麦、芋、米以外はNG!? 本格焼酎には原料の制限がある!
居酒屋の焼酎リストに芋、麦、米以外の焼酎を見かけたことはありませんか? 最近、トマトやニンジン、栗など驚きの材料から造られた焼酎が話題になっています。本格焼酎って何から造ってもいいの? そんな素朴な疑問にお答えします。
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「本格焼酎」の定義を知ろう
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焼酎は日本生まれの蒸留酒です。ウイスキーやブランデーなど世界の各地でも蒸留酒は生産されていますが、焼酎は日本固有のもの。日本酒と同じように昔から愛され、日本全国、47都道府県すべてで生産されているお酒です。
焼酎は酒税法上、蒸留の方法によって2種類に分けられます。
連続式蒸留器を使って醪(もろみ)を補充しながら繰り返し蒸留して造られたもの(甲類焼酎)と、1回の蒸留ごとに醪を入れ替える単式蒸留器で造られているもの(乙類焼酎)です。
後者の方法で造られた乙類焼酎を「本格焼酎」といいますが、製造の違いでこう呼ばれているわけではありません。「本格焼酎」とは、規定の素材、麹、水以外の添加物を一切加えない焼酎のこと。その味わいや香りのよさで、本格焼酎のファンがどんどん増えていったのです。
何でも「本格焼酎」の原料に使えるわけではない
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簡単にいうと、焼酎は穀類や芋類で造った麹と原料を醗酵させ、蒸留して造られます。とくに本格焼酎は、麹原料として必ず穀類か芋類を使わなければならず、サツマイモや大麦、米などの穀類、芋類のほか、主原料に使ってよい素材も酒税法で決められています。
あしたば、あずき、あまちゃづる、アロエ、ウーロン茶、梅の種、えのきたけ、オタネニンジン、カボチャ、牛乳、銀杏、くず粉、クマザサ、栗、グリーンピース、こならの実、ゴマ、昆布、サフラン、サボテン、シイタケ、シソ、大根、脱脂粉乳、タマネギ、つのまた、つるつる、とちのきの実、トマト、なつめやしの実、ニンジン、ネギ、のり、ピーマン、ひしの実、ひまわりの種、ふきのとう、べにばな、ホエイパウダー、ほていあおい、またたび、抹茶、まてばしいの実、ゆりね、よもぎ、落花生、緑茶、レンコン、ワカメ
※国税庁HPより
これらの規定以外の材料を使った場合は、1回の蒸留ごとに醪を入れ替える単式蒸留器で造られているとしても、「本格焼酎」と呼ぶことはできません。
ちなみに、奄美には黒糖焼酎がありますが、原料である「黒糖」は酒税法の素材に該当しません。黒糖焼酎は過去の島の経済的問題もあり、奄美群島区でだけで造ることが許された焼酎なのです。奄美で造る黒糖焼酎以外は、焼酎ではなくスピリッツ扱いとなります。
この素材の選択肢の多さ、そして造り手の技術が加わって無限大に広がる味わいのバリエーションが焼酎のたのしみでもあるのです。
代表的な本格焼酎の種類とその原料
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「本格焼酎を飲もう」と思って頭に浮かぶ種類は、まず芋、麦、米ではないでしょうか? ただ、芋、麦、米といっても、私たちの身近にあるものと同じとは限りません。
芋焼酎はサツマイモが原料です。一般的に目にする食用とは違う、コガネセンガン、シロユタカといった焼酎醸造用の品種があり、鹿児島県や宮崎県南部などの九州南部、東京都下の伊豆諸島がおもな産地です。
麦焼酎は穀粒が二列に並んでいる二条大麦という品種が多く使われます。明治初期にビールの原料用にヨーロッパから持ち込まれました。粒が大きく、デンプン含有量がほかの品種と比べて多いのが特徴です。
米焼酎の原料としては国産米が使われることが多く、その味で焼酎の味わいも左右されることから、コシヒカリなどいわゆる食用のブランド米を使う蔵元もあります。
それぞれの原料の改良も続けられていて、ますます味の幅が広がっており、目が離せないのが焼酎なのです。