米焼酎と麦焼酎のおいしさを左右する原料の話
日本酒やワインのように、原料がひとつに限定されていないのが焼酎。理論的にはデンプンさえ含まれていれば、何からでも焼酎を造ることができます。今回は米焼酎と麦焼酎の原料にスポットを当ててみました。
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米焼酎に使われる米
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古くから稲作の盛んな日本ですから、米がお酒の原料として使われてきたのも当然のことでしょう。米が原料の酒、と聞いて頭に浮かぶのは日本酒? それとも焼酎でしょうか?
日本酒と同じように、焼酎も米の外側のタンパク質や脂質を取り除く精米を行います。日本酒の場合、雑味の原因を取り除くために一般的な精米歩合は60~70%ほど。それに対して、米焼酎は米のふくよかな甘味や旨味を残すことをよしとするので、精米歩合は85~90%ほどになります。
当然ながら原料米にこだわる蔵元は多く、その米類は多岐に渡っています。焼酎は地元の原料にこだわる酒。そのため、その土地の特産米やブランド米などを使って差別化を図っています。
米焼酎で使われる品種は「ヒノヒカリ」という米が一般的。九州を中心に栽培される品種で、稲が強く、収穫量が多いことが特徴です。このほか、米焼酎は食用として人気の「コシヒカリ」や「あきたこまち」などのブランド米を使うことも。なかには、米づくりから手がける蔵元もあります。
他の米焼酎と一線を画す琉球泡盛
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基本的に国産米を使うことが多い米焼酎。「コシヒカリ」などはすべて「ジャポニカ米」という私たちにはなじみのある品種です。ところで、同じ米焼酎でも「タイ米」を使っている焼酎があるのは知っていますか?
それは、沖縄の特産品の琉球泡盛です。そもそも、泡盛が米焼酎だということもあまり知られていないかもしれません。泡盛はタイ米が原料。タイ米は「インディカ米」と呼ばれ細長い形状で水分や脂質、タンパク質の少ない米です。タイ米は麹造りに適していて、安定したアルコールを作り出すことできます。泡盛の香りを「バニラのような香り」と表現することがありますが、これはタイ米由来の香りです。
タイ米は、東南アジアの国で多く栽培されていて高温多湿の沖縄にも相性がいいそう。泡盛の製造方法は、当時のシャム(タイ国)から伝わったといわれています。タイには泡盛の原型ともいえる香り高い「ラオ・ロン」という蒸留酒があるとか。どんな味なのか、試してみたくなりますね。
ちなみに、「琉球泡盛」は、世界貿易機関(WTO)のTRIPS協定が定めた、地理的表示の産地指定を受けている「産地呼称焼酎」のひとつです。地理的表示とは、ある商品の品質、評判などが地理的原産地に起因する場合において、その原産地を特定する表示のこと。ワインでいえば、シャンパーニュも同様です。この協定の制定をきっかけに、日本でも酒税法を改正。「地理的表示に関する表示基準」が設けられました。
麦焼酎に使われる麦
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大麦も、ウイスキーやビールの原料として、古くから重宝されてきました。大麦には粒の並んでいる数によって、二条、四条、六条大麦という種類がありますが、麦焼酎には粒の大きい二条大麦が原料としておもに使われています。明治初期にビールの原料用としてヨーロッパから持ち込まれたことから、別名ビール麦とも。この二条大麦は、デンプン含有量が多いことから、焼酎造りにも適しているのです。
焼酎造りに使うのは、オーストラリア産など外国産の麦が多いのですが、「ニノチカラ」「イシュクシラズ」といった国内産麦も使われていて、焼酎用にでんぷん含有量を高くするなどの品種改良も行われています。
日本酒作りで米を磨くことを「精米」といいますが、麦焼酎作りでは、外皮を剥いた後に堅い胚芽部分を削ることを「精麦」といいます。雑味のもととなるタンパク質や脂質を除くために行うものですが、麦焼酎の場合は、60%前後の精麦歩合が一般的。日本酒と同じように、削る量が多くなれば雑味は減り、大麦がもつ香りや味わいをより引き出すことができます。
比較的くせのない焼酎として、初心者におすすめしやすい米焼酎と麦焼酎。それでも、同じ米や麦の中でもその種類によって味わいが大きく異なります。米だけ、麦だけ、と飲み比べると、たくさんの味をたのしめそうですね。