ビールの樽、瓶、缶、それぞれ何が違うの?
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樽、瓶、缶、パッケージの特徴
ビール製造の最終工程に、パッケージングがあります。パッケージングとは、ビールのおいしさを保つためにふさわしい容器に充填すること。その代表的なものが樽、瓶、缶の3つです。
樽は、リユースして使われます。口金部品の緩んでいるものなどを取り除き、洗浄と殺菌をした上、樽内を炭酸ガスや窒素ガスなどで置き換えし、加圧してビールを充填します。
瓶の場合、新品のものもありますが、回収された瓶または新品の瓶を洗浄機でしっかり洗浄し殺菌することから始めます。洗浄された瓶は瓶詰め工程で、瓶内の空気を炭酸ガスによって追い出し加圧状態にしてビールが充填されます。ビールが温度変化により膨張し内圧が高くなることを防ぐため、瓶上部に一定の空きを残してあります。ちなみに、日本の場合ビール瓶は年間約3回転し、平均して8年間にわたって再利用されています。
缶は、製缶会社から衛生面で問題のないきれいな缶が到着します。届いた缶は洗浄され、二酸化炭素などで空気を置き換えしたあとビールが充填されます。缶はフタと胴の部分に分かれていて、ビールが充填されると炭酸ガスを吹きかけて瞬間的にフタを巻き締めます。
いずれの容器も、ビールと酸素の接触を少なくし、酸化によるビールの品質劣化を防いでいます。
樽、瓶、缶、味わいの違い
それぞれの容器の特徴ごとに細心の注意をはらい、品質劣化を防ぎ、おいしいビールが出荷されていますが、その中でも、樽ビールがおいしく感じられるとしたら、それはいくつかの要素のためです。
樽は、瓶や缶のように栓を開けたらすぐ注ぐことができず、ビールサーバーや炭酸ガスボンベなどの専用機器類一式をそろえて設置しなければなりません。この専用機器の役割はふたつ。ひとつめは、ビールを適正な温度に冷やすこと。ふたつめは、グラスなどに注ぎ出すことです。サーバーから注ぎ出すことで、クリーミーできめ細かな泡が作られます。しかも、これらの専用機器の扱いについては専門の知識を必要とします。樽(サーバー)から注ぐビールは、普段のメンテナンスがきちんとされていることが大前提。注ぎ手によって味わいに大きな差が出る、奥深い世界です。
初期の瓶詰めされたビールは、ビールを熟成させる目的もあったようです。長期保存や輸送のための品質保持という目的での瓶詰めは、16世紀ごろになります。日本で最初にビール瓶を製造したのは、1888年に設立された品川硝子製造所です。当時は、輸入瓶がたいへん高価だったため、国産瓶へ切り替わっていきました。
最初の缶ビールは、1935年クレーガー・ビール社とアメリカン・カン社の合作により発売されました。日本では1958年アサヒビールから発売され、1959年にサッポロビール、1960年にはキリンビールから発売されました。軽くて扱いもラクな缶ビールは、家庭へのビールの普及にもつながりました。
缶はアルミ臭い、炭酸が弱い、冷蔵庫から出すとすぐ温まってしまうなどといって瓶のほうがおいしいといわれることもありますが、科学的に証明がある訳ではありません。
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場所や時間、季節にあわせて飲み比べよう
樽、瓶、缶のどれを選ぶかは、飲む場所やシチュエーションにあわせて選んではいかでしょうか?
樽は、ビール専門店など店舗ならではの味わいをたのしんで。
瓶は、飲んだ後のゴミ捨てが面倒だったり、銘柄をいろいろ飲みたい人には不向きですが、お気に入りが決まっていれば配達、空き瓶回収をしてくれる店があるのでエコ、かつ便利です。ホームパーティなどでは瓶にすると、おもてなし感がアップします。
缶はいろいろな銘柄をワイワイ飲みたいときにはいいでしょう。リサイクルもラクチン。気軽に外で飲むときにもおすすめです。それぞれにふさわしい容器のビールを持って、ビールをおいしくたのしみたいですね。
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