ワインの起源って? 世界のワインをおいしく味わうために押さえておきたい豆知識

ワインの起源って? 世界のワインをおいしく味わうために押さえておきたい豆知識
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ワインの起源説には諸説ありますが、紀元前5000年ごろにはすでに飲まれていたという記録が残されています。今回は、ワインの起源や名前の由来・語源、ワインがヨーロッパへ広まった背景や、日本ワインの起源など、ワインの歴史にまつわる豆知識を紹介します。

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ワインはいつ、どこで生まれた? その起源を探る

ワインや原料のブドウの起源を探る

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ワインがいつ、どこで生まれたのか、まずはそのルーツを探ります。ワイン造りに欠かせないブドウや酵母、発祥の地や名前の由来について解説していきます。

ワイン造りに欠かせない「ブドウ」のルーツ

ワインとは、糖を多く含むブドウを原料とし、ワイン酵母菌の助けにより製造されたお酒のこと。日本の酒税法では「醸造酒」に分類されます。

ワインの起源を探るうえで、知っておきたいのがワイン造りに欠かせないブドウのルーツです。
じつは、ワインの原料となるブドウの原種となる植物は、氷河期以前、つまり人類が誕生するはるか昔から地球上に存在していたといわれています。

実際に、今から約6500〜5500万年前の地層から、ブドウ属の葉や種子の化石が発見されたことが報告されています。人類の祖先であるホモ・サピエンスの誕生は約20万年前とされるので、ブドウの祖先は人間よりも古くから地球上にあったことになります。

なお、人類が農耕を始めた約1万年前には食用として利用されていて、新石器時代の遺跡からも多くのブドウの種子が見つかっています。

ワイン造りに不可欠な「酵母」の起源

ワイン造りに欠かせないもうひとつの原料、それはブドウの糖分を分解してアルコールを発生させる酵母です。氷河期をなんとか生き延びた野生のブドウは、温暖なユーラシア大陸で繁茂していきました。

そして紀元前6000年ごろには、黒海やカスピ海沿岸のブドウの原生地で、土器の中で野生ブドウのジュースが自然発酵し、世界最古のワインが生まれたのではないかと推測されています。

ワイン造りに欠かせないブドウのルーツ

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ワイン発祥の地とは? 諸説ある起源説

ブドウの野生種の多くが西アジアに自生していること、8000年前の新石器時代に西アジアのジョージア(旧グルジア)でワインを醸造したことを示す証拠が出ていることから、ワインは西アジアで誕生したという説が濃厚です。

ジョージアを含むコーカサス山脈一帯は、メソポタミア文明が栄えたイラク周辺に近く、またジョージアに隣接するトルコでワイン造りが始まったとする説もあるなど、今後の研究の成果が注目されます。

ちなみに、ワインの起源が文献上に初めて登場したのは、世界最古の文学作品と呼ばれるメソポタミアの「ギルガメシュ叙事詩」で、記されたのは紀元前5000年ごろのこと。
一方、エジプトでもピラミッドの壁画にワイン造りの様子が描かれていて、こちらも紀元前4000年代にはワインが造られていたと考えられます。

ワインという名前の語源・由来

日本語の「ワイン」は、英語の「wine」に由来します。この「wine」の語源は、ラテン語の「vinum(ヴィヌム)」。「ぶどう酒」を意味する言葉であり、ここから英語だけでなく、フランス語のヴァン(vin)、ドイツ語のヴァイン(wein)、イタリア語、スペイン語のヴィノ(vino)などに派生しています。

ワインが発祥の地からヨーロッパへと広まった背景

ワインが発祥の地からヨーロッパへと広まった背景

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ワインは発祥の地として有力視される西アジアからヨーロッパへ、どのように広がっていったのでしょうか。また、ヨーロッパで初めてワインが伝わった古代ギリシャからフランス、そしてヨーロッパ全土へと広がる過程をみていきましょう。

ワインのヨーロッパにおける歴史は古代ギリシャから始まった

ワインといえばヨーロッパが本場というイメージがありますが、初めてヨーロッパにワインが伝わったのは紀元前1500年ごろのこと。ワイン文化の拡散する役割を果たしたのが、現在のレバノン周辺に住んでいたフェニキア人でした。

彼らによってエジプトからギリシャに伝わり、さらにヨーロッパ各地へと伝播していくことになります。紀元前1100年ごろには、ギリシャは有数のワイン輸出国となっていました。

ギリシャからワイン大国・フランス、そしてヨーロッパ全土へ

ワイン大国として知られるフランスにワインをもたらしたのは、ギリシア人だといわれています。まず、フェニキア人はイタリア半島へブドウ栽培とワイン造りを伝え、ギリシア人は紀元前600年ごろにフランスに移住した際、ワイン造りを伝えたとか。

ローマ帝国の繁栄とともにワインはヨーロッパ全土に広まり、200〜300年ごろには、「ブルゴーニュ」「ボルドー」「シャンパーニュ」など、現在も有名なワイン産地にブドウの栽培とワイン造りが伝わりました。

ローマ時代、ワインはあらゆる階層で飲まれるようになり、高級志向のワインから酸味の強いものまで、さまざまなワインが出回っていたとされています。

ワインは大航海時代の波に乗って世界各地へ

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ヨーロッパのワイン史と深い関わりのあるキリスト教

ヨーロッパにおけるワインの起源と拡散に大いに影響したのが、キリスト教の存在です。

「ワインはキリストの血」として神聖なものとされ、教会や修道所における儀式に使われるため、ブドウ畑やワイン醸造の拠点となっていきました。キリスト教の布教とともに、フランスを中心にヨーロッパ全土に広がったワインは、16世紀には大航海時代の波に乗って世界各地に伝わっていくことになるのです。

参考記事
メルシャン Wine ACADEMY|世界のワイン史

ワインが新世界(ニューワールド)へと広まった背景

ワインが旧世界から新世界へと広まった背景

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ワイン造りにおいて、長い歴史を持つ伝統的なワイン生産国を「旧世界(オールドワールド)」、比較的歴史の浅い生産国を「新世界(ニューワールド)」と呼びます。旧世界から新世界へ、ワイン造りはどのように広がったのでしょうか。

スペインからアメリカ大陸へ

アメリカでのワイン造りは、18世紀ごろにスペイン人宣教師がカリフォルニアでブドウ畑を開拓し、醸造所を造ったことから始まったといわれています。

イギリスからオーストラリアへ

もともとブドウが存在しなかったオーストラリアに、初めてブドウが持ち込まれたのは18世紀のこと。1788年に、イギリス人がブドウを伝え、19世紀前半に本格的なワイン造りが始まりました。

大航海時代に海を渡ったワインの意外なルート

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南米やアフリカ大陸、アジアへの意外なルート

ワイン造りが盛んに行われている南米やアフリカ大陸、アジアへのルートもみていきましょう。

南米

中国を除く新世界でワイン造りが始まったのは、16世紀のこと。大航海時代にスペイン人の宣教師によっていち早く技術が持ち込まれたのは、南米のチリでした。
チリでは19世紀の後半からワイン造りが盛んになり、1980年代半ばに世界進出を果たしました。

アフリカ大陸

アフリカ最南端の南アフリカにワイン造りが始まったのは17世紀半ばのこと。技術を伝えたのは、医師でオランダ東インド会社所属のヤン・ファン・リーベックです。当初はフランスへ輸出するワインを醸造していましたが、1990年代に人種隔離政策が全廃されてからは、世界に輸出されるようになりました。

アジア

ワインの発祥の地は西アジアと考えられていますが、シルクロードを通って中国へワイン造りが伝えられたのは漢の時代。明の時代にいったん下火になりますが、1892年に転機が訪れます。山東省の煙台に「張裕(チャンユー)葡萄醸酒公司」が設立され、中国近代ワインの礎となりました。

日本におけるワインの起源を探る

日本におけるワインの起源を探る

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ワインの起源はユーラシア大陸で、長い時を経て世界中に広がりました。日本にはいつ伝わったのでしょうか。以下では日本とワインの関係をみていきましょう。

日本のワインはいつ、どこから伝わった?

日本の歴史にワインが登場したのは室町時代。歴史に名高い宣教師、フランシスコ・ザビエルがキリスト教布教のために来日し、土地の大名にワインを献上したことがきっかけでした。

ワインの原料となるブドウ自体は、「古事記」や「日本書紀」にも登場しているので、日本でも古代から存在していました。

しかし、日本で酒造りといえば、米を原料とした日本酒がメイン。高温多湿な環境も穀物酒造りに向いていて、ワイン用の良質なブドウが繁茂する環境ではなかったようです。

ブドウを原料としたワイン造りは、キリスト教といった西洋文化とともにもたらされ、明治時代以降に浸透していくことになります。

現代の日本ワインの起源は山梨県

ワインが日本で本格的に広まったのは、明治維新を迎えてから。近代化の一環として、明治政府が西洋野菜や果物の導入を始めます。そこにワイン用のブドウも含まれていて、ワイン醸造に力を入れるようになったのです。

日本のワイン産業の起源は、明治3年(1870年)に山梨県にできた「ぶどう酒共同醸造所」というワイン醸造所にさかのぼります。残念ながら、製造技術が追いつかず2年で廃業となりましたが、明治10年(1877年)には新たに「大日本山梨葡萄酒会社」を設立。今日に続く国産ワインの基盤を築きました。

ワインが由来に関連する意外な言葉

ワインの由来に関連する意外な言葉

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最後に、ワインが学問的な言葉の由来となっている、意外なケースを紹介しましょう。

ワインの赤い色は、ギリシャ人にとっては酒神・収穫神ディオニュソス(ディオニューソス)の「血」を連想させるもので、この神に捧げた典型的な習慣として、正式な酒宴を意味する「シュンポシオン」というものがありました。

シュンポシオンでは水で割ったワインの杯を傾けながら、語り合ったり、ゲームに興じたりすることが多かったよう。哲学者のプラトンはその著書『饗宴』の中で、師ソクラテスを含むシュンポシオンの参加者が、愛について討論する様子を記しています。

さらに、このシュンポシオンは「シンポジウム(討論会)」の語源となり、今も学問の世界で使われています。

ワインは人類の歴史と肩を並べるくらいに起源が古く、長い年月をかけて、文化や宗教、芸術に影響を与えながら発展してきたお酒。今や世界中どこでも、おいしいワインを手軽にたのしめるようになりました。歴史と豆知識を知ることで、ワイン好きな人たちと過ごすひとときが、より豊かなものになるといいですね。

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