ビールと炭酸ガスの正しい関係とは?
ビールに含まれるガスと言えば「炭酸ガス(二酸化炭素)」のこと。この炭酸ガスは、ビール独特の爽快感や、ビールをグラスに注いだ際に「泡」を生み出す重要な役割を担っています。今回は、そんな炭酸ガスについて紹介します。
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ビールにはなぜ炭酸ガスが含まれているのか?
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ビールの発酵によって自然に生まれる炭酸ガス
ビールに含まれるガス(炭酸ガス)は、どのように生じるのでしょうか?
そもそも、ビールはおもに大麦麦芽を原料とした麦汁に酵母を加えて造られるもの。麦汁に含まれる糖分が酵母の働きによって発酵する際に、アルコールと炭酸ガスに分解されます。このように炭酸ガスは、ビールの製造過程で自然に発生するものなのです。
充填などの製造過程で使用する人工的な炭酸ガス
ビールに含まれるガスの一部には、製造工程で人工的に加えられるものもあります。
大手ビールメーカーなどでは、ビールの品質をできるだけ長く保つため、缶や瓶にビールを充填・密閉する際に、炭酸ガスを加えて容器内に酸素が残らないようにする場合があります。
このときに使用する炭酸ガスは、サイダーなどの炭酸飲料に使用されるものと同じく、人工的に造られたものです。
窒素ガスを使ったビールも登場
現在では、炭酸ガスに窒素ガスを加えた「混合ガス」を使ったビールもあります。
有名なのが「ギネスビール」。ギネスでは、1950年代に混合ガスを用いる独自技術を開発。「泡がきめ細かい」「膨満感を抑えることができる」といった特長から、人気を集めています。
ビールの味をも左右する炭酸ガスの重要性
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炭酸ガスが生み出すビールの爽快感
ビールの魅力と言えば、ひと口飲んだときのキレのある爽快感もそのひとつ。その爽快感を生み出しているのが炭酸ガスです。
よく「気の抜けたビールはおいしくない」と言われますが、これは炭酸ガスが空気中に逃げてしまった状態のこと。
とくに、炭酸ガスの爽快感が魅力なラガービール好きが多い日本では、「炭酸ガスの抜けたビールは味気ない」と感じる人が多いようです。
ビールの「泡」の正体は炭酸ガス
ビール好きの多くがこだわる「泡」。その正体は、ビールに含まれるタンパク質やホップ樹脂などが、炭酸ガスの気泡に付着したもの。基本的にはビールに含まれる炭酸ガスの量が多ければ多いほど、泡がたくさんできます。
この泡は、ビールが空気と触れて味が変わってしまうのを防ぐという大切な役割も担っています。
炭酸ガスの量はビールのスタイルによって異なる
かつてのビールは、発酵過程でできた炭酸ガスが空気中に逃げてしまうため、現代に比べると微炭酸のビールが主流でした。
その後、密閉技術や冷蔵技術など、炭酸ガスを逃がさない技術が進歩するにともない、ラガービールやスタウトビールなど、炭酸ガスの含有量の多いビールが人気を集めるようになりました。
とはいえ、現在でもエールビールの一部をはじめ、あまり炭酸を含まないものもあるように、炭酸ガスの適切な量はビールのスタイルによって異なると言えます。
ビールに含まれる炭酸ガスを適切に保つために
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缶や瓶ビールは開けたら早めに飲むのが鉄則
自宅などで手軽に飲める缶ビールや瓶ビールの場合、炭酸の量が最適になるよう、製造過程で調節されています。このため、おいしく飲むには炭酸ガスが逃げないよう、開栓したらできるだけ早く飲むのがおすすめです。
また、炭酸ガスは低温ほど溶け込みやすい性質を持つため、よく冷やしておくと開栓後に抜けにくくなります。
ビールに合った炭酸ガスや泡の量を調整できる「樽生」
ビール本来のおいしさを味わうには、ビールに合った炭酸ガスの量や温度を調節できる専用サーバーで供給される、いわゆる「樽生ビール」もおすすめです。
ただし、「樽生ビール」の扱いは意外と難しいもの。炭酸ガスを供給するボンベのガス圧はもちろん、ビールの管理温度やサーバー操作などにより、泡の量や質が大きく変化します。適切なガス圧や提供温度は、ビールの銘柄や飲み手の好み、季節によっても微妙に異なるので、樽生ビールの提供には専門的な知識やノウハウも求められます。
同じビールでも、お店によって味が違うように感じることがあるのも、このせいかもしれませんね。
自宅で飲む缶ビールなどでも、温度やグラスの大きさ・素材・形状、好みの味わいによって、注ぎ方を工夫して、同じビールでもさまざまな味わいをたのしむことができます。このお話はまた別の機会に。
ビール造りの過程で自然に生まれ、ビールの爽快感の決め手となる「炭酸ガス」の重要性を理解してもらえたでしょうか。ビールを飲むときに、そんな「炭酸ガス」のことを意識して飲むのも一興です。