び、本場の酒よりも少し格の低いものとして扱ってきた歴史があります。

地酒が全国的に注目されるようになったのは昭和の終わりごろ。日本酒といえば米、米処といえば新潟というイメージもあってか、新潟の酒を中心とした「地酒ブーム」が起こります。なかには1本数万円ものプレミアがついたり、「幻の名酒」といわれたブランド商品が生まれたりもしました。質に関しても灘や伏見の酒に勝るとも劣らぬものがあるということが、全国的に認知されたのです。それ以降、「地酒」は地域の特産品として脚光を浴びる存在となりました。

居酒屋さんや和食店のメニューにも、「日本酒 〇合 〇円」として表記されることよりも「地酒」としてその店が仕入れた多様な銘柄が並ぶようになりました。また、その地域以外での流通が少なかった銘柄も、地酒専門店やネット通販などで購入できるようになり、「地酒」をたのしめる機会は広がっています。

地域ごとの地酒の特徴を紹介

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地域の気候や文化の違いは、お酒の味にも大きく影響します。ここでは、地域ごとに地酒の傾向を見ていきましょう。

北海道

豊かな大地と美しい水に恵まれた北海道。寒冷な気候は酒造りに適しています。

北海道の地酒の特徴は、新鮮な海の幸と相性のよい「淡麗辛口」といわれていますが、近年は濃厚・芳醇タイプのお酒も人気があるようです。

代表的な銘柄は「男山(おとこやま)」「国士無双(こくしむそう)」「國稀(くにまれ)」「北斗随想(ほくとずいそう)」「三千櫻(みちざくら)」など。2016年に新設された上川大雪酒造の「上川大雪(かみかわたいせつ)」「十勝(とかち)」や、2021年に新設された函館醸蔵の「郷宝(ごっほう)」といった新興の蔵によるお酒も注目されています。

東北

日本有数の米処で、酒造米の開発も盛んな東北エリアの地酒は、寒造りによる「キレイな味わい」が特徴的。秋田、宮城、山形、福島では淡麗辛口が多いなか、すっきりとしながら端麗甘口の青森の酒や、南部杜氏の技を受け継ぐ岩手の濃醇甘口の酒は、厳しい冬に熱燗でいただくのにも適しています。(これら同じ県内でも、けっして画一的な酒質になっているわけではありません。それぞれの蔵元が、個性のあるお酒で日本酒ファンを魅了してくれています)

新酒鑑評会をはじめ日本酒に関する数々の賞を受けるなど、日本酒業界をリードする有名な蔵本も数多く存在します。

90年代後半、当時の淡麗辛口が主流だった日本酒の流れを変えたといわれる「十四代(じゅうよんだい)」(山形)、カリスマ社長率いる「新政(あらまさ)」(秋田)をはじめ、「田酒(でんしゅ)」(青森)、「南部美人(なんぶびじん)」「七福神(しちふくじん)」(岩手)、「伯楽星(はくらくせい)」(宮城)、「飛露喜(ひろき)」「写楽(しゃらく)」(福島)
など、地酒界のスターたちが切磋琢磨しているのが東北エリアです。

関東

北海道・東北に比べると温暖な気候で酒造りには不向きとされ、ほかのエリアよりも日本酒蔵の少ない関東エリアですが、近年は豊富な水源と受け継がれた技術によって高品質の日本酒が醸されています。

関東地方の地酒で有名な銘柄は、「鳳凰美田(ほうおうびでん)」「仙禽(せんきん)」(栃木)、「神亀(しんかめ)」「花陽浴(はなあび)」(埼玉)、「木戸泉(きどいずみ)」(千葉)、「澤乃井(さわのい)」(東京)、「いづみ橋(いずみばし)」「天青(てんせい)」(神奈川)、「来福(らいふく)」(茨城)などがあります。

中部

米処新潟を中心にした日本海側は、米、気候、水といった条件が揃っていることもあり、高級酒の生産量も多い銘醸地で、新鮮な魚介類に合う淡麗辛口が主流です。また、山間部の長野山梨は寒暖差と豊富な水を生かした伝統の蔵が存在するほか、一般的には日本酒のイメージから遠いようですが、静岡、愛知、岐阜といった東海地方にも全国区人気の地酒があります。

新潟の「越乃寒梅(こしのかんばい)」「久保田(くぼた)」「八海山(はっかいさん)」「〆張鶴(しめはりつる)」は長きにわたって地酒ブームを牽引してきました。北陸では「満寿泉(ますいずみ)」「銀盤(ぎんばん)」(富山)、「菊姫(きくひめ)」(石川)、「黒龍(こくりゅう)」(福井)なども有名です。

その他、「真澄(ますみ)」「明鏡止水(めいきょうしすい)」の長野、「七賢(しちけん)」の山梨、東海地方の「義侠(ぎきょう)」「蓬莱泉(ほうらいせん)」「醸し人九平次(かもしびとくへいじ)」(愛知)、「磯自慢(いそじまん)」「初亀(はつかめ)」(静岡)、「醴泉(れいせん)」「三千盛(みちさかり)」(岐阜)など、淡麗辛口から芳醇旨口とバリエーション豊富な地酒が揃うのが中部エリアです。

近畿

灘(兵庫)、伏見(京都)といった二大銘醸地のある近畿エリア。この地域全体では京都を中心にした濃醇甘口が主流ですが、伏見のまろやかで口当たりのよい「おんな酒」に対して力強い味わいで「おとこ酒」と呼ばれる灘の豊潤辛口も人気です。

灘・伏見の大手酒造メーカーを除く「地酒」という観点では、兵庫では「龍力(たつりき)」、京都では「澤屋まつもと(さわやまつもと)」があります。ほか、「秋鹿(あきしか)」(大阪)、「大治郎(だいじろう)」(滋賀)、「風の森(かぜのもり)」「春鹿(はるしか)」(奈良)、「雑賀(さいか)」(和歌山)、「而今(じこん)」(三重)などが近畿エリアの有名な地酒です。

中国

灘・伏見と並ぶ酒処で「酒都」と呼ばれる西条市のある広島、出雲神社の伝承のなかで神々が酒宴を開いたという日本酒発祥の地」島根。近年大人気となった「獺祭(だっさい)」の山口。個性的な酒処が集まった中国エリアは、豊かな自然のもと、軟水を使用した高品質の酒造りが行われています。

「獺祭」と並ぶ人気の「東洋美人(とうようびじん)」(山口)、「宝剣(ほうけん)」「雨後の月(うごのつき)」(広島)、「酒一筋(さけひとすじ)」(岡山)、「王祿(おうろく)」(島根)、「諏訪泉(すわいずみ)」(鳥取)などが有名な中国エリアの地酒です。

四国

日本三大清流のひとつ四万十川(しまんとがわ)が流れる豊かな土地で、海に囲まれた四国エリア。昔から酒豪が多いと有名な高知では辛口が好まれ、瀬戸内海側では白身魚を中心とした淡白な食文化に合う、口当たりのよいやわらかな甘口が好まれています。

四国エリアで有名な銘柄には、「酔鯨(すいげい)」「美丈夫(びじょうぶ)」「司牡丹・船中八策(つかさぼたんせん・ちゅうはっさく)」「亀泉(かめいずみ)」(高知)、「梅錦(うめにしき)」「川亀(かわかめ)」(愛媛)、「石鎚(いしづち)」「悦凱陣(よろこびがいじん)」(香川)、「旭 若松(あさひわかまつ)」「鳴門鯛(なるとたい)」(徳島)などがあります。

九州・沖縄

気温が高く、日本酒よりも焼酎文化が根づいている九州・沖縄エリアですが、九州北部は冬場の気温が低く、酒造りに適した地域。酒造好適米「山田錦」の有数な産地でもある福岡では、豊かな水源を利用して高品質な酒造りが行われています。

福岡と沖縄は淡麗辛口ですが、それ以外の県では甘口が主流のようです。

九州・沖縄エリアで有名な地酒は「繁枡(しげます)」「亀の尾(かめのお)」「旭菊(あさひきく)」(福岡)、「東一(あずまいち)」「鍋島(なべしま)」「七田(しちだ)」(佐賀)、「六十餘州(ろくじゅうよしゅう)」(長崎)、「美少年(びしょうねん)」(熊本)、「鷹来屋(たかきや)」(大分)、「薩州正宗(さっしゅうまさむね)」(鹿児島)などです。そして、沖縄で初めて醸された唯一の日本酒が「黎明(れいめい)」です。

地酒のたのしみ方

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日本全国には、その地域の風土や食文化に合わせて、さまざまな特徴を持った地酒がたくさんあります。地酒のたのしみ方は自由ですが、ここでは2つのたのしみ方を紹介します。

同じ地域の食材と合わせてたのしむ

日本酒はそれだけで味わってもおいしいですが、食中酒として料理とともにたのしむものでもあります。

では、地酒に合う食材や料理をどのように見つければよいかといえば、やはり同じ地域の特産物や名物料理と組み合わせるのが無難であり、それが一番ともいえるでしょう。

日本酒の味わいは、造られる土地の風土に大きく影響されます。同じ風土で作られる食材や料理は、その土地の日本酒と好相性なものがほとんど。多くの蔵元は、地酒の味わいを決める際に、その土地の食事に合うことを意識します。「地酒+地元の特産物や名物料理」の組み合わせは、双方に引き立て合うものといえるでしょう。

近年では流通網の整備によって、日本のどこにいても全国の地酒が味わえるようになりました。また、特産品や名物料理も取り寄せることが容易になりました。これらを組み合わせて自宅で味わうことも、十分にたのしいものです。

現地の蔵を訪問してたのしむ

地酒の究極のたのしみ方は、実際に現地の蔵を訪れること。ごく少人数で製造している小さな蔵元や、冬などの繁忙期を除けば、多くの蔵元が見学者を受け入れています。地酒が造られているところに訪れることによって、その酒が造られる工程や歴史、造り手の思いを理解すれば、その味わいも格別なものになるはずです。

見学を受け入れている蔵では、しぼりたての原酒の試飲や、同じ銘柄でも大吟醸や本醸造などのスペックが異なるものの飲み比べができることもあります。フレッシュさが魅力の生原酒や無ろ過生原酒、あきあがりなどの限定品を販売していることもあり、新しい出会いがあるでしょう。

また、酒造りが盛んな地域では、数々の蔵が集まった地酒フェアなどのオフラインイベントを開催することもあります。


地域の特徴や造り手の個性が反映され、多彩な味わいを見せてくれる地酒の世界。自分好みの地酒に出会えたら、ますます人生がたのしくなりそうです。まずはお気に入りの1本を見つけることからゆっくりと始めてみてはいかがでしょうか。

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