【入門】角打ち(かくうち)とは? 立ち飲みとの違いからマナー、粋なたのしみ方までガイドします!

【入門】角打ち(かくうち)とは? 立ち飲みとの違いからマナー、粋なたのしみ方までガイドします!
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「角打ち(かくうち)」とは、酒屋さんの店頭でお酒をたのしむこと、またはそのスタイルを指す言葉です。今回は、角打ちの概要や立ち飲みとの違い、語源や読み方、全国各地での呼び方、歴史、角打ちのマナーや魅力、お店の探し方などを紹介します。

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さっそく「角打ち」とはどういうものかチェックしていきましょう。

「角打ち」とは?

角打ちの概要

酒林 蒼 / PIXTA(ピクスタ)

角打ちの基本スタイルからみていきます。

「角打ち」は酒屋さんの店頭で日本酒などを立ち飲みすること

「角打ち」とは、「酒屋さん店頭に設けられた立ち飲みスペースでお酒をたのしむこと」、もしくは「角打ちができる酒屋さん自体」を指します。

角打ちと聞くと、近所の常連さんや仕事帰りのミドル世代の憩いの場、あるいは渋いたしなみと思う人もいるかもしれません。しかし近年、その価値や魅力が再発見されてきていて、若い世代にもジワジワと浸透しています。それに伴い、初めての人でも立ち寄りやすいスポットも登場しているようです。

ふらっと立ち寄ってお酒を味わい、店主やお酒好きの常連さんとのコミュニケーションをたのしみつつも、けっして長居はせずに疲れを癒やす。角打ちは「ちょっと1杯」を気軽にたのしめる粋な文化として、老若男女問わず愛飲家たちの支持を得ています。

角打ちと立ち飲みの違い

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おつまみも出てくる「角打ち」と「立ち飲み」の違いは語源にあり!

「角打ち」という言葉の語源には諸説がありますが、有力な説として、酒屋さんの店頭で四角い升に入ったお酒を、升から直接飲むことが挙げられます。

つまり「角打ち」といった場合には、そもそも酒屋さんでお酒を立ち飲みすることを指すのです。

一方で、意味を広く取って、立ち飲みができる飲食店を含めて「角打ち」と呼ぶ場合もあります。

角打ちがたのしめる酒屋さんの多くは、お酒だけでなく、缶詰などのおつまみも販売しています。なかには、飲食店の営業許可を取得したうえでお手製のおつまみを出すところもあるようです。そういったお店の角打ちスペースでは、立ち飲み居酒屋さんと同じように、おつまみを食べながらお酒を立ち飲みすることが可能となっています。

とはいえ酒屋さんは、居酒屋さんのようなサービス業ではなく、あくまで酒類小売業が主体。購入したお酒や缶詰を店頭で飲んだり食べたりできる角打ちは、酒販店の善意で成り立っています。

角打ちの読み方と全国各地での呼び方

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「角打ち」の読み方は「かくうち」! 東京や大阪などでの呼び方の違いもチェック

「角打ち」は「かくうち」と読みます。

角打ちは、スポット数に違いはあるものの、東京や大阪といった大都市はもちろん、北海道から沖縄まで日本全国でたのしむことができます。

地方によっては、以下のように角打ちの呼び方が異なる場合もあります。

◆立ち呑み
関西では角打ちを「立ち呑み」と表現することがあります。立ち呑みはあくまでも酒屋さんの一角で飲むことを指し、飲食店での「立ち飲み」とは区別されています。

◆たちきゅう
山陰地方では「たちきゅう」という名称が使われています。立ったまま、きゅうっとお酒を飲む様子に由来しているといわれています。

◆もっきり
東北地方の一部では角打ちを「もっきり」と呼んでいます。升の中や皿の上に置いたグラスに、あふれるほどお酒を注ぎ入れる「もっきり」というスタイルで飲むことから、この呼び名になったようです。

なお、もっきりスタイルは「盛りこぼし」とも呼ばれています。盛りこぼしについての詳細は、以下の記事をチェックしてみてくださいね。

「角打ち」の歴史をたどろう

角打ちの歴史

NOV / PIXTA(ピクスタ)

角打ちの発祥には諸説がありますが、そのルーツは12世紀以降とされるお酒の量り売りにあるようです。

角打ちスタイルの始まり

その昔、日本酒は酒屋さんの店頭で量り売りされるのが一般的でした。酒樽が登場し日本酒の流通が発展した江戸時代から昭和初期にかけては、「通い徳利(かよいどっくり)」と呼ばれる容器を持ってお酒を買いに行き、計量用の升などで注がれた分だけ代金を支払っていたといいます。

なかには、家に帰るまで待ちきれず、買ったお酒をその場で飲み始める人もいたようで、そのうちお店の一角を提供する酒屋さんが現れました。これが角打ちスタイルの始まりと考えられています。

なお、お店の一角でお酒が飲める酒屋さんについては、居酒屋のルーツとする資料もあります。

角打ちスタイルは北九州で定着

TOSHI.K / PIXTA(ピクスタ)

角打ちスタイルが定着したのは現在の北九州市

酒屋さんの店頭でお酒を飲む角打ちスタイルは、現在の福岡県北九州市で定着したといわれています。

明治22年(1889年)、現在の門司(もじ)区に国の特別輸出港として開港した門司港は、その後、石炭などの貿易基地として栄えます。明治34年(1901年)には、現在の八幡(やはた)東区に八幡製鉄所が開業。門司や八幡には多くの労働者が集まりました。

この労働者たちが疲れを癒やす場所として選んだのは、夜勤明けの朝でも開いている酒屋さんでした。

彼らが酒屋さんで買ったお酒を店頭で飲むようになったことが、北九州市で角打ちスタイルが広まり、今なお続く文化として根づくきっかけとなったのです。

「角打ち」はマナーを守ってたのしもう

角打ちのマナー

まる / PIXTA(ピクスタ)

角打ちファンの間には、暗黙のルールやマナーが存在します。初めて行く人も、安心して角打ちをたのしめるように、以下を参考にしてみてくださいね。

◆角打ちでの代金は基本的に前払い
自分で買ったお酒をセルフサービスで飲む、というのが、酒屋さんでの角打ちスタイルのスタンダード。そのため、代金の支払いは基本的に前払いとなります。一方で、酒屋さんの角打ちでありながら、飲食店の営業許可を取得しているお店では、支払い方法や注文方法が異なる場合もあるので、最初に確認するのとよいでしょう。お店のシステムを把握するまで、常連さんに倣うのも一手です。

◆角打ちは居酒屋にあらず
角打ちを行っている酒屋さんは酒類小売業が主体であり、飲食サービス業ではありません。お店側のサービスを期待するのは厳禁です。とりわけ、飲食店の営業許可を取得していない酒屋さんは、サービスをしたくてもできないので注意が必要です。常連さんたちが作り上げてきた場の空気を乱さないよう配慮し、節度のある行動を心がけて、たのしく飲みましょう。

◆角打ちで長居はしない
長居はせず、深酒は避け、適量を飲んで退散するのが角打ちの流儀。角打ちはみんなの場所なので、譲り合う気持ちが大切です。滞在時間は30分から長くても1時間を目安にしましょう。

初心者でも安心! 角打ちの4つの魅力と粋なたのしみ方

好きなお酒が1杯からたのしめる角打ち

酒林 蒼 / PIXTA(ピクスタ)

角打ちの魅力と、知って安心の粋なたのしみ方をたっぷり紹介。常連さんばかりで気後れしそう…と思っている角打ち初心者さん必見です。

魅力(1)|リーズナブルにたのしめる! 好きなお酒を1杯から

角打ちは、酒類小売業の酒屋さんが行っているため、小売価格で購入したお酒を飲むことができます。

飲食店の営業許可を取得している角打ちでも、小売価格に近いリーズナブルな値段でお酒を提供しているところが主流です。

安いからといって角打ちに深酒は禁物。「せんべろ(1,000円でべろべろ)」をイメージするより、飲み会の待ち合わせ前や仕事帰りに気軽に立ち寄って、ワンコイン(500円)でさくっとお酒をたのしむ、粋な方向をめざしましょう。

注文の都度、現金で先払いするキャッシュ・オン・デリバリーのお店も多く、明朗会計で安心なところも魅力です。

角打ちで気になるお酒を購入前にテイスティング

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魅力(2)|購入前のお試しに。気になる日本酒などをテイスティング

ラベルにひと目惚れして買ったものの、好みの味わいではなかった…という失敗はお酒好きの多くが経験しているかもしれません。こうした失敗を一度でもしてしまうと、次に気になるお酒に出会ったとき、購入を躊躇してしまいがちです。

しかし、お店側がラインナップしたお酒のなかから注文するタイプの角打ちの場合、気になるお酒があれば、購入前にお試しで飲んでみることが可能です。少容量から頼めるお店ではテイスティング的にいろいろなお酒を試してみるのもよいでしょう。気に入ったら購入して帰れるのも、角打ちならではといえます。

また、酒屋さんはお酒のプロ。「この日本酒はどんな味ですか?」「これに合うおつまみは?」など、気になるお酒について、あれこれ質問できるというのも、角打ちの魅力のひとつとなっています。

角打ちのおつまみ事情

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魅力(3)|その店ならではの絶品おつまみに出会える

多くの角打ちでは、店内で販売されている缶詰類、ナッツやサラミといった乾き物などを購入し、その場でおつまみとして食べることができます。とくに缶詰は、角打ちおつまみの定番で、あなどれないクオリティの高級缶詰を取り扱っているお店もあります。

飲食店の営業許可を取っている角打ちのなかには、居酒屋さんのようにお手製のポテトサラダやだし巻き卵などを提供するお店もあります。

ラインナップされたお酒とお手製おつまみとのペアリングが堪能できるも魅力的。お店の人との距離も近いので、おつまみへのこだわりを尋ねてみるのもよいでしょう。たのしみが広がります。

角打ちはお酒を介する一期一会の場

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魅力(4)|店主やお客さんとの一期一会も醍醐味

酒屋さんの店内の一角に設けられた角打ちで、小さなカウンター越しのやりとりともなれば、店主をはじめ、お店の人との会話も生まれやすくなります。

お酒のプロである店主から、銘柄ごとの特徴や蔵元秘話、おすすめの飲み方など、ほかではなかなか聞けない話が飛び出すこともあるかもしれません

また、角打ちのたのしみといえば、常連さんとの交流も挙げられます。

初めのうちは緊張するかもしれませんが、無理に話す必要はありません。マナーを守ってたのしむことで、場所と相手への敬意は伝わるもの。何気ない会話から温かな交流が生まれる可能性があります。

小さな憩いの場で、お店の人や常連さんとしぜんと仲よくなる…そんな出会いも角打ちの魅力のひとつといえるでしょう。

角打ちスポットは何で探す? ネオ角打ちや角打ちフェスもたのしもう!

角打ちスポットの探し方

kapinon / PIXTA(ピクスタ)

まずはWEB検索で近場にある角打ちを探してみましょう。Google Mapなどで「角打ち」と検索するのもおすすめです。

近年は、「ネオ角打ち」と呼ばれる角打ちが続々登場し、若い世代を中心に人気を集めています。

おしゃれなカウンターで飲める「角打ちバー」や、料理と一緒に日本酒をたのしめる「角打ちバル」、アンテナショップや料理店とのコラボレーションを行う角打ちなど、角打ち本来の魅力を受け継ぎながら、新しい形態にチャレンジしているお店が注目を集めています。

なかには座って飲めるスポットもあるので、好みに合ったお店を探してみましょう。

なお、ネオ角打ちのお店は、一般的な角打ちとは料金システムが異なる場合があるので注意が必要です。

酒屋さんにふらっと立ち寄って、お酒が飲める角打ちは、居酒屋さんでの立ち飲みやちょい飲み以上にカジュアルで、それでいて通好みともいえるお酒のたのしみ方です。お酒好きな人たちとのコミュニケーションが生まれる場所であり、お酒の知識やお酒愛が深まる場所でもある角打ちに、ぜひ行ってみてくださいね。

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