「ギムレット」はジンベースの有名なカクテル

「ギムレット」はジンベースの有名なカクテル
出典 : Brent Hofacker / Shutterstock.com

「ギムレット」は、ジンをベースとしたさわやかな飲み口のカクテル。レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説『長いお別れ』 の「ギムレットには早すぎる」というセリフで一躍有名になりました。そんなギムレットの誕生秘話や、おいしい作り方について紹介します。

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「ギムレット」とはどんなカクテル?

「ギムレット」とはどんなカクテル?

Oksana Mizina

ギムレットは、ジンとライムジュースを合わせて作る、柑橘系のさわやかな風味が人気のカクテルです。
ジンは、トウモロコシなどの穀物を原料としたスピリッツ(蒸溜酒)に、「ポタニカル」と呼ばれる香草・薬草を加えて再蒸溜して造られるお酒。ギムレット以外にも、ジントニックやマティーニなど、さまざまなカクテルのベースとして用いられます。

数あるジンベースのカクテルのなかでも、ギムレットが高い人気をもつのは、オシャレなイメージに加えて、ライム由来のさわやかでキレのある飲み口が大きな理由でしょう。
同様にジンとライムで作るカクテルに「ジンライム」がありますが、こちらは氷を加えてオンザロックで飲むスタイル。ギムレットは、シェイカーを使ってしっかりとシェイクすることで、ジンの刺激がやわらぎます。「ジンを使ったカクテルは初めて」という人には、ギムレットのほうが飲みやすいかもしれません。

なお、ギムレットのアルコール度数は少し高め。使用するジンの種類にもよりますが、一般的には25~30度ほどです。ついつい飲みすぎてしまうおいしさなので、飲みすぎには気をつけましょう。

ちなみに、ギムレットのカクテル言葉は「遠い人を想う」や「長いお別れ」。切なさの漂うカクテル言葉をイメージしながら飲むと、ギムレットのさわやかな味わいを、また違った意味合いで感じることができるでしょう。

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「ギムレット」の名の由来には諸説あり

「ギムレット」の名の由来には諸説あり

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ギムレットの名前の由来は、いくつかの説があります。どの説が真実なのかははっきりしませんが、そうしたミステリアスさも、ギムレットの魅力のひとつといえるかもしれません。

ギムレットの名前の由来として、しばしば紹介されるのが、まるで錐(キリ:a gimlet)のように鋭い味であることからその名がついた、という説。同じ語源でも、ライムジュースの栓を抜くのに錐を使ったからという説もあるようです。
いずれの説も、生のライム果汁でギムレットを作ったときに生まれる、霧(キリ)のような白さとかけた言葉遊びができるため、とくに日本のバーテンダーのあいだで好まれているのだとか。

ギムレットの由来についてのもうひとつの有力な説が、生みの親の名をとったというものです。その説によれば、ギムレットが誕生したのは19世紀後半のこと。当時のイギリス海軍では、将校にジンを配給していましたが、軍医だったギムレット卿が、健康のためにジンをライムジュースで薄めて飲むように提唱。これがギムレットの始まりとなったといわれています。

「ギムレット」のおいしいたのしみ方とバリエーション

「ギムレット」のおいしいたのしみ方とバリエーション

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ギムレットの一般的なレシピは、ジンとライムジュースを3対1の割合でシェイカーに入れて、しっかりシェイクしたうえで、よく冷やしたカクテルグラスに注ぐというもの。
グラスのふちにカットしたライムを飾ったり、スライスしたライムをトッピングすると、見た目も華やかでとてもオシャレなカクテルに仕上がります。

最近では、味や香りがよいからと、ライムジュース(シロップ)ではなく生のライム果汁を使うレシピも人気です。生のライム果汁にはライムジュースのような甘味がないので、ガムシロップ5ミリリットルほどを加えるのがおすすめです。
ライムジュースで作るギムレットは、やさしいグリーン色のカクテルですが、ライム果汁で作ると、前述のように霧がかかったような美しい白色になります。
緑色のギムレットと白色のギムレットを造り分けて、色や味わいをくらべてみるのもたのしいでしょう。

さわやかでいて、しっかりした味わいのギムレットに合わせるおつまみは、味が濃い目の味のものや、酸味の利いたものがおすすめ。定番なのはピクルスやナッツ類、ジャーキーなどですが、意外なところでは麻婆豆腐などにも合うのだとか。
また、ギムレットを凍らせてシャーベットを作れば、さわやかであっさりとしたデザートがたのしめます。ぜひ試してみてください。

「ギムレット」を一躍有名にしたハードボイルドの名作「長いお別れ」とは

「ギムレット」を一躍有名にしたハードボイルドの名作「長いお別れ」とは

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ギムレットを一躍有名にしたのが、レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説『長いお別れ』に登場する「ギムレットには早すぎる」というセリフです。

チャンドラーは、1888年アメリカ生まれの小説家。『大いなる眠り』『さらば愛しき女』など数々の名作を残し、タフで非情な探偵が活躍する、いわゆる「ハードボイルド小説」の生みの親と称されています。彼の生み出したキャラクター、私立探偵フィリップ・マーロウは、現在もなおハードボイルド探偵の代名詞として、世界中で愛されています。

1953年に刊行された『長いお別れ』は、チャンドラーの著作のなかでも傑作のひとつ。日本では、1958年に早川書房から清水俊二氏の訳で刊行されましたが、2007年に村上春樹氏が手がけた新訳『ロング・グッドバイ』で再び話題となりました。若い人のなかには、村上氏の『ロング・グッドバイ』で「ギムレット」を知った、という人もいるのではないでしょうか。

この『長いお別れ』において、フィリップ・マーロウは、友人・レノックスの死をきっかけに事件に巻き込まれます。二人を結びつけたのが酒場であり、よく飲み交わしていた酒がギムレットでした。
レノックスが残した「ギムレットには早すぎるね」という言葉は、事件の真相を暗示するものであり、ハードボイルド史に残る名セリフとして語り継がれています。

まだ読んだことがない、という人は、ぜひこの名作をチェックしてみてください。ギムレットを飲みながら、作中の二人の気持ちを想像するのも、新しいカクテルのたのしみ方になるかもしれません。

「ギムレット」の本当の姿とは? その真相を追う

「ギムレット」の本当の姿とは? その真相を追う

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ギムレットを一躍有名にした『長いお別れ』では、「ギムレットには早すぎる」以外にも、ギムレットにかかわるセリフが少なくありません。
なかでも、カクテルマニアのあいだでしばしば議論のタネとなるのが、「本当のギムレットは、ジンとライムジュースを半々入れるのが正しい。ライムジュースはイギリス・ローズ社が正解」というレノックスのセリフ。先述した一般的なレシピでは、ジンとライムジュースの比率は3:1なので、レノックスの説だとライムジュースの主張が強くなりそうです。

一説によると、レノックスが語る「本当のギムレット」とは、1917年にセントルイスのバーテンダー、トム・バロックが考案したとされる「ジレット」というカクテルを指しているのではないかといわれています。
ジレットのレシピは、氷を詰めたミキシンググラスに、バーネット社の「オールド・トム・ジン」とライムジュースを、それぞれ約70ミリリットル、さらに砂糖を小さじ半分ほど入れて、よくかき混ぜるというもの。
ライムジュースのブランドはともかく、ジンとライムジュースの比率は1対1なので、レノックスがいう「本当のギムレット」に近いものと考えてよいでしょう。

ちなみにジレットのスペルは「Gillet」で、「l」をひとつ「m」に変えれば、「Gimlet(ギムレット)」になります。こんなところにもギムレットの名前の由来が隠れているというのは、さすがに考えすぎでしょうか?

ギムレットを有名にした小説に登場する二人のように、親しい友人と語らいながら口にするギムレットは、格別の味わいに違いありません。ギムレットをめぐるさまざまなエピソードを語り合えば、より奥深くたのしめそうですね。

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