ワインに酸化防止剤が入っている理由は? 《シニアソムリエ監修》

ワインに酸化防止剤が入っている理由は? 《シニアソムリエ監修》
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ワインには、ほとんどの場合「酸化防止剤」が入っています。酸化防止剤も含め、食品添加物には「カラダによくない」といったマイナスイメージが抱かれがちですが、実際はどうなのでしょうか。今回はワイン造りにおける酸化防止剤の役割や必要性について調べてみました。

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ワインに入っている酸化防止剤「亜硫酸塩」とは?

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亜硫酸塩(亜硫酸ナトリウム)は食品添加物

ワインの多くは酸化防止剤が使用されていますが、ラベルなどによると、その正体は「亜硫酸塩」であることがわかります。この亜硫酸塩にはいくつかの種類がありますが、一般的なのが「二酸化硫黄」。その歴史は古代エジプトや古代ローマ時代にまで遡るといわれ、当時から硫黄を燃やして亜硫酸ガスを発生させることで、ワインの酸化を防いでいたそう。

亜硫酸塩という字面だけを見ると、物騒な薬品のように感じられるかもしれませんが、ワインの醸造過程で酵母により自然生成される物質でもあります。亜硫酸塩はドライフルーツや甘納豆、かんぴょうなど、さまざまな食品の保存料や漂白剤としても用いられる身近な食品添加物で、ヨーロッパ諸国で製造されるワインをはじめ、市場に出回るほとんどのワインに含まれています。

ワインへの亜硫酸塩の添加量は比較的少ない

ワインの酸化防止剤として用いられる亜硝酸塩の使用量は食品衛生法によって厳しく制限されていて、その上限値は350mg / L(ミリグラムパーリットル)とされています。多く感じるかもしれませんが、比率に換算すると0.035%とごく少量。しかも実際に含まれる量は、これを大きく下回るケースがほとんどで、毎日飲んでも害はない量と考えられています。

酸化防止剤の役割はワインの品質を保つこと

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ワイン造りの工程での雑菌混入を防ぐ

ワイン造りにおける酸化防止剤の役割は、ボトル詰め後の酸化による品質劣化を防ぐことだけではありません。

ワインに添加される酸化防止剤の役割のひとつに、殺菌効果が挙げられます。ワインの原料となるブドウの果皮には、発酵を促す酵母菌だけでなくさまざまな雑菌が付着していますが、こうした雑菌が繁殖すると、発酵を妨げたり異臭の原因となったりすることも。発酵前に添加される亜硝酸塩は、酸化を防止するだけでなく、雑菌の繁殖防止にも一役買っているのです。

過度な酸味を防ぐ

ワインはワイナリーの樽内やタンク、またワインボトルで熟成される際、微量の酸素に触れることで、色味を安定させたり、まろやかさを出したり、香りを深めたりといった効果を得ています。また、ボトルを空けて飲む前にデキャンタージュするのも、ワインを酸素に触れさせて香りを開かせることが目的のひとつです。
これらは「よい酸化」の例ですが、一方で、ワインの品質にマイナス影響を与える「悪い酸化」もあります。この「悪い酸化」によって現れるのが、過度な酸味です。

ワインに含まれるアルコールが酸素に触れると酢酸が生じますが、これが多すぎるとワインの酸味が強くなってしまいます。酸化防止剤は、こうした「悪い酸化」を防ぐために用いられるのです。

刺激臭を防ぐ

「悪い酸化」によって生じるのは、酸味だけではありません。ワインの酵素中には、発酵副生成物としてのアセトアルデヒドが含まれていますが、この二日酔いの元凶ともいわれるアセトアルデヒドが酸化することで青臭い刺激臭が生じます。この不快な臭いを防ぐのも、酸化防止剤の役割。亜硝酸塩と結合させることで、アセトアルデヒドが無臭な物質に変化し、青臭さを抑えることができます。

ワインに深い色や味わいを与える

とくに重厚な赤ワインでは、酸化防止剤が原料に付着した雑菌の繁殖を防ぐことで、黒ブドウ本来の色艶が保たれ、ワインも深い赤色に仕上がるといわれています。また、醸造酒であるワインは貯蔵中にも酸化が進みますが、劣化を遅らせ、熟成へと促すのも酸化防止剤の重要な役割です。

ワインに深い色や味わいを与え、品質を安定させるためにも、酸化防止剤は欠かせないものだといえるでしょう。

ワインの酸化防止剤の噂は本当?

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頭痛になる?

ワインや食品酸化防止剤には、頭痛の原因になる、体によくないといったよからぬ噂もつきものですが、はたして本当なのでしょうか。

大量の酸化防止剤を摂取すると、頭が痛くなるなどの健康被害が生じる可能性は否定できませんが、前述のとおりワインに含まれる亜硝酸塩の量は上限でも0.035%とごく少量。毎日適量のワインを飲み続けたとしても、健康を害することはないと考えられています。

むしろ近年では、ワインやチーズ、納豆、ヨーグルトなど発酵食品全般に含まれる「アミン類」へのアレルギー反応という説が有力視されているようです。とくに、赤ワインを飲んだときだけ頭痛がする場合は、アミン類のなかでも赤ワインに多く含まれる「ヒスタミン」や「チラミン」が原因と考えられています。

高級ワインには入っていない?

ワイン造りに酸化防止剤が必要とされるのは、高級ワインにおいても変わりありません。

高級ワインは、長期間かけて熟成するのが一般的です。その期間中にワインの劣化を防ぎ、味わいを熟成の方向に誘導するためには、微量の亜硫酸塩が必要です。

とくに赤ワインの熟成では、亜硫酸塩がないと、赤い色合いや渋味、コクなどを与える成分が酸素の影響で沈殿してしまうおそれがあります。そうならないために、やはり適量の酸化防止剤は必要だといえます。

産地のワインには入っていない?

フランスやイタリアなど、現地で飲むワインは、酸化防止剤を使っていないから味が違う。そんな話を耳にしたことがあるかもしれません。たしかに、本場の雰囲気を味わいながら飲むワインは格別でしょうが、その原因が酸化防止剤とは限りません。

現在では、世界中どこでも、量の違いこそあれ、ほとんどのワインに酸化防止剤が使われています。ただ、国によっては表示義務がない場合もあるため、現地でラベルを見て「こっちでは酸化防止剤を使っていない!」との誤解が生じている可能性もあるようです。

ちなみに、そうしたワインも日本に輸入される際には、日本の表示基準に合わせて「酸化防止剤が使用されていることがわかる」裏ラベルが貼られます。

注目される「酸化防止剤無添加」のワインとは?

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「酸化防止剤無添加」のワインが注目される理由

世界的に健康志向が高まるなか、注目を集めているのが無添加食品です。真偽のほどはどうあれ、食品添加物へのマイナスイメージが膨らめば、食卓に並べるものは信頼できるものを選びたいと考えるのは自然のなりゆきでしょう。

ワインにおいても例外ではありません。近年、とくに日本では「酸化防止剤無添加」を謳ったワインも見かけるようになりました。無添加に対する好イメージもさることながら、その人気の秘密は、おいしさにあります。酸化防止剤を使用しないデメリットを克服する製法が開発されたことにより、酸化防止剤を添加したワインに匹敵するような味のよいワイン造りが可能となっています。また手ごろな価格のワインが多いのも選ばれる理由のひとつでしょう。

「酸化防止剤無添加」と表示できるのは?

酸化防止剤無添加のワインとは、酸化防止剤の亜硝酸塩を添加していないワインのことを指します。つまり、酸化を防いだり、雑菌の繁殖を抑制したり、アセトアルデヒドの生成を抑えるために少しでも亜硝酸塩を加えたワインは、「酸化防止剤無添加」と表示することができません。

なお、酸化防止剤無添加ワインは、「無添加ワイン」と略される場合もあります。

「酸化防止剤無添加」ワインの製造方法

酸化防止剤なしで、どうやってワインを造っているのでしょうか? メーカーごとに違いはあるものの、ボトリング前のワインを60~70度に加熱処理したり、フィルター処理を施したり、生産現場を気密化したりと、さまざまな手法で過度の酸化や雑菌の繁殖を防止しているようです。

酸化防止剤無添加ワインの製造過程で重点を置くべきは、おもに発酵段階における雑菌の繁殖やアセトアルデヒドの生成を抑えること、そして瓶詰め後の酸化を最小限にとどめることです。ブドウの品質や発酵時の温度管理が要となるのはもちろんですが、雑菌に強く、アセトアルデヒドの生成量が少ない酵母選びなども重要な鍵。酸化を防ぐうえでは、瓶詰めのタイミングや酸素との接触を減らす技術にもこだわる必要があるといいます。

酸化防止剤無添加ワインの味わいは?

酸化防止剤無添加のワインは、味わいの面ではどんな違いがあるでしょう。もちろん、メーカーや銘柄にもよりますが、傾向としては甘口でフルーティーなワインや、「ボディ」で表現すれば「ライトボディ」のワインが多いようです。

「フルボディ」と呼ばれる重厚でコク深く、多くの人に評価されるワインは、やはり酸化防止剤を抜きにしては造るのは難しいそうです。

酸化防止済み無添加ワインの多くは熟成向きではなく、メーカーから出荷されたら、なるべく早めに飲まれることを前提としていると考えましょう。

「酸化防止剤無添加」ワインとオーガニックワインやビオワインとの違いは?

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オーガニックワインとは?

オーガニックワインとは、化学肥料や除草剤、農薬などを使用せず(一部の薬品のみ例外的に認められる場合あり)、有機栽培で育てられたブドウから造られるワインのこと。認証機関に認められた畑のブドウから造られたワインだけが「オーガニック」を名乗ることを許されます。日本では、ラベルに「有機農産物加工酒類」または「有機農畜産物加工酒類」と記載されるので、覚えておくとよいでしょう。

ビオワインとは?

ビオワインもまた、化学肥料や除草剤などを使わず、有機栽培のブドウで造られるワインのことを指します。海外では「オーガニックワイン」と呼ばれることもありますが、ビオワインとオーガニックワインは、厳密には同義ではありません。

ビオワインに使われるブドウの栽培方法は、ビオロジック農法とビオディナミ農法の2つに分かれます。

ビオロジック農法とは、有機栽培のことです。化学肥料や除草剤、殺虫剤、防カビ剤などを使用せず、自然環境に配慮した農法でブドウを育てますが、鶏糞や羊糞を使うことが前提となっています。なお、この製法で造られたワインのことを日本では「有機ワイン」などと呼んでいます。

一方、ビオディナミ農法は、人智学者ルドルフ・シュタイナー氏が提唱した農法です。化学肥料などを使用しないといったビオロジック農法を基準に、月の満ち欠けや天体の位置などをもとに作られたビオカレンダーに合わせてブドウの栽培が行われます。

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「酸化防止剤無添加」ワインとオーガニックワインやビオワインとは違うもの

酸化防止剤無添加ワインを名乗るには、亜硝酸塩を加えていないことが前提となりますが、オーガニックワインやビオワインに酸化防止剤を使用してはいけないという決まりはありません。つまり、有機栽培で造られたワインでも、その品質を安定させるために酸化防止剤を添加するケースがあるということです。

たしかに、オーガニックワインやビオワインは通常のワインに比べて酸化防止剤の使用を控える傾向がありますが、酸化防止剤を減らしすぎると、雑菌に汚染された低品質なワインが生まれる原因にもなりかねません。酸化防止剤の有無だけで選ぶのではなく、やはり造り手や品質、味わいで選ぶのがワイン選びの王道といえそうです。



酸化防止剤がワイン造りに果たす役割を理解できたでしょうか? 酸化防止剤を含む食品添加物にはマイナスイメージを抱きがちですが、厳しい基準に則り適切に造られているワインまで心配する必要はないでしょう。せっかくのワインなので、信頼できる販売店で購入して、神経質になりすぎず、その香りや味わいをたのしみたいものです。

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