天然の山水と地産米で醸す、新日本酒ブランド「narai(ナライ)」がスギノモリ・ブルワリーで醸造開始
2012年より休眠状態にあった杉の森酒造(⻑野県塩尻市)は、Kiraku(京都府京都市東山区)により、「suginomori brewery(スギノモリ・ブルワリー)」として再生。新日本酒ブランド「narai(ナライ)」の醸造と記念すべきファーストバッチ(初回醸造分)の販売を開始しました。
- 更新日:
地域の自然の魅力を表現する新たな日本酒「narai(ナライ)」
長野県塩尻市奈良井の重要伝統的建造物群保存地区内で1793年に創業し、2012年より休眠状態にあった杉の森酒造は、ホテル開発・企画、アセットマネジメント、ソフトウェア開発、データ分析コンサルティング等を手掛ける、Kiraku (京都府京都市東山区)により、日本一標高の高い蔵元「suginomori brewery(スギノモリ・ブルワリー)」として再生しました。
そしてこの度、新日本酒ブランド「narai(ナライ)」の醸造を行い、記念すべきファーストバッチの販売を開始。ちなみに、ブルワリーの新銘柄にて初めて醸造されたお酒のことを“ファーストバッチ”というそうです。
蔵元にはKirakuの代表取締役でもあるサンドバーグ弘氏、杜氏に松本酒造(京都府京都市伏見区)で蔵人を務めてきた入江将之氏、番頭に同じく松本酒造で長らく経験を積んできた西川正貴氏が着任。アドバイザーは松本酒造の元杜氏である松本日出彦氏が務めています。
“地域の自然の魅力を表現する新たな日本酒を醸す”というスギノモリ・ブルワリーは、杉の森酒造の伝統を継承しつつ、マイクロブルワリー・四季醸造という新たな醸造計画に挑戦しているといいます。ここからは、そんな新たな醸造計画についてや、こだわりの原料、シンボルマークに込められた想いなどについてご紹介していきたいと思います。
天然の山水と丁寧に作られる地産米
左:横水の水場
右:山の水
標高約940m。木曽の美しい山々と杉の森に囲まれた自然豊かな環境に位置するスギノモリ・ブルワリーは、日本一標高の高い蔵元として奈良井宿にあります。江戸時代から宿場町として栄えた奈良井宿には、かつて中山道を行き来する旅人を潤し、地域住民の営みを支えてきた山水があり、今でもそれは地元の人々によって大切に継承されているといいます。
山水の特徴は、信濃川と木曽川の分水嶺付近の湧き水で、硬度25以下の軟水。スギノモリ・ブルワリーへは、奈良井宿内に6つある水場の1つ、建物目の前の「横水」から引き込まれ、醸造に使用されています。
左:杜氏 入江将之氏とファームいちまる代表 丸山房洋氏
右:安曇野の米
原料となる米は、長野県安曇野で酒米づくりを行う「ファームいちまる」と提携し、地産のものを使用しているそう。同じく標高の高い環境で育った安曇野の米は、北アルプスの雪解け水が使用されており、手作業によって丁寧に作られています。
ファームいちまるの代表、丸山房洋氏は「米作りは農家の頑張りと天気を決める神様の頑張り。(日本酒は)土から酒まで、農家と蔵人がともに作るもの。これから様々なことに一緒に挑戦していくのをたのしみにしている」とコメント。
この天然の山水と丁寧に作られる地産米が、スギノモリ・ブルワリーで姿を変え「narai」として醸されます。
マイクロブルワリー ~限られた空間を効率的に活用する酒造り~
約250㎡のマイクロブルワリーとして以前の半分以下のサイズで再生したというスギノモリ・ブルワリー。通常の酒蔵では3000Lから8000L等の大型タンクを使用する中、スギノモリ・ブルワリーでは1800Lが4台、900Lが4台と小型タンクを採用し、限られた空間を効率的に活用する酒造りに挑戦しているといいます。また、通常の酒蔵では、効率を重視し醸造工程毎に分業化されていますが、スギノモリ・ブルワリーでは小規模酒蔵の特徴として、1人の杜氏による「全工程手作業の丁寧な酒造り」を行う予定となっているそうです。
「四季醸造」で年中搾りたての日本酒をお届け
通常の酒蔵では、稲刈りが始まる11月頃から仕込みを開始、春先の4月頃までが醸造期間とされますが、スギノモリ・ブルワリーでは冬の気温と同じ環境を再現できる冷蔵室を設けることで、年中製造可能な「四季醸造」という製造方式で醸造を行うとのこと。これにより、年中搾りたての日本酒を届けること、また年間を通した杜氏の仕事確保が可能になったといいます。
受け継がれる道具たち
酒造りでは、前蔵元以前より使用されてきた道具を再利用。杜氏の入江氏は「保存状態により、修復が必要なものもあるが、時間をかけながら一つ一つ丁寧に直して、naraiの製造に使っていきたいと考えています。酒蔵再生の過程で、新たな機材の導入等もしていますが、それら新しいものと、道具によるこれまでの歴史を掛け合わせた日本酒づくりを行うことは僕自身にとっても新たな挑戦になります。」とコメント。
また、スギノモリ・ブルワリーでは酒造りを通して、道具も一緒に育てていく蔵づくりを行うといいます。
「山型のシンボルマーク」に込められた想い
スギノモリ・ブルワリーの「山型のシンボルマーク」は、蔵名でもある【杉の森の風景】をイメージしてデザインされています。このデザインは、先代蔵元時代に建物の壁面に取り付けられていた「大工さんが遊びで作った木工細工」がモチーフになっているのだとか。先代蔵元の平野氏によると、「いつからあるかわからないが、面白いからそのままにしている。」とのこと。
スギノモリ・ブルワリーは、「この木工細工に遊び心と杉の森酒造に対する住民の愛情がこめられていると解釈し、モチーフとさせてもらうことにしました。この歴史を継ぐ当蔵のシンボルマークには、地域の方々に愛されてきた杉の森酒造が、奈良井宿を起点に、全国の人にも、そして世界の人にも愛される酒造りをしていきたいという想いが込められています。」とコメントしています。
suginomori brewery brand movie
記念すべきファーストバッチは、2021年10月1日より こちら で販売しています。
杉の森酒造株式会社について
株式会社Kirakuの子会社。1793年創業の「杉の森酒造」が2012年に休眠に入り、2021年に「suginomori brewery(スギノモリ・ブルワリー)」として酒蔵再生、製造再開をする。日本酒「narai (ナライ)」を製造。
>>ホームページ
Facebook:@narai.sake
Instagram:@narai.sake
株式会社Kirakuについて
ホテル開発・企画、アセットマネジメント、ソフトウェア開発、データ分析コンサルティング等を手掛ける。2015年7月に宮崎県日南市より「まちなみ再生コーディネーター」業務を受託、同市の重要伝統的建造物群保存地区の再生計画を担う。2017年12月には、経済産業省より「地域未来牽引企業」に選定。現在も京都を中心に全国で事業を展開。日本の歴史的資源を活用した再生ビジネスに着目し、旅館再生を含め、「日本の未来に残したい資産」をテーマに、事業性のある不動産等の再生プロジェクト 及び 戦略投資を行う。
Photo by Tomohiro Mazawa, Luca Gabino, Takatoshi Yamano
※今回お届けした情報は記事執筆時点のものです。ご利用の際は状況が異なる場合がありますのでご注意ください