日本酒のアルコール発酵にかかせない酵母のこと
日本酒のアルコール発酵に欠かせないのが酵母です。肉眼では目に見えない菌類の一種、酵母なくしておいしい日本酒は生まれません。酵母の役割とおいしい日本酒のできる酵母の種類を紐解いてみました。
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酵母の役割
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酵母は菌類の一種で、肉眼では見えない微生物。酵母は、酒以外の食品の発酵にも使われますが、日本酒造りに使われる酵母を「清酒酵母」と呼びます。日本酒は米のデンプンを麹の働きで糖に変え、さらに糖をアルコール発酵させることで造られますが、このアルコール発酵は、酵母が糖をエサにアルコールを生じさせることで起きるのです。
じつは酵母といっても多様な種類があり、その個性が日本酒の味わいや香りに大きな影響を与えます。なかでも香りにおける影響力は絶大! 日本酒には果物のようなフルーティーな香りのものや、花のような香りのもの、ナッツの香りを醸すものなどさまざまありますが、この香りの特徴を決定づけるのが酵母なのです。
また、酵母の種類によって発酵の仕方が変わるなど、酵母は酒の個性を形作る重要な要素といえます。酵母のことを知っておくと、今よりもっと日本酒選びがたのしくなるかもしれませんよ。
きょうかい酵母ってなに?
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酵母には大きく分けて3つのグループがあります。
まず一つめは、酵母の代表格として、多くの酒蔵で使用されている「きょうかい酵母」です。「きょうかい酵母」は、日本醸造協会によって広く頒布されている酵母で、日本酒のラベルの酵母の欄に「7号」や「9号」などと書かれているものがこれに当たります。
二つめが、全国の自治体や研究機関がつくる「開発酵母」。たとえば、福島県開発酵母である「うつくしま煌酵母」は、うつくしまふくしまブランド酒 「夢の米・夢の酒」を生み出すにあたってオリジナル酵母として開発されたもの。フルーティーな吟醸香を醸し出すのが特徴です。このほか秋田県の「秋田流花酵母AK-L」、長野県の「長野アルプス酵母」など、それぞれの土地に合った多くの酵母が誕生しています。
三つめが、自然の花から分離した「花酵母」。「イチゴ酵母」や「リンゴ花酵母」などがあり、その名のとおり果実のようなさわやかな香りを醸し出します。このように日本には様々な酵母があり、それぞれが個性豊かな日本酒の香りや味わいを支えているのです。
これらのなかでも、多くの酒蔵で使われているのが、きょうかい酵母です。1904年から国立醸造試験所で培養が始まったきょうかい酵母ですが、その伝統を受け継ぐ「7号」「9号」「701号」「901号」が現在の主流となっています。これらの酵母を用いた日本酒は品質に安定感があり、夏を越して香りは低く落ち着いても、味わいがよくなるといわれ、「秋上りする」などといいます。
最近は、リンゴのような華やかな香りの酒を造ることができる「セルレニン耐性酵母(香り酵母)」が人気。この酵母の開発によって、華やかな吟醸香を持つ日本酒が多く醸造されるようになり、人気を博しています。
普段はあまり注目されない酵母。次に日本酒を飲むときは、ラベルの酵母情報も気にして味わってみてください。