『星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳』/日本ワインに特化した“ワインリゾート”に行ってきた!
『星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳』は、夏は避暑、冬はウインタースポーツを目的に訪れる人々でにぎわってきましたが、近年さらなる魅力が加わっています。それは、ずばりワイン。日本一のワイン生産県である山梨県の北部・小淵沢町に位置するこの“ワインリゾート”の魅力を探りに伺いました。
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『ドメーヌ ミエ・イケノ』との提携から始動
『ドメーヌ ミエ・イケノ』が誇る“天空のブドウ畑”。
1992年に誕生した『リゾナーレ小淵沢』。21世紀に入って星野リゾートの運営となり“大人のためのファミリーリゾート”として人気に。やがて“ワインリゾート”の要素が加わり、現在の『星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳』の姿となりました。その大きなきっかけとなったのが、近隣で営む『ドメーヌ ミエ・イケノ』との提携だったのです。
ということで、今回の取材は『ドメーヌ ミエ・イケノ』訪問からスタート。ワイナリーがあるのは八ヶ岳の裾野にある丘陵地です。
「2006年に初めて訪れた際は、耕作放棄地でした。たくさんの猫の足跡があったので、“猫の足跡畑”と名付けたのです」と池野美映(いけの・みえ)さん。代表でワインメーカー、約3ヘクタールのブドウ畑を管理しています。
猫の看板に沿って上ると、こぢんまりとしたワイナリーが現れます。
“猫の足跡畑”にちなんだキャップシールがキュート。
2007年春に開墾してワイン用ブドウの栽培を始めたという池野さん。2011年にはブドウ畑のそばに醸造所を建設、自社畑100%のブドウで高品質のワイン造りを目指す『ドメーヌ ミエ・イケノ』を誕生させたのです。
この土地の魅力について尋ねると、
「晴天率が高くて、雨が少ない。昼夜の寒暖差が大きくてブドウの酸味と糖分がキープされます。標高が750メートルあり冷涼なのでブドウを育てるのに適していますね」。畑は広陵地にあるため常に陽が差し、まさに“天空のブドウ畑”。
この恵まれたテロワールで栽培されているのは、ピノ・ノワール、シャルドネ、メルロの3種。フランス・ブルゴーニュ地方で醸造に携わっていたこともあり、とくに池野さんの思い入れが深いのはピノ・ノワールだそう。
「デリケートな品種だから日本では難しいと言われたのですが、初リリースからピノ・ノワールを出しました。世間的にも何とか認めてもらえるようになり、今ではピノ・ノワールに取り組まれている日本の生産者も増えて嬉しいですね」とにっこり。
壮大な景色をバックに、池野さんをぱちり。
「八ヶ岳の土や風や水や太陽、その全部をそのまま詰め込んだような凛とした優雅なワインを造りたい」と池野さん。そのために農薬の使用を最低限に抑えるリュットレゾネでブドウを栽培。あえて下草を生やす草生栽培も取り入れています。
さらにこのワイナリーには特筆すべきことが。それは、国内ではパイオニアとなるグラビティ・フロー・システムの採用。グラビティ(gravity)とは“重力”の意。醸造工程において、ブドウやブドウ果汁にポンプによる人工的な負荷をかけずに、自然落下によって行う醸造製法と設備のことを指します。このシステムで醸造すると、ブドウの繊細な個性を損なわずに、特色のあるワインを造ることができるのだとか。
醸造所は地上1階、地下2階のコンクリート製の建物。当然ブドウ畑より低い位置にあります。
こうして出来上がったサスティナブルなワインは、
「初めてのリリースから無濾過かつ無清澄。出来上がったワインをそのまま瓶詰めしています」。そして「当初はこんなに濁ったワインが本当に売れるだろうかと半信半疑でした(苦笑)」とも。でも池野さんの想いは飲み手に伝わり、引く手あまたとなったのです。
締めくくりに『星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳』との提携についてお聞きすると、
「輸送距離が極めて短い場所で提供されるため、ワインに負担がかかりません。ワイナリーと同じ風景を眺めながら、状態のよいワインをゲストにテイスティングしていただけたり、とびきりの料理とのペアリングでたのしんでいただけたり…。ワインにとっても、私にとってもとても幸せですね」。
ドメーヌ ミエ・イケノの詳細はこちら
※非公開。ワイナリー見学や試飲は行っていません。有料試飲や購入は、次章の『八ヶ岳ワインハウス』で。
厳選された山梨&長野県産ワインをテイスティング
『星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳』を象徴するメインストリート『ピーマン通り』。
『ドメーヌ ミエ・イケノ』から車で約10分。『星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳』は、世界的建築家マリオ・ベリーニが、“訪れる人々が地上のどこよりも安らげる空間を”をコンセプトに築き上げたイタリアの山岳都市をほうふつさせる街並みに展開。出来上がった施設は上層部にゲストルームを備え、1階にレストランやカフェ、雑貨店などが軒を並べていますが、そうしたショップのひとつが次に目指す『八ヶ岳ワインハウス』です。
雑誌やテレビなどで度々登場するメインストリートが『ピーマン通り』。その喧騒を少し逃れた一角に、『八ヶ岳ワインハウス』はたたずんでいました。中に入ると暗めの照明にひんやりとした温度で、空間自体がまるでワインセラーのよう。目の前に整然と並ぶボトルはすべて、日本屈指のワイン生産県である山梨県と長野県のものです。
『八ヶ岳ワインハウス』は宿泊者限定でなく、リゾートに来たゲスト全員が利用できます。
奥にボトルが立ち並ぶショーケースのような冷蔵庫!?が存在感を放っていますが、こちらがワイン愛好家お目当てのワインサーバー。しっかりと温度管理が施されていて少量から注げるスグレモノで、厳選された24種類のワインが気軽にテイスティングできるのです。
ワインサーバーのボトルは基本的に左から白、ロゼ、赤の順ですが、センターポジションは、やっぱり『ドメーヌ ミエ・イケノ』。
気になるワインの量は、基本25cc・50cc・150ccの3カテゴリー。料金は150円からとリーズナブル。帰る際に専用カードをレジに持っていき精算するというシステムは大変便利なのですが、ゲーム感覚でついついワインが進んでしまうので注意しましょう。
入店の際に渡された専用のカードを差し込み、飲みたいワインのサーバーに自分でグラスセット。パネルで量をチョイスして注ぎます。この時カードに金額が記憶されます。
明るいうちから堂々とワインが飲めてサイコーです。
小さなボトルにサーバーから好きなワインを好きなだけ詰めて、コルク素材のバスケット『VINO BAG』でテイクアウト。自分の部屋などでゆったりワインをたのしめます。
購入したワインに『BYO/ブリング・ユア・オウン(ワイン)』シールを貼ってもらえば、リゾート内の8つのレストランとカフェに無料で持ち込みが可能。
毎日16時と17時から宿泊ゲスト限定で『ワインの学校』を開催。ワインビギナーでもわかりやすいプログラムを、若いスタッフが元気よくレクチャーしてくれます。この日は、武川沙織(むかわ・さおり)さんが担当。
メインダイニングで野菜とワインのマリアージュを
『OTTO SETTE(オットセッテ)』では、マリオ・ベリーニが手がけた高い吹き抜けのもと、優雅なディナータイムを過ごせます。
アカマツの森の中にあるメインダイニング『OTTO SETTE』。ちなみに「OTTO」は数字の「8」つまり八ヶ岳。「SETTE」は数字の「7」つまり食材を提供する7人の達人を意味しているそうです。こちらで供されるのは、大地の恵みを享受した素材を独創的に活用したイタリア料理。今回はワインのペアリングをたのしめるというスペシャルコースに注目しました。
コースの名称は、『Vino e Verdura(ヴィノ・エ・ヴェルドゥーラ)』。「Vino」はワインで、「Verdura」は野菜。そう、八ヶ岳の旬の野菜で構成された料理と、同じ風土で育まれたワインをひと皿ごとにペアリングしてたのしむという趣旨です。今回は取材時の春のメニューから3つのペアリングを紹介。料理に合わせてワインをセレクトしたソムリエの長久保正邦(ながくぼ・まさくに)さんに解説をいただきました。
約2000本のワインが眠るセラーを管理する長久保さん。
“恵み”×ソーヴィニョン・ブラン
とても鮮やかで、“映え”するひと皿。
『ソレイユ グルペット・ブラン 2018』
まずは30種類以上の野菜を中心とした前菜。
「それぞれの野菜の特性に合わせて、フレッシュなまま、火入れ、ボイルなど調理方法を変えています」。クミンシードの香りを効かせたニンジンソースや、小松菜のグリーンソースをつけていただきます。たかきび、古代米、アマランサスと3つの雑穀も添えられていて、多彩な食感もたのしめました。
長久保さんが選んだワインは、『ソレイユ グルペット・ブラン 2018』です。
「山梨市の旭洋酒で醸されたソーヴィニョン・ブラン主体の白ワインです。品種らしいハーブのような青っぽさに丸みもあるので、どの野菜とも美味しくなる組み合わせだと思います」。
あと味には蜜のような甘味も感じられ、野菜の前菜にあえたヴィネグレットの酸味を和らげているのも印象的です。
じゃがいも×ピノ・ノワール
こちらの料理はナイフを入れる前、ナイフを入れた後と2カットで。
『ピノ・ノワール 2016』
メインディッシュはじゃがいもを使った料理です。
「丸ごと蒸したじゃがいもの中に、卵黄とグラナパダーノ(チーズ)の濃厚なソースが。ナイフを入れた瞬間、まぶしいほどの黄色のソースが流れ出るという趣向です」。掘り出される直前のじゃがいもを表現するために、じゃがいもと赤ワインとパンでつくった土に見立てたパウダーをまぶしてあり、さらに目の前でトリュフを削るという演出も。
ここで満を持して登場したのが、『ドメーヌ ミエ・イケノ』の『ピノ・ノワール 2016』。
「本来は違うワインなのですが、本日取材されたと聞いてこちらに」とほほ笑む長久保さん。じつは密かにこれを期待して、先ほど『八ヶ岳ワインハウス』では試飲を我慢しており、こちらもにっこりです。
「この2016年は厚みがありシルキーさが際立っていて、トロリとしたソースの滑らかさに重なると考えたのです」。料理をいただいた後ワインを含むと、口中に広がるのはマリアージュの証の甘さ…この日を象徴するペアリングでした。
グリーンピース×甲州
温かいソースをかけて完成です。
『エサンス・ド 甲州 2015』
デザートの主役はなんとグリーンピース。
「野菜がテーマですから(笑) グリーンピースのジェラートに、ニンジンと甘夏のエスプーマ(泡)仕立てのクリームとルバーブのジュレを添えています」。全体は綿あめで覆われており、そこに温かいはちみつとカルダモンのソースをかけると、まるで雪が解けるように綿あめが消えて全容が現れました。
締めのワインは、メルシャンの『エサンス・ド 甲州 2015』。甘口のデザートワインです。
「熟度の高い遅摘み果実を使用している甘口ですが、甘さはほどよく、余韻まで長く残る酸味とのバランスが絶妙です。この酸味が甘夏の酸っぱさに寄り添い、さっぱりさわやかにお召し上がりいただけると思います」。
ちなみに「エサンス」は神髄という意味で、まさにペアリングの神髄をたのしめたコースでした。ごちそうさまでした。
※参考料金/『Vino e Verdura春』(料理11品とペアリングワインを含む)2万4500円。料理内容とワインは変更する場合があります。
“ワインリゾート”ならではのスイートルームも
2階のリビングは大きく窓が取られ、雄大な自然はもちろん眼下には『ピーマン通り』が見渡せます。
最後に案内されたのが、2019年3月に誕生した『ワインスイートメゾネット』。高さ7.5メートルの吹き抜けをもつメゾネットの1階には、フローリングの小上がりにベッドとデイベッドを配置。最大5名が宿泊できます。
2階は縦横3メートルのビッグサイズの窓が特長的。しっとりとしたボルドーカラーを基調にしていて、落ち着いて過ごせる空間に、ぐるりと配置したローソファに、2つのカフェテーブルとクッションを備えています。
壁に描かれているのは八ヶ岳連峰。
2階には最大12本入るワインセラーがあり、中には長久保さんおすすめのワインがぎっしり。この客室専用で、他では入手できない『ドメーヌ ミエ・イケノ』のハーフサイズボトルもあります。リゾート内で購入したおつまみとワインを合わせてのパーティーは、時間を忘れて永遠に続けられそうですね。
滞在中は“マイ・セラー”となります。
フランス・アルザス地方やドイツワインのように、スレンダーなハーフボトル。
ブドウの搾りかすを染料にした『ワインレザー』を用いたオリジナルのボトルバッグも。こちらに入れてリゾート内を持ち運べます。
※価格は取材時のもの(税金、サービス料など込み)
ご紹介した施設の詳細は『星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳』のサイトで
ワインの魅力がぎっしり詰まった『星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳』はいかがでしたか? カジュアルでもフォーマルでも、多彩なスタイルやその日の気分に合わせてワインを味わえるのがいいですね。心地よく酔ったら、そのままベッドで寝られるのも旅の醍醐味。ぜひ泊りがけで“ワイン尽くし”をたのしみましょう!
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、営業日・時間などが変更になる可能性があります。お出かけの際は公式HPやSNS等のご確認をおすすめします。
2020年9月22日現在、「星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳」は大浴場「もくもく湯」とスパ「VINO SPA」以外は通常通り営業。「八ヶ岳ワインハウス」も通常通りの営業とのことです。