ワインの産地ごとの特徴を知ろう!

ワインの産地ごとの特徴を知ろう!
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ワインは産地によって特徴が異なるお酒。ブドウの品種や生育環境、造り手ごとの栽培方法や醸造方法などの条件によって味わいは大きく変わってきます。今回は、「旧世界」と呼ばれるワイン産地、「新世界」と呼ばれるワイン産地、それぞれについて紹介します。

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「旧世界(オールドワールド)」と呼ばれるワイン産地

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「旧世界(オールドワールド)」とは、古くからワイン造りを行ってきた伝統あるワイン生産国のことで、フランスやイタリアなどのEU諸国を指します。旧世界のワインは伝統的な製法で造られ、複雑な味わいを持つ傾向があります。ここでは、おもな旧世界の産地の特徴をみていきましょう。

伝統と格式のワイン王国・フランス

フランスは、高品質なワインを生み出すワイン大国として知られています。近年の生産量はイタリアに次いで2位となっていますが、世界的に有名な「ロマネ・コンティ」や「ペトリュス」、「シャトー・マルゴー」、「ドン・ペリニヨン」、「モンラッシェ」などの高級ワインを多く生み出し、繊細で複雑な味わいやブランドイメージは他の追随を許しません。

フランスのワイン造りは、紀元前600年頃にギリシャ人によって伝えられたのが始まりといわれています。フランスではボルドーやブルゴーニュ、シャンパーニュなどの銘醸地をはじめ、ほぼ全土でワイン造りが行われ、土地や気候に合わせたブドウ栽培と伝統的な醸造方法で多種多様な味わいが生み出されています。

多様性に恵まれた固有品種の宝庫・イタリア

温暖で日照時間が長く、ブドウ栽培に適した環境に恵まれたイタリアは、20ある州のすべてでワイン造りが行われ、近年の生産量はフランスをもしのぐ世界一のワイン原産国となっています。カジュアルなイメージが強いイタリアワインですが、「バローロ」や「バルバレスコ」など、重厚な高級ワインも人気です。

南北に長く変化に富んだ地形を持つイタリアでは、土地や気候に合わせた個性豊かなワインが造られています。1861年まで統一国家ではなかったため、地方ごとに歴史や文化、ワインに対する感受性やアプローチの仕方が異なる点、土着ブドウ品種の多さもイタリアワインの多様性の要因となっています。

良質で気軽にたのしめるワインが揃う・スペイン

スペインは、イタリア、フランスに次いで世界第3位の生産量を誇るワイン原産国で、ブドウの栽培面積では世界一です。バルで気軽に飲むワイン、というイメージが強いスペインワインですが、近年では高級ワインも多く造られています。

とくに、北部のリオハ地区やリベラ・デル・ドゥエロ地区は銘醸地として広く知られます。これらの地域で造られる赤ワインはアメリカンオークなどの樽で長期熟成され、スパイシーな香りが特徴です。

一方、北東部のペネデス地方などはスペイン特有のスパークリングワイン「カバ(カヴァ・Cava)」が造られ、高い人気を誇っています。また、南部で造られるワインとしては、アンダルシア地方の酒精強化ワイン「シェリー(Sherry)」が有名です。

近年では、北西部ガリシア州で生産される白ブドウ品種アルバリーニョで造られる「リアス・バイシャス」という白ワイン原産地呼称も高評価を獲得しています。

豊かな酸と芳醇な香りが魅力・ドイツ

ドイツは、ワイン生産国のなかでも緯度が高く冷涼な気候をもち、美しい酸と芳香が魅力の良質なワインを生み出しています。とくに、南西部のライン川流域に位置するモーゼル地区やラインガウ地区は白ワインの銘醸地であり、ドイツを代表する品種であるリースリングを用いた優れた白ワインが造られています。

また、これらの白ワインに加え、南部のバーデン地区やヴュルテンベルク地区などでは良質な赤ワインも生産されています。世界各国のワイン産地で温暖化の影響がみられつつある昨今、冷涼地であるドイツでは温暖化によりブドウが完熟しやすくなり、安定して質の高い赤ワインが生産できるようになってきています。

古き伝統を守りつつ新たなスタイルへの挑戦・ポルトガル

古き伝統を守りつつ新たなスタイルへの挑戦・ポルトガル

ポルトガルのワイン造りの歴史は古く、紀元前2000年ごろから行われていたといわれています。酒精強化ワインであるポート・ワインやマデイラ・ワインが有名ですが、近年はそのほかのワインについても品質が向上し、世界的な評価が高まっています。

ポルトガルには約250種ものブドウの固有品種があり、多彩なワインが生み出されているのが特徴です。かつては複数の品種をブレンドしていましたが、近年では単一品種のワインも増えてきました。

主要なワイン産地としては、軽やかな白ワインが人気のヴィーニョ・ヴェルデや、ブドウ畑の景観が世界遺産となっているポルトとドウロ、エレガントな赤ワインを生み出すダンがあります。

果実味あふれる自然派・オーストリア

寒暖差が大きく冷涼な気候をもつオーストリアのワインは、豊かな果実味が特徴です。白ブドウ品種はリースリングやグリューナー・フェルトリーナー、黒ブドウ品種はツヴァイゲルトなどが多く栽培されています。

オーストリアでは、1985年に一部の業者が白ワインにジエチレングリコールを混入させていた事件があって以降、厳しいワイン法による品質管理がなされ、世界一厳格なワイン法が運用されているといわれます。また、オーストリアはオーガニック大国としても知られ、有機農法やビオディナミ農法が盛んであることも特徴です。

オーストリアのお隣のスイスも、オーストリア同様、冷涼な気候を活かした高品質なワインが造られています。とはいえ、スイスでは品質を保つためブドウの生産量が制限されていることに加え、国内での消費量が多く、海外への輸出はごくわずかとなっています。

「新世界(ニューワールド)」と呼ばれるワイン産地

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「新世界(ニューワールド)」は、16世紀以降にワイン造りが伝えられた比較的歴史の浅いワイン生産国のこと。日本やチリ、アメリカなどがこれに当たります。新世界のワインは、旧世界のワインに比べて原料や製法の自由度が高いものが多くなっています。ここでは、おもな新世界の産地の特徴を紹介します。

独自の気候風土を活かして急成長・日本

日本でワイン造りが始まったのは明治時代初期のことですが、当時は甘いジュースのようなワインが主流でした。現在のような本格的なワイン造りが発展したのは1970年代以降です。90年代になると、フランスに留学して本場のワイン造りを学ぶ造り手が増加。現在では各地で日本独自の個性を活かしたワイン造りが行われて、世界での評価も高まっています。

かつて日本では、海外から輸入したブドウや濃縮果汁などを使用して国内で製造したワインを「国産ワイン」と呼んでいましたが、2018年のワイン法(国税庁告示「果実酒等の製法品質表示基準」)施行以降、これらは「国内製造ワイン」とされるようになりました。国産ブドウのみを使用して国内製造されたワインは「日本ワイン」と呼ばれ、「国内製造ワイン」と区別されています。

主要なブドウ品種は、白ワイン用が日本固有種の「甲州」、赤ワインは固有種「マスカット・ベーリーA」です。

日本への輸入量はトップ!チリ

リーズナブルな価格で品質のよいチリワインは、日本でも高い人気があります。2007年に締結されたEPA(経済連携協定)の影響もあって近年の輸入量は大きく増加し、日本のワイン輸入量は2015年から2020年まで6年連続でチリがトップとなっています。

チリワインは、アコンカグア・ヴァレーやラペル・ヴァレーなどの渓谷を中心に造られ、「チリカベ」と呼ばれるカベルネ・ソーヴィニヨン種の赤ワイン、ピノ・ノワール種の赤ワインのほか、白ブドウも高い評価を得ています。
手頃な価格のテーブルワインのイメージが強いチリワインですが、「アルマヴィーヴァ」や「セーニャ」のような高級ワインも造られていて、世界の愛好家の人気を集めています。

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カジュアルから最高級まで・アメリカ

アメリカワインの最大の生産地といえば、カリフォルニアです。なかでも高級赤ワインが造られるナパ・ヴァレー(ナパ・バレー)は銘醸地として知られ、この地で造られる「オーパス・ワン」などの高級ワインは、ワイン愛好家でなくてもその名を聞いたことがあるのではないでしょうか。なお、アメリカワインの約9割はカリフォルニア産であるものの、オレゴン州やワシントン州、ニューヨーク州などでもワイン造りが行われ、高級ワインからテーブルワインまで幅広く造られています。

アメリカワインは、一般的にブドウ本来の味がしっかりと感じられるのが特徴となっています。ブドウ品種は、赤ワインにはカベルネ・ソーヴィニョンやメルロー、ピノ・ノワール、ジンファンデル、白ワインにはシャルドネ、シュナン・ブラン、ソーヴィニヨン・ブランなどが多く使用されます。

先進的な醸造技術を取り入れ、高品質ながら低価格・オーストラリア

オーストラリアのワイン造りの歴史は200年程度と浅いものの、旧世界の醸造技術から学びながら近代的なブドウ栽培や醸造技術を発達させ、現在では世界有数のワイン生産国となっています。

オーストラリアでは、主要な国際品種を中心にさまざまなブドウが栽培されていますが、とくに有名なのが黒ブドウ品種シラーズです。ワインの産地は南部と西部に集中していて、南部のメルボルンやアデレード、西部のパース近郊などで質の高いワインが造られています。

オーストラリアにはフランスやイタリアのような厳しい格づけ制度はありません。高品質でコストパフォーマンスの高いワインが多いことは、オーストラリアワインの大きな魅力といえるでしょう。

肥沃な大地が高品質葡萄を産む・ニュージーランド

ニュージーランドでは19世紀の初めにブドウが持ち込まれ、20世紀後半になって辛口のワイン造りが盛んになりました。ワイン造りの歴史は浅いものの、恵まれた地理的条件と先進的な醸造技術の導入により、近年大きな進化をみせています。

ニュージーランドを代表する白ブドウ品種として知られているのが、ソーヴィニヨン・ブランです。1980年代に、マールボロ―地区のソーヴィニヨン・ブランを使用した白ワインがコンペティションで最優秀賞を受賞したことで、ニュージーランドワインの世界的評価が高まりました。ほかに、白ブドウではシャルドネ、黒ブドウではピノ・ノワールなどが栽培されています。

気候を生かしたオーガニック栽培・アルゼンチン

南北に長い国土をもつアルゼンチンでは各地にワイン産地が点在していて、多様な味わいのワインが生み出されています。アルゼンチンワインは、1990年代に市場が開放され海外から最新の栽培方法や醸造技術が持ち込まれたことで、大きな飛躍を遂げました。

アルゼンチンでは昼夜の寒暖差が大きくブドウに害虫がつきにくいため、農薬を使わない有機栽培のブドウを用いたオーガニックワインが多く造られ、人気となっています。

アルゼンチンを代表するブドウとして挙げられるのが黒ブドウ品種のマルベックで、その濃厚な味わいはアルゼンチンで好まれる肉料理によく合います。白ブドウ品種では、華やかな香りを持つトロンテスが多く栽培されています。

アルゼンチンのトップワイナリーの一つ「トリヴェント」から、オーガニック マルベックワイン新発売。

新世界ワインの先駆け・南アフリカ

南アフリカでワイン造りが開始されたのは17世紀半ばといわれ、新世界のなかでは比較的ワイン造りの歴史が長い国といえます。1990年代に人種隔離政策が全廃され民主化が進んだことで、南アフリカワインが輸出されるようになり、世界的な評価も高まることになりました。

南アフリカでは、白ブドウ品種ではシュナン・ブランやシャルドネ、黒ブドウ品種ではカベルネ・ソーヴィニヨンやシラーズ、南アフリカ固有品種のピノ・タージュなどが多く栽培されています。南アフリカではワイン産地の多くが世界自然遺産にあるため、地球環境にやさしいワイン造りが行われていることも大きな特徴です。

世界には多数のワイン産地があり、それぞれ異なる歴史や特徴があります。旧世界・新世界の違いに加えて、国ごとの歴史や特徴、主要な品種などを知って、好みのワイン選びに役立ててください。

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