ペットボトル入りのビールが普及していない理由とは?
ビールとペットボトルという取り合わせに、違和感を覚える人も少なくないでしょう。ビールをその場で飲む際や、持ち帰り用などでは見られるものの、スーパーなどの店頭でペットボトル入りビールを見かけることはありません。なぜ、ペットボトル入りのビールは一般的でないのか、その理由を探ってみました。
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ペットボトル入りビールが普及していない理由
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ビール容器にペットボトルが適さない理由は“酸素”
ペットボトル入りのビールがあまり販売されていない一番の理由は、ペットボトルが缶や瓶に比べると酸素を通しやすい素材であること。ペットボトルの表面には、ごくわずかな隙間があり、内容物が漏れ出ることはないものの、酸素のような細かな分子は透過してしまいます。
ビールをペットボトルに入れておくと劣化が進む
ビールの品質を保つうえで、酸素は最大の敵。酸素に触れることでビールが酸化してしまい、ビールに濁りが生じたり、褐色に変色したり、さらには渋味が生じるなど、ビールそのものの味も劣化する恐れがあります。
このように、ビールをペットボトルに入れておくと、大気中から透過してくる酸素のために、徐々に品質が劣化してしまいます。スーパーやコンビニの店頭にビールのペットボトル入り商品が並んでいないのは、こうした理由からです。
もしペットボトル入りのビールが販売されると?
おもに大手ビールメーカーの缶や瓶入りのビールだと、賞味期限が約9カ月間ありますが、ペットボトル入りのビールを開発した場合は1カ月ほどで賞味期限が到来してしまうのだとか。
店頭での提供や持ち帰りなど、短期間で飲む場合はともかく、倉庫での保管や店頭での販売期間を考えると、ビールメーカーがペットボトル入り商品を発売しないのも、納得できるというものです。
ペットボトル入りビールは海外では販売されている
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ペットボトル入りのビールは海外では販売
ペットボトル入りビールは、日本国内では見かけることは少ないですが、じつは海外では珍しくありません。
たとえば、ビールの本場、ドイツでは缶や瓶入りのビールと並んで、ペットボトル入りのビールが店頭で販売されています。
なお、空容器回収のため、ペットボトルにはビール瓶やアルミ缶と同様に保証金がつけられています。
ドイツに見るペットボトル入りビール
一般的なのは500ミリリットル入りのペットボトルで、日本に比べて安価で購入できます。安いからといって、決して発泡酒などではなく、ホップと麦芽を原料にした正真正銘の本物のビール。
ただし、やはり味にこだわる人は、缶や瓶入りのビールを購入することが多いのだとか。
ロシアに見るペットボトル入りビール
ロシアではビールの量り売りをするお店があり、そこではペットボトルに新鮮な生ビールを詰める光景が見られます。その日に飲むビールを、その都度、購入して持ち帰るのであれば、長期間保存する必要はないので、軽量で扱いやすく、割れる心配もないペットボトルを使う方が、理にかなっていると言えるでしょう。
ペットボトルで販売されている日本のビール
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ペットボトル入りのクラフトビールを持ち帰り
ペットボトル入りのビールは、日本でも販売されていないわけではありません。たとえば、2017年に銀座のバー内に完成した「ブリューインバー主水(もんど)銀座醸造所」では、お持ち帰り用としてペットボトル入りのクラフトビールを保冷バッグつきで販売しています。
店内醸造したクラフトビールを、その場で詰めて提供する形なら、倉庫や店頭での長期保存がないため、ペットボトルで提供しても品質への影響は問題なしというわけです。
ブリューインバー主水「銀座醸造所」
公式サイトはこちら
ペットボトルに特殊コーティングでビールを守る技術も
ペットボトル入りビールの弱点とされる「酸素の透過」を、先端技術で解消しているケースもあります。
キリンの会員制サービス「Home Tap(ホームタップ)」は、こだわりのビールを専用のビールサーバー(レンタル)とともに提供するもの。サーバーに格納する交換用のビール容器に使用するのが、特殊なコーティングによって酸素を透過しないペットボトル。先進の技術によってビールの品質を支えているのです。
キリン「Home Tap」
公式サイトはこちら
海外では見られるものの、日本ではあまり見かけないペットボトル入りビール。なぜビールだけペットボトル入りがないのか疑問に感じていた人も、理由がわかると納得できたのではないでしょうか。近年では、解決策も導き出されているので、いずれはもっと身近な存在になるかもしれませんね。