ウイスキーとスピリッツってどんな関係? 知っておきたいスピリッツの種類

ウイスキーとスピリッツってどんな関係? 知っておきたいスピリッツの種類
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お酒が好きな人なら、ウイスキーやスピリッツという種類があることを、知らない人はいないでしょう。しかし知っていても、違いを明確に答えられる人は少ないのではないでしょうか。ここではウイスキーとスピリッツの関係について紹介していきます。

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そもそもスピリッツって何のこと? ウイスキーとの関係を確認!

そもそもスピリッツって何のこと? ウイスキーとの関係を確認!

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スピリッツは蒸溜酒全般を指す言葉

お酒には、大きく分けて3つの種類があります。穀物などの原料を酵母で発酵させて造る「醸造酒」、醸造酒を蒸溜して造る「蒸溜酒」、醸造酒や蒸溜酒に果物や種子などを混ぜて造る「混成酒」の3つです。
このうち、蒸溜酒のことを「スピリッツ」といいます。スピリッツは世界中で造られているお酒で、地域性が反映されたさまざまな種類が存在します。

スピリッツは魂に働きかける「火の酒」?

蒸溜酒(スピリッツ)は、「火の酒」と呼ばれることがあります。これは、「蒸溜酒が高温で熱して造られるから」とも、「体が燃えるようなアルコール濃度の高いお酒であるため」ともいわれています。

そんな特徴を持つ「火の酒(蒸溜酒)」は、蒸溜酒がよく造られるようになった11世紀ころから、“人間の魂に働きかけるもの”“肉体を目覚めさせて活力を与えるもの”として親しまれてきました。

ではなぜ、蒸溜酒は「スピリッツ」と呼ばれるようになったのでしょうか。諸説ありますが、一説では、英語の「spirit(スピリット)」には「精神」や「魂」という意味があるため、魂に働きかけるような「火の酒(蒸溜酒)」に、「spirits(スピリッツ)」を当てたのではないか、といわれています。

スピリッツには医薬効果があった!?

もう少し、スピリッツにまつわる歴史について見ていきましょう。
蒸溜技術を使って、ウイスキーやブランデーなどのスピリッツを造り始めたころのヨーロッパでは、“スピリッツには医薬効果がある”と考えられていました。医学的に未熟な時代には、マラリアやペストなどの感染症対策に使われていたともいわれています。

また、1812年の晩秋に常勝将軍・ナポレオンが行ったロシア遠征の際、ブランデーの蓄えが尽きたナポレオン軍の士気が下がって、ウォッカを豊富に蓄えていたロシア軍に敗れてしまったというのは有名な話です。魂に働きかけ、活力を与えるという火の酒、スピリッツの特性をよく表したエピソードといえるでしょう。

ウイスキーはスピリッツに含まれない!? 日本の事情

ウイスキーはスピリッツに含まれない!? 日本の事情

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日本の酒税法におけるウイスキーとスピリッツの関係

世界的には、ウイスキーはスピリッツのなかに分類されますが、じつは日本では、ウイスキーはスピリッツとは別のものとされています。これには、日本の酒税法が大きく関わっています。

酒税法では、スピリッツは「ウイスキーやブランデー、焼酎を除く、エキス分2%未満の蒸溜酒」と定義されています。たとえ製造工程は同じでも、日本の酒税法上は、ウイスキーやブランデー、焼酎はそれぞれ独立して分類されているのです。

なぜウイスキーは、酒税法上はスピリッツに含まれないの?

旧酒税法が制定されたのは1940年のこと。この時代、お酒の分類方法は厳密に定められていなかったため、日本を基準にした考え方で10種類11品目に分類されたといわれています。

まず日本人に馴染みの深い、焼酎や日本酒などが分類され、続いて洋酒でも当時注目され始めていたウイスキーやビール、ワインなどが分類され、その他のお酒はスピリッツやリキュールなどに分類されたそう。ブランデーはウイスキー以外のウイスキー類ということで、スピリッツとは別に分類されたようです。

【旧酒税法によるおもな分類(種類)】

◇清酒
◇焼酎(甲類、乙類)
◇ビール
◇ウイスキー類(ウイスキー、ブランデー)
◇スピリッツ類
◇リキュール類

【新酒税法によるおもな分類(種類)】

◇発泡性酒類(ビール、発泡酒など)
◇醸造酒類(清酒、果実酒など)
◇蒸溜酒類(連続式蒸溜焼酎、単式蒸溜焼酎、ウイスキー、ブランデー、スピリッツ)
◇混成酒類(リキュール、みりんなど)

知っておきたい! 世界の4大スピリッツ

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地域色豊かな世界のスピリッツ

中世の錬金術師が蒸溜技術を発見し、その技術が長い時間をかけて世界に広がったことで、世界各地でさまざまなスピリッツが造られるようになったといわれています。たとえば、ヨーロッパに伝わってブランデーやウイスキー、ロシアやポーランドに伝わってウォッカ、オランダやイギリスに伝わってジン、メキシコやブラジルに伝わってテキーラが誕生したのです。

その一方で、蒸溜酒のはじまりは、メソポタミアで造られていた「アラック」といわれることもあります。アラックは、中近東や中国、東南アジアなどに伝わり、今もシリアやイラク、エジプト、インドネシアなどで見られることがあります。
ちなみに、日本に蒸溜技術が伝わったのは14世紀ごろ。ここから泡盛や焼酎などが造られるようになったといわれています。

一度は聞いたことがあるものも! 世界のスピリッツ

それでは、日本を含む世界には、どんな種類のスピリッツがあるのでしょうか。ここでは、スピリッツに分類されるお酒の種類を確認しましょう。スピリッツには、おもに以下のようなものがあります。

◇ウイスキー(イギリスなど)
◇ブランデー(フランスなど)
◇ウォッカ(ロシアなど)
◇ジン(イギリスなど)
◇ラム(カリブ海諸島など)
◇テキーラ(メキシコなど)
◇焼酎、泡盛(日本)
◇アクアビット(北欧など)
◇アラック(中東など)
◇キルシュバッサー(ドイツなど)
◇ソジュ(韓国)
◇スピリタス(ポーランド)
◇カルヴァドス(フランス)
◇グラッパ(イタリア)
◇コニャック(フランス)

いずれも蒸溜という工程を経て造られるお酒で、製法で分類するなら、スピリッツにあたります。

世界4大スピリッツ

上記で紹介したスピリッツのなかでも、ジン、ウォッカ、ラム、テキーラの4種類を「世界4大スピリッツ」と呼びます。それぞれの特徴を見ていきましょう。

【ジン】

古くはオランダで、「薬用酒」として造られていたとされる蒸溜酒です。特徴は、蒸溜したスピリッツに、ボタニカルと呼ばれる草根木皮(そうこんぼくひ)を加えて、さらに蒸溜していること。すっきりとした香りと独特の鋭い切れ味は、この薬草成分に由来するものです。

【ウォッカ】

おもにロシアやアメリカ、東欧や北欧などで造られている蒸溜酒です。大麦やライ麦、ジャガイモなどの穀物や芋類を原料として用いるのは、寒冷地でも育てやすく、それらの栽培が盛んであるためといわれています。

【ラム】

カリブ海、西インド諸島生まれのラムは、カクテルベースとしてはもちろん、製菓材料としても使われている蒸溜酒です。サトウキビの糖蜜や搾り汁を発酵、蒸溜して造られており、甘い風味とやわらかい口当たりが特徴です。

【テキーラ】

メキシコを原産地とするテキーラは、竜舌蘭(リュウゼツラン)と呼ばれる植物の一種、ブルーアガベを糖化、発酵させたものを蒸溜した蒸溜酒です。熟成期間によって、基本的に樽熟成を行わない「ブランコ(シルバー)」、2ヶ月以上熟成させる「レポサド」、1年以上熟成させる「アネホ」、3年以上樽熟成させる「エクストラ・アネホ」と細かく分類されます。

スピリッツにはさまざまな種類がありますが、同じスピリッツでも、ちょっぴり特別扱いされているウイスキー。酒税法が制定された当時から、日本人に馴染みの深いお酒であったと思うと、感慨深いものがありますね。

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