焼酎の個性は原料だけでは語れない! 味わいを左右する5要素
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焼酎は「地酒」?!
「地酒」と聞くと日本酒をイメージする人も多いかも入れません。
しかし、焼酎(おもに乙類焼酎)も各地の風土の影響を色濃く受け、その土地ならではの味わいや香りが楽しめる「地酒」なのです。焼酎の主原料となる芋、麦、米などは、その地域で最も採れる産物を使い、その産物を育んできた清らかな水と共に仕込まれ、同じ土地に生きる人々が伝えられてきた製法で仕上げていきます。焼酎は、そんな地産地消の環境下で地元に愛され飲み続けられている、まさに地元酒。
また、「所変われば品変わる」のことわざの如く、同じサツマイモを使ったとしても、造る地域さらに蔵元によって、出来上がる焼酎の味わいや香りはまったく異なります。この多種多彩さも、焼酎の大きな魅力です。
焼酎の味わいを左右する5つの要素
個性あふれる各地の焼酎たち。その味わいを左右するのが「原料」「麹」「仕込み」「蒸留方式」そして「貯蔵と熟成」の5つの要素です。
まずは「原料」。米から生まれる日本酒と異なり、焼酎の原料は芋、麦、米、さらに地域によって、黒糖や酒粕、そば、ごまなどを用いるところもあります。
続くふたつ目の要素が「麹」。焼酎造りでは華やかな香りと甘みを生み出す黄麹、コクとスパイシーなキレを印象づける黒麹、柔らかな風味に仕上げる白麹の3種類が使われます。
3つ目の要素は「仕込み」。麹や主原料を酵母と合わせ、アルコール発酵を促す仕込みの方法も焼酎は独特です。九州以北では、麹と主原料を2回に分ける「二次仕込み方法」が主流ですが、沖縄の泡盛は仕込みを一度に行う「全麹仕込み」を行っています。
4つ目の要素が味わいを左右する「蒸留方式」。仕込みでつくられる「もろみ」を蒸留して焼酎の原酒が作られますが、この「蒸留方法」も2種類。芳香で豊かな風味を生む「常圧方式」、あるいは軽快、淡麗な飲み口の「減圧方式」かも、目指す焼酎の仕上がりに応じて使い分けられています。
そして、5つ目の要素が出来上がりの原酒を安定させる「貯蔵と熟成」の仕方。一般的にはステンレスやホーロー製のタンクですが、より風味や味のまろやかさを考慮して、素焼きの和甕(わがめ)や洋酒用の樫(かし)の樽で貯蔵、熟成を行うことも少なくありません。
5つの要素ともいろんな選択肢がありますが、いずれもラベルにしっかり記載されています。自分好みの焼酎に出合った時、それがどんな「原料」「麹」「仕込み」「蒸留方式」「貯蔵と熟成」なのか、チェックするのも興味深いですね。
焼酎の原料は「十土地十色(じゅっとちといろ)」
そもそも芋焼酎は「米がなかなか作れない土地でいかに酒を造るか」という苦心の末に生まれたものといわれています。そのため、その土地で最も採れる産物で焼酎は作られます。まさに十人十色ならぬ「十土地十色」。
焼酎王国と言われる九州を例に挙げるなら、鹿児島県の焼酎は「芋」が主原料ですが、その北にある熊本県人吉市などの球磨地方は「米」。麦仕込みは長崎県の壱岐島や大分県。また、鹿児島県の右隣にある宮崎県では、南部は芋仕込みが多いのですが、大分との県境の北部は麦、天孫降臨の舞台、さらに高千穂エリアでは蕎麦焼酎も作っています。
さらに原料の品種によっても味わいは変わります。例えば、芋焼酎に使われるサツマイモは、デンプン量の多さがふんわりとした甘い香りとまろやかな口当たりを生むコガネセンガンや紅イモをはじめ、40種以上。同じ芋でも、ジャガイモ仕込みの芋焼酎もあります。
その土地で生まれ育った焼酎は、同じ環境で育った山海の幸、またそれらを活かした地元料理との相性も抜群。各地に訪れた際は、ぜひ、実感してみてください。