ビールの製造免許と酒税法について知ろう

ビールの製造免許と酒税法について知ろう
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ビールの製造免許を定める酒税法は、これまでに幾度も改正を重ね、そのたびに日本のビールをめぐる環境は大きく変化してきました。今回は、2018年4月に改正された酒税法も含めて、ビール造りの免許について紹介します。

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ビール造りに必要な酒造免許を定める酒税法とは

ビール造りに必要な酒造免許を定める酒税法とは

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ビールの酒造免許を得るために必要なこと

酒税法とは、ビールを含む酒類の製造・販売免許および酒税の賦課徴収について定めた法律です。現行の酒税法は、昭和28年(1953年)に制定されたもので、以降も何度かの法改正がされ、現在に続いています。
この酒税法によって、ビールを含むアルコール分1度以上の飲料が「酒類」として定義され、その製造免許を持たない者が酒類を製造することが禁止されています。

免許取得条件が厳しく、大手メーカーの独占状態が続く

酒類の製造免許を得るには、一定の設備や年間最低製造量などの条件をクリアする必要があります。ビールもその例外ではなく、1994年の酒税法改正まで、ビールの製造免許を得るには、年間最低製造量が2,000キロリットル(350ml缶換算で約57万本!)以上と定められていました。
この条件によって、事実上、小規模なメーカーの新規参入は制限された状態となり、日本5大メーカー(キリン、アサヒ、サッポロ、サントリー、オリオン)が市場をほぼ独占する時代が長く続きました。

酒税法の改正により第1次クラフトビールブーム到来

酒税法の改正により第1次クラフトビールブーム到来

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免許取得の規制緩和によって小規模ブルワリーが続々登場

1994年4月に酒税法が一部改正され、ビールの製造免許を取得するための年間最低製造量が、それまでの2,000キロリットル以上から、60キロリットル以上にまで大幅に緩和されました(発泡酒の製造免許は6キロリットル以上)。
これにより、ビール造りへの門戸が大きく開かれ、小規模なブルワリーが数多く誕生。全国各地で「地ビール」が造られるようになり、第1次クラフトビールブーム(地ビールブーム)を迎えました。

ブームは沈静化し、地ビール冬の時代へ

こうして到来した地ビールブームは、最盛期には全国で300近くのブルワリーが生まれるほど活況を呈しました。
しかし、このブームは長続きせず、1998年ごろをピークに急速に沈静化。地ビールは冬の時代を迎えることになります。

第2次クラフトビールブームに向けて

こうした冬の時代を耐えたブルワリーは、自然淘汰を経て確実に力をつけ、全国各地で多様性と創造性のあるビールを提供するようになります。アメリカ発の世界的なクラフトビールブームも重なって、2012年ごろから「地ビール」という呼び名から「クラフトビール」という呼び名が主流に変化し、再び注目が高まります。
そして、今では第2次クラフトビールブームの到来がささやかれるほど、多種多様なビールが造られるようになりました。

新たな酒税法改正で、ますます多様化するクラフトビール

新たな酒税法改正で、ますます多様化するクラフトビール

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新たな酒税法改正で、駆け込み免許取得が急増

近年、第2次クラフトビールブームの到来を迎えつつあるビール業界ですが、2018年4月にはまたも酒税法が改正。その際、改正される前に駆け込みで製造免許を取得する企業や個人が増えるなど、新たな動きが始まっています。

新たな酒税法改正で何が変わったのか

今回の新たな酒税法改正のポイントを、以下に簡単に紹介します。

【ビールの定義の変更】

ビールの定義が、従来の「麦芽比率67パーセント以上」から「50パーセント以上」にまで引き下げられました。
また、これまで主原料の麦芽、ホップ、水以外の副原料は米や麦、トウモロコシなどに限られていましたが、改正後は香辛料や果実など、さまざまな副原料が使えるようになりました(ただし、規定された副原料に限定され、使用する副原料の重量が麦芽重量の5パーセントを超えないこと)。
この2つの改正により、ビールの定義が従来よりも大きく広がりました。

【酒税の税率】

ビールの定義の拡大にともなって、税率も変更になりました。ごく簡単に言えば、従来のビールや麦芽比率の高い発泡酒の税率は下がり、麦芽比率の低い発泡酒や第3のビールは税率が上がることになります。ただし、新たな税率は2020年~2026年まで段階的に適用され、最終的には一本化される予定です。

【製造量について】

今回の改正で、とくに小規模なマイクロブルワリーが気にしていたのが「製造量」に関する規定でした。
ビールの定義が広がったことで、今まで発泡酒として製造していたものがビール扱いとされ、年間最低製造量も発泡酒製造免許の6キロリットル以上から、ビールと同じ60キロリットル以上に引き上がるのではないかという懸念があったからです。
しかし、今回の法改正では、発泡酒免許で製造しているマイクロブルワリーが多いことに配慮し、「新酒税法ではビールと定義される、ものでも、免許を取得した時点で発泡酒とされていた場合は引き続き発泡酒免許で製造・販売が可能」としています。法改正前に駆け込み免許取得が増えたのも、このことが原因のようです。

酒税法改正についての詳細について

今回の法改正は、政府による地方創生に向けた取り組みの一環とも言われていて、これを機に、日本各地で地元の材料を使った多様で個性的なクラフトビールが生まれてくることが期待されています。ますます多様化することが期待されるクラフトビールの世界から目が離せませんね。

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