シードルとはリンゴ100%で造られたお酒!おもな種類やおいしい飲み方、おすすめ銘柄まで
シードルはリンゴの果汁で造ったさわやかな味わいのお酒。「果実を発酵させてできたお酒」を表すラテン語「シセラ(Cicera)」が語源で、世界中で親しまれています。ここでは、シードルの基本情報、産地や種類、ほかの飲み物との違い、おすすめ銘柄などを紹介します。
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リンゴのお酒、シードルの特徴や魅力をみていきましょう。
シードル(Cidre)とは?
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まずは、シードルの概要や種類、アルコール度数、産地などの基本情報を紹介します。
シードルはリンゴから造られるお酒
シードルとは、リンゴを搾って果汁にし、酵母を加えて発酵させたお酒のこと。リンゴのさわやかな風味が特徴で、世界中で古くから親しまれています。日本ではスパークリングタイプが主流で、酒税法では「果実酒」に分類されます。
原料のリンゴは、世界中で栽培されてきた果実で、トルコでは紀元前6000年前後のものが炭化した状態で発見されています。
リンゴを原料にしたシードルの歴史は、ブドウの醸造酒であるワインと同じくらい古いという説もありますが、確認されている最古の記録は、紀元前1世紀のものだそう。
時代が進んで11世紀ごろになると、フランスのノルマンディー地方やブルターニュ地方でリンゴの栽培とシードル造りがさかんになり、さらにイギリス西部へと拡大。19世紀初頭にはアメリカへ、第二次世界大戦後には日本に伝わるなど、世界中に広まっていきました。
シードルの語源は、「果実を発酵させてできたお酒」を意味するラテン語「シセラ(Cicera)」。シードルを蒸溜したものが「アップルブランデー」で、フランス語では「オー・ド・ヴィー・ド・シードル」と呼ばれています。
オー・ド・ヴィー・ド・シードルのなかでもノルマンディー地方のカルヴァドス県とその周辺で造られるものは「カルヴァドス」と呼ばれ、こちらは世界三大ブランデーのひとつとして世界で愛されています。
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甘口から辛口、発泡性から非発泡性のものまでさまざま
シードルは「リンゴで造ったスパークリングワイン」と呼ばれることもあり、その多くは発泡性のあるスパークリングタイプですが、なかには非発泡性のスティルシードルも存在します。
また、甘口から辛口まで幅広い種類があり、甘口のもの「スイート(シードル)」、辛口のものを「ドライ(シードル)」、甘口と辛口の中間のものを「セミドライ」と呼んで区別する場合もあります。
シードルはさまざまな方法で搾ったリンゴ果汁に酵母を入れて発酵しますが、その過程でリンゴの糖分をどれだけ残すかで甘辛度が変わってきます。発酵期間が短いうちは糖がアルコールへと醸造が進まないため、甘口に。発酵が進むにつれてアルコールと炭酸ガスに変わるため、辛口のシードルになります。
シードルの個性は、ワインと同様、原料となるリンゴの品種や産地によっても異なります。使用品種は生産地や造り手ごとに異なり、シードル専用品種を使う場合や、生食用を使う場合とさまざまです。
単一品種で造られるシードルもありますが、個性の異なる品種をブレンドする場合もあります。甘味や酸味、渋味のあるリンゴの品種をブレンドすることで、より深みのあるシードルができあがります。
ほかにも、凍ったリンゴを使って糖度を高めた「アイスシードル」、リンゴ以外のフルーツやスパイスで風味を加えた「フレーバードシードル」などがあります。
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シードルのアルコール度数は低め
シードルのアルコール度数はおおむね3〜9%。10〜15%程度のワインに比べるとやや低めです。アルコールが苦手な人にも飲みやすい低アルコールのものから、ストロングビール程度のものまで、幅広い度数から選べるのもシードルの魅力といえそうですね。
シードルのおもな産地は?
シードルはフランス、イギリス、ドイツ、スペインといったヨーロッパ各国のほか、アメリカや日本でも造られています。
産地ごとに個性が異なるのはもちろんですが、呼び方も異なっています。
「シードル(Cidre)」はフランス語です。イギリスでは「サイダー(Cider)」、ドイツでは「アプフェルヴァイン(Apfelwein)」、スペインでは「シドラ(Sidra)」、アメリカでは「ハードサイダー」と呼ばれています。日本では「シードル」の呼び名で広まりました。
同じ英語圏の国でも、イギリスとアメリカでは呼び方が異なりますが、アメリカで「サイダー」というと、アルコールを含まない炭酸飲料を表すので覚えておくとよいでしょう。
シードルとほかの飲み物との違い
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シードルとほかの飲み物の違いを確認していきましょう。
シードルとワインやビールとの違いは?
シードルはワインやビールと同じ醸造酒です。違いは原料で、シードルはリンゴ、ワインはブドウ、ビールは麦芽とホップと水を原料に造られます。
シードルとワインはともに原料を搾った果汁を発酵させて造られますが、ビールは原料の麦芽を粉砕・加水・加熱してデンプンを糖に変え、ホップを加えてから発酵を行います。
シードルとアップルサイダーの違いは?
「シードル」はリンゴのお酒、「アップルサイダー」はリンゴを使ったノンアルコールの炭酸飲料のことですが、これはあくまで日本国内での共通認識です。
「アップルサイダー」の「アップル」と「サイダー」は英語ですが、イギリスで「サイダー」というとリンゴのお酒、つまり日本でいう「シードル」を指し、リンゴのノンアルコール飲料は「アップルジュース」、リンゴのノンアルコール炭酸飲料は「スパークリングアップルジュース」と呼ばれているようです。
アメリカでは「サイダー」というと炭酸飲料を指し、リンゴを使ったノンアルコールの炭酸飲料は、シードルを表す「ハードサイダー」に対して「ソフトサイダー」と呼ばれています。「アップル(リンゴ)」と「サイダー(炭酸飲料)」を組み合わせた「アップルサイダー」もノンアルコールというイメージもありますが、こちらはハードサイダーと同義で使われることがあります。
タイプ別! シードルのおいしい飲み方
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シードルは、基本的には冷蔵庫で冷やしてワイングラスやタンブラーで飲みます。飲みごろの温度は10度以下。スパークリングシードルはよく冷やしたほうがおいしく、スティルシードルやコクたのしむタイプは10度よりやや高めの温度でもたのしめます。
寒い季節なら、ホットワイン感覚で温めてスパイスやフルーツとともにたのしむ、ホットシードルという飲み方もおすすめです。
さわやかな酸味を持つシードルは、幅広い料理とのペアリングがたのしめます。甘口のシードルは食前酒に最適。辛口のシードルは魚介やサラダ、チーズなどさまざまな料理とよく合います。タンニンを多く含むシードルは、濃厚な味わいの肉料理とも相性抜群です。
酸味のあるスイーツやリンゴのデザート、アイスクリームなどと合わせてもおいしくいただけるので、とっておきのマリアージュを探してみてください。
国産シードルのおすすめ銘柄3選
日本でも長野県や青森県などのリンゴの産地で、おいしいシードルが育まれています。
ここでは、国産シードルのおすすめ銘柄を紹介します。
ニッカ弘前 生シードル
出典:アサヒグループホールディングス
日本シードルの発祥地・弘前で「朝日シードル」がシードル造りを始めたのは、1954年のこと。翌々年の1956年には、本格シードル「アサヒシードル」が発売されました。その技術はのちにニッカウヰスキーに受け継がれ、誕生したのが「ニッカシードル」です。
「ニッカ弘前 生シードル」は、歴史の始まりから70年を経て、リニューアルデビューした国産リンゴ100%のスパークリングシードル。低温でじっくり発酵させ、熱を一切加えずに造り上げた、生シードルならではのみずみずしい味わいが魅力です。
心地よい甘さの「スイート」はアルコール度数3%。すっきりとした味わいの「ドライ」はアルコール5%。どちらも720ml、500ml、200ml(写真)の3サイズ展開です。
定番の「ロゼ」、期間限定の「紅玉リンゴ」もおすすめ。
販売元:アサヒビール株式会社
ブランドサイトはこちら
タムラシードルBRUT
出典:タムラファームショップ
日本屈指のリンゴの産地、青森県弘前市で農園を営むタムラファームが手塩にかけて栽培したリンゴを原料に、京都・丹波ワインが醸造したこだわりのシードル。「BRUT(辛口)」は、さっぱりとした味わいが特長で、洋食はもちろん、和食ともよく合います。
アルコール度数9%。飲みごろの温度は8度です。
販売元:タムラファーム株式会社
オンラインストアはこちら
Son of the Smith HARD CIDER
Santiaga / PIXTA(ピクスタ)
こちらはアメリカで長い歴史を持つハードサイダーの魅力を追求したブランドのご紹介。
長野県のリンゴ生産者がアメリカ・オレゴン州ポートランドでハードサイダーに出会ったことから、クラフトサイダーブランド「サノバスミス」をスタート。国産リンゴの魅力を活かしたハードサイダー造りを行っています。
コンセプトの異なるハードサイダー(シードル)を飲み比べたいという人は、ぜひ一度味わってみてください。
製造元:株式会社サノバスミス
公式サイトはこちら
シードルはワインと同じように、製法も味のバリエーションも豊富で奥深いお酒です。各国のシードルの特徴を味わうもよし、国産シードルを飲み比べるもよし。料理とのペアリングをたのしみつつシードルに触れる機会を増やして、その魅力を追求してみてください。