スティルワインとは?赤・白ワインとの関係は?意味や種類、スパークリングワインとの違いを確認
スティルワインとは、非発泡性のワインのこと。発泡性を持つ「スパークリングワイン」に対応する呼び方で、赤ワインや白ワイン、ロゼワインなどもスティルワインの一種です。ここでは、スティルワインの基本情報やスパークリングワインとの違い、おもな種類を紹介します。
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スティルワインとはどのようなワインを指すのでしょうか。具体的にみていきましょう。
スティルワインとは何?
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「スティルワイン」とは、炭酸ガスを含まない非発泡性のワインのこと。一般的に「ワイン」と呼ばれるものは、このスティルワインにあてはまります。
非発泡性の「静かな」ワイン
スティルワインの「スティル(Still)」には、英語で「静かな」「動かない」といった意味があり、これは非発泡性を表しています。つまり、スティルワインとは、非発泡性ワイン=炭酸ガスを含まないワインのことです。
スティルワインはおもに食事をする際に飲むワインを指すことから、「テーブルワイン」とも呼ばれています。
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世界中で造られるワインの大半はスティルワイン
ワインの種類というと、「赤」「白」「ロゼ」などの色の違いを連想しがちですが、「スティルワイン」は製法(醸造法)による分類の1タイプ。ワインコーナーにずらりと並ぶほとんどのワインは、このスティルワインに属します。
ワインは製法によって以下の4タイプに大別されます。
◆スティルワイン…非発泡性ワイン
◆スパークリングワイン…発泡性ワイン
◆フォーティファイドワイン…酒精強化ワイン
◆フレーヴァードワイン…混成ワイン
厳密には、ワインというのはこの4種類の総称であり、世界中のワイナリーで造られている「赤ワイン」や「白ワイン」「ロゼワイン」などは、このなかの1タイプであるスティルワインに属しますが、一般的に「ワイン」というと、スティルワインのことを指す場合が多いかもしれません。
なお、「フォーティファイドワイン」とは、発酵の過程でブランデーなどを加えてアルコール度数を高めた酒精強化ワインのこと。スペインの「シェリー」やポルトガルの「ポート」などがこれに当たります。
「フレーヴァードワイン」は、スティルワインに薬草や香辛料、蜂蜜、果汁などを加えて造った混成ワインで、「ベルモット」や「サングリア」が有名です。
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スティルワインとスパークリングワインとの違いは?
「スティルワイン」と「スパークリングワイン」の大きな違いは、炭酸ガスが含まれているかどうかという点にあります。
厳密には、発泡性を有するワインのなかでも3気圧以上の炭酸ガスが入ったものを「スパークリングワイン」、1気圧から3気圧未満のワインを「セミスパークリングワイン(弱発泡性ワイン)」と呼びます。1気圧以下の微発泡性ワインは、スティルワインに分類されます。
なお、発泡性を有するワインというと、「シャンパン(シャンパーニュ)」を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、シャンパンもスパークリングワインの一種です。
スティルワインの種類
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非発泡性のスティルワインには、「赤ワイン」「白ワイン」「ロゼワイン」など、さまざまな種類があります。近年注目されている「オレンジワイン」も含めて、特徴をみていきましょう。
赤ワイン
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「赤ワイン」は、赤の色素成分であるアントシアニンを果皮に含む、黒ブドウ品種で造られているワインのこと。果汁と一緒に果皮や種を漬け込んで発酵させるため、色が濃くなり、渋味成分のタンニンが含まれているのが特徴です。
タンニンとは果皮や種子に多く含まれる成分であり、ポリフェノールの一種。赤ワインの渋味やコク、複雑さや余韻はタンニンの影響によるところが多く、フルボディとされる重いワインはタンニンが豊富に含まれています。
ポリフェノールやタンニンを多く含んでいるぶん、白ワインよりも熟成に向いているといわれています。
白ワイン
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「白ワイン」はおもに白ブドウ品種を原料に、果皮や種子を取り除いた果汁のみを発酵させて造ります。まれに黒ブドウ品種も使われますが、果汁だけを使うため、赤ワインのような色はつきません。果皮や種子に含まれるタンニンも早い段階で取り除かれるため、渋味の少ないワインになります。
白ワインは果汁だけで仕込んでいるため、スッキリとした酸味がたのしめます。
ロゼワイン
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フランス語で「ピンク」「バラ」を意味するロゼ。「ロゼワイン」はその名のとおり薄いピンク色をしていますが、果汁を搾る途中で果皮と種子を取り除いたり、赤ワインと白ワインを混合して造られたりと製法にもバリエーションのあるワインです。
ロゼワインには、赤ワインと同じく黒ブドウを果皮や種ごとタンクに入れ、ほどよく色づいたところで上澄みの果汁だけを発酵させる「セニエ法」、黒ブドウを使って白ワインの製法と同じく果汁だけを発酵させる「直接圧搾法」、白ブドウと黒ブドウを混ぜて仕込む「混醸法」の3つの製法があり、色合いや味わいに違いが出てきます。
なお、ヨーロッパでは「混醸法」でロゼワインを造ることが禁止されています。
オレンジワインやデザートワインもスティルワインの一種
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近年、世界中で人気を博している「オレンジワイン」もスティルワインの仲間です。
オレンジワインとは、その名のとおり、オレンジ色をしたワインのこと。柑橘系を連想させる色合いですが、ブドウを原料に造られるれっきとしたワインです。
オレンジワインは白ワインの原料となる白ブドウ品種を使い、赤ワインのように果皮や種子を果汁と一緒に発酵させて造られます。ロゼワインの「セニエ法」では黒ブドウが使われるのに対して、オレンジワインで使用されるのは白ブドウのみ。果皮や種子を長く漬け込む間に黄色系の色素が抽出されるため、オレンジがかった色合いになります。
貴腐ブドウから造られる極甘口の「貴腐ワイン」や、自然凍結したブドウで造られる甘口の「アイスワイン」といった一部のデザートワインも、スティルワインの一種です。ただし、デザートワインにくくられることのある「シェリー」や「ポート」などの酒精強化ワインは、スティルワインではなくフォーティファイドワインに分類されるので覚えておきましょう。
ワインショップではワインの色や生産国によって分類、陳列されていることが多く、スティルワインという呼び方にはあまりなじみがないかもしれません。製法による分類の1タイプとして押さえておくだけでも、ワインをたのしみは広がりそうですね。