ビールの国内シェア、これまでとこれから

ビールの国内シェア、これまでとこれから
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ビールの国内シェアは、長年にわたり大手メーカーが高い市場占有率を誇ってきました。近年では、海外ブランドやクラフトビールなどの人気の高まりもあり、多様化が進んでいますが、ビールのシェアにどのような変化があるのでしょうか? 今回はビールの国内シェアにまつわる状況について紹介します。

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ビールの国内シェアをめぐる競争の歴史

ビールの国内シェアをめぐる競争の歴史

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ビールのシェアはビール普及の歴史と大きな関わりが

日本におけるビールの歴史は、キリン、アサヒ、サッポロ、サントリーといった、現在も続く大手ビール4社の存在を抜きには語れません。
日本でビール造りが始まったのは明治2年(1869年)のこと。当初は外国人の手によるものでしたが、明治中頃には国産ビールが台頭。1877年の「サッポロビール」を皮切りに、1888年に「キリンビール」、1890年に「ヱビスビール」、1892年には「アサヒビール」と、現在まで受け継がれている銘柄が次々と誕生しました。
その後、明治末期から戦後にかけて、ビール会社の統合・再編が進み、昭和20年代にはキリン、サッポロ、アサヒの3社が市場を牽引。昭和38年(1963年)にサントリーがビール業界に参入したことで、現在まで続く大手4社による市場占有体制が築かれました。

ビールの国内シェアを独占する大手ビール4社

大手ビール4社が中心となったビール業界は、昭和30年代から40年代にかけての高度成長期に大きく成長し、昭和34年(1959年)には、日本酒(清酒)を抜いてお酒のなかで消費量トップのジャンルとなります。
こうした好況を背景に、大手ビール4社によるシェア争いは、ますます激化。各社とも生産拡大をめざして新工場を次々と建設し、ビールの基準価格が廃止されると、価格面での競争も激しさを増していきました。こうした大手ビール4社による競争を通じて、日本独自のビール文化が育まれていったのです。

ビールの国内シェアに関する近年のトピックス

ビールの国内シェアに関する近年のトピックス

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ビールの国内シェアに変動を起こした「スーパードライ」

大手ビール4社による市場の占有体制が築かれて以降、長らくキリンがシェアトップの座を確保、2位にサッポロ、3位にアサヒ、4位にサントリーという時代が長く続きました。
ところが、1987年に爆発的なヒットとなったアサヒの「スーパードライ」が登場すると、その様相が一変。アサヒが、キリンとサッポロを追い抜いてシェア1位の座を獲得。その後、いったんはキリンが首位の座を奪い返しますが、再びアサヒが首位に立ち、2010年から2018年まで9年連続でシェアトップとなっています。また、2008年にはサントリーがサッポロを追い越して3位となるなど、不動に思われた順位に変動が生じています。

ビールの国内シェア公表は2019年から取りやめに

大手ビール4社によるシェア争いは、2018年時点で1位のアサヒが37.4パーセント、2位のキリンが34.4パーセントと僅差で追いかけ、3位のサントリーは16.0パーセント、4位のサッポロが11.4パーセントと続いています(出典:読売新聞2019年1月16日)。
ところが、こうしたデータの公表元である「ビール酒造組合」によると、大手4社のすべてがシェアに関する数字を公表するのは、2018年が最後となるようです。数字が公表されなくとも、各社がさらにおいしいビールの開発など、シェア争い以外の部分に力を注いでくれるなら、消費者にとってうれしいニュースと言えるのかもしれません。

ビールの国内シェアを占う今後の動向

ビールの国内シェアを占う今後の動向

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ビールのシェア争いが、多様な商品開発を後押し

大手ビール4社による激しいシェア争いは、「発泡酒」や「第三のビール」などの低価格商品や、「ノンアルコールビール」や「糖質オフ」「カロリーオフ」などの付加価値商品の開発に注力するなど、新たな商品開発を後押ししてきました。
今後、シェアの数字が公表されなくなっても、こうした競争は続いていくはずです。

ビール各社は国内のシェア争いから、海外へと活路を見出す

ビールの国内出荷量は、人口減少などを背景に、近年、少しずつ減少を続けています。このため各ビールメーカーとも、国内から海外へと目を向け始め、海外での販売強化はもちろん、海外ブランドとの提携や海外企業の買収、海外生産体制の強化など、海外展開に積極的に取り組んでいます。
国内以上に激しいシェア争いが繰り広げられている世界を舞台に、日本のビールメーカーがどこまで存在感を発揮できるのか、今後の動向が注目されています。

これまでは国内におけるシェアばかりが注目されがちでしたが、今後は日本のビールメーカーも世界が舞台となる時代。ぜひとも、「日本のビール」の魅力を世界に広めてほしいものですね。

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