蒸し暑い夏こそ! ロゼワインのポテンシャルの高さを学ぶ@東京・神田『VINOSITY magis』

蒸し暑い夏こそ! ロゼワインのポテンシャルの高さを学ぶ@東京・神田『VINOSITY magis』

海外では消費の多いロゼワインですが、日本では今ひとつな印象。「甘い?」「白ワインと赤ワインを混ぜているの?」など、理解が不足していることも要因でしょう。そこで日本では珍しいロゼワイン専門店『VINOSITY magis(ヴィノシティ マジス)』を運営するシニアソムリエの藤森真さんにその魅力を伺いました。

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肉にも魚にも…料理を選ばない万能なワイン

“こぼれスパークリング®︎”の元祖であるワインバル『VINOSITY』を、都内と名古屋で5店舗(酒販店含む)営む藤森真さん。

ロゼワインのロゼは“ROSE”。そうバラ色の外観が特徴です。
「アメリカなどでは“ピンクワイン”とも呼ばれているんですよ」と藤森真(ふじもり・まこと)さん。限りなく白ワインに近い色の薄いワインは「ブラッシュワイン」と称されることも。ちなみに“BLUSH”とは、(つぼみなどが)赤らむ、バラ色になるという英語です。

日本では“ロゼワインは甘口”のイメージが強いですが、実際はそうではないようです。
「現在の中高年層が初めて口にしたロゼワインに甘口のものが多かったんです。当時のドイツワインに代表されるように、日本ではワインは甘いお酒というイメージがあったことから、甘口のものが中心に輸入されていたんですよ」。
世界的には昔からロゼワインにおける甘口の比率は低く、むしろ辛口が主流なのだとか。
「じつは甘口、辛口、ほのかな甘口とバリエーションが豊かなんです」。

現在は世界各地で造られていますが、代表的な産地はどこなのでしょうか?
「やはり南フランスですね。この地方は赤ワインも白ワインも醸していて、その両方の要素を持つロゼワインの生産も盛んです。ロゼワインのAOC(原産地呼称)があることもそれを裏付けていると言えるでしょう」。
フランスにおけるシェアは、赤ワイン、ロゼワイン、白ワインの順番と聞きびっくり。消費量の約30%をロゼワインが占めているそうです。

美しいピンク色が、ロゼワインの持ち味。

どうして優美なバラ色になるのでしょうか? 醸造過程において白ワインと赤ワインを混ぜることもあるのでしょうか? 
「白ワインと赤ワインをブレンドしてロゼにすることは、シャンパーニュ以外に認められていません。ロゼワインの製法にはセニエ法をはじめとして、3種類あるんです」と藤森さん。教えていただいた3つを以下に簡潔にまとめましたが、①のセニエ法がもっともポピュラーな製法のようです。

<ロゼワインの製法>
①セニエ法
赤ワインの原料である黒ブドウを使用。赤ワイン同様に果皮と果汁をタンクに入れて発酵させるが、早い段階でタンクの下部からピンク色の果汁を抜いて別に発酵させる。
②直接圧搾法
黒ブドウを原料として、白ワインと同様にブドウを圧搾してから果汁を発酵。破砕や圧搾する際に果皮の色素が果汁に移ることで、ロゼの色合いになる。
③混醸法
黒ブドウと白ブドウを混ぜた状態で発酵させることで、赤ワインと白ワインの中間的なカラーを帯びる。ドイツの“ロートリング”と呼ばれるロゼワインが有名。

その上品なビジュアルのほかに、ロゼワインがどんな魅力を持つのかも気になるところ。
「赤ワインと白ワインのいいとこ取りのようなワインなので、料理に合わせやすいですし、飲む人を選びません。仲間でボトルを開けようという時に便利ですね。リーズナブルな価格帯が中心なので、カジュアルに楽しんでいただけるところもおすすめです」。

これから蒸し暑い夏がやってきますが、キンキンに冷えたロゼワインがぴったりだとか。
「ニースやモナコ、カンヌといった南仏のリゾートでは、テラス席に座って昼間からロゼワインで乾杯する姿がそこかしこに見受けられます。太陽がまぶしい休日の昼下がりにピンク色のワインを飲むと、とてもハッピーな心地になれること間違いなしです!」。
もっと浸透すれば、日本でもロゼワインで暑気払いというシーンが増えそうです。

9年前にロゼワイン専門店をオープン

扉を開けると、ロゼワインが所狭しとディスプレイされていました。

知れば知るほど気になるロゼワインですが、あまりその姿を見かけないのも事実。でもそのポテンシャルに気づいていた藤森さんは、2011年の秋にロゼワイン専門店『VINOSITY magis』を開店させていたのです。ここからは当時起ち上げに携わった横山裕樹(よこやま・ひろき)ソムリエも加わり、話をお聞きすることになりました。

ロゼワインをこよなく愛するソムリエの横山さん。

「マジスは2号店で、すでに1号店を同じ神田で営業していました。歩いてすぐの距離なので、同じコンセプトだと被ってしまいます。異なる魅力を持つ店にすれば新たな客層を獲得できますし、1号店で飲んだ人たちが2次会の会場として使ってもらえると考えました。そこで開店スタッフとして前職で一緒だった横山に声をかけた際、『どんなワインバルをやりたい?』と問いかけたのです」。

「以前藤森と一緒に働いていたレストランで、ロゼワインのフェアをやったことをその時思い出したんです」と横山さん。「想像以上にバリエーションがあって興味深いものでした。色が似ていることから桜の時期に合わせて開催したのですが、春先だけのイベントで終わらせるのはもったいない。夏はもちろん、冬でも美味しいタイプがありますから、年中ロゼワインを楽しめるようにできたらいいなと考え続けていたんです」。

「ロゼワインの奥深さは認めていたので即採用」(藤森さん)。このようにして誕生した『VINOSITY magis』のワインリストには、30アイテム以上が並びました。現在は50アイテム以上有しているとか。グラスワインでも常時3種類を提供。名物の“こぼれスパークリング®︎”にロゼが登場することもあるそうです。

JR神田駅東口から歩いて1分。地下1階にお店はあります。

“ロゼ愛”にあふれた店内。ロゼワインを飲まずに帰るわけにはいきませんね。

カジュアルでありながら、ゆっくり落ち着ける空間。向かって右側のボードにはある仕掛けが…。

スライドさせると秘密基地のような個室が現れ、ワクワクします。

ロゼワインのバリエーションは多彩

並べてみるとピンク色の濃淡もかなり異なっていることがわかります。

ここからは、店のリストにあるロゼワインをテイスティングして、その味わいを検証させていただくことに。横山ソムリエに個性の違う3本を選んでもらいました。

※価格は『VINOSITY magis』でのボトル提供価格となります。

半甘口の『バユオー ロゼ ダンジュ レ クレールコント』

フランス・ロワール/3300円。

「フランス北部のロワール地方のワインで、品種はグロロー。このエリアのアンジュ地方などで多く栽培されている黒ブドウ品種です」。
セニエ法で醸されていて、ピンクの色合いはかなり濃いめ。
「香りには、ストロベリーやラズベリー。キャンディのような華やかさも立ち昇ってきますね」。

味わいの特徴は、爽やかでフルーティ。半甘口の優しい飲み心地です。
「きれいな酸味が甘さを引き締めているところがいいですね。この酸味がぼやけないように8℃ぐらいの低い温度でいただくのがおすすめ。直前まで冷蔵庫で冷やしておくのが賢明でしょう」

温度を変えて楽しむ『シャトー メルシャン マリコ ロゼ』

日本・長野県/4700円。

「自社で管理している畑『椀子(まりこ)ヴィンヤード』で育んだシラー、メルロー、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨンを使用しています。骨格のしっかりした辛口タイプのロゼですね」。
確かにスパイシーさに適度なタンニンもあって飲み応えがあります。聞くとアルコールも13度。先のロゼ ダンジュが10.5度なので、こちらは赤ワインに近い印象です。

「温度によって味わいが変わるのも特徴」と横山さん。8℃ではみずみずしくチャーミングな印象でしたが、常温に移っていくと香りは開いてエレガントに。酸味がまろやかになり、温かくクリーミーな料理に合わせてもよさそうです。

名手が醸す『ウィスパリング・エンジェル』

フランス・プロヴァンス/5500円。

「少々お値段は高めですが、ぜひ試していただきたい1本です」と横山さんが推したのは『シャトー デスクラン』のワイン。じつはこのワイナリー、5大シャトーのひとつである『シャトー ムートン』を擁する『バロン・フィリップ・ド・ロートシルト』でワインメーカーを務めたパトロリック・レオン氏を招へい。ロゼワインだけを造っている醸造所と聞いて驚きです。

「淡いサーモンピンクの外観らしく爽やかさが際立っています。白桃のような品のある香りが心地いいですが、このワインの特徴はまるで球体のようなバランスに優れたところ」。
グルナッシュが50%を超えますが、サンソ―、シラーなど使用している品種は多彩。白ブドウのヴェルメンティーノもブレンドされています。セニエ法に加えて製法でもいろいろなテクニックが使われているようで、品種の多様性と合わせて複雑なワインとなりバランスよく仕上がっています。

「アルコールが13度としっかりあるのに、体に優しく沁み入る感じを体感してほしいですね」。ちなみにワインの名前は“天使のささやき”という意味です。

料理とペアリングしやすいロゼワイン

野菜、肉、魚介を使った料理とロゼワインの相性を確認しました。

冒頭で“赤ワインと白ワインのいいとこ取り”と記したロゼワインですが、実際にお店の料理と合わせてみることに。ここからは再び藤森さんが解説してくださいます。

ラタトゥイユ×イタリア・シチリアのロゼ

『南仏薫る ラタトゥイユ』(550円)。

南仏の名物料理ですが、イタリアのシチリア島のワインが登場。
「南仏のロゼだと芸がなさ過ぎるので(笑) じつはシチリアはトマトの産地で、煮込み料理がよく食べられているんですよ。トマトは煮込むことでより旨味が出てきます。このワインは土着品種のネロ・ダーヴォラ100%なんですが、やはり旨味成分が強い。植物性の旨味で繋がるマリアージュなんです」。
フレッシュでスムーズな口当たりも、煮込んだ料理に合うという感想です。

『フェウド アランチョ ロザート』(3300円)。

鴨の燻製×フランス・ボルドーのロゼ

『紅茶鴨のスモーク』(650円)。

ボルドー・グラーヴ地区の格付けシャトー『ドメーヌ ド シュヴァリエ』のロゼで、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローが主体。凝縮感がありタンニンの輪郭もはっきりとしていて、赤ワインに近いイメージです。
「こういうタイプはスモークやハムなどに合います。色味が似ているのも相性を探るヒントになるんですよ。鴨には血のニュアンスもありますから、このスパイシーなワインを選びました」。
温かな鴨料理には常温の赤ワインですが、こうした冷たい前菜にはキンと冷やしたロゼと聞いて納得です。

『ロゼ ド シュヴァリエ』(4800円)。

エビのアヒージョ×フランス・ラングドックのロゼ

『ぷりぷり小エビのアヒージョ』(1000円)。

フランス南部、プロヴァンス地方とローヌ川を挟んで向かい合う地中海沿岸の産地のワインです。
「エビやタコ、イカなどの料理を食べるエリアなので、まさに地産地消の組み合わせです」。
ワインを飲んで余韻があるうちに料理をいただくと、さまざまなハーブをまとったエビに清涼感が加わるイメージ。
「ワインの柑橘系のニュアンスが、料理にレモンを搾ったような効果をもたらすうえに、口中の油分を整える役目も果たしていますね」。
グルナッシュとシラーが主体のカジュアルなワインで、2800円という価格も魅力。ロゼワインの入門にはぴったりのペアリングでした。

『マルキ ド ボーラン ロゼ』(2800円)。

最後にロゼワインを家で楽しむ方法もお聞きしました。
「ロゼワインの魅力は、どれも酸味や甘味、コクなどのバランスがよいことです。じつは日本の家庭料理も一品一品、塩や醤油のほかみりんや砂糖を使ったりとバランスよく味付けされていますよね。つまりロゼならどの料理と合わせても外すことはまずないんですよ。だから積極的にご家庭で活用していただきたいですね」。

酒販店やスーパーでも、大変リーズナブルな価格で入手できる『コノスル』や『アルパカ』などのロゼも「1000円未満ですが、十分に美味しいですよ」と藤森さん。ぜひゲットして、冷蔵庫で冷やして味わいましょう!

「スタッフと力を合わせて、日本独自のロゼワイン文化を創っていきたい」と『コノスル』を手にして藤森さん。

VINOSITY magis
東京都千代田区鍛冶町2-9-7 大貫ビル B1F
TEL/03-5577-5575
アクセス/JR神田駅東口より徒歩1分または、都東京メトロ銀座線神田駅3番出口より徒歩1分。
営業時間/月~金11:30~23:00、日15:00~23:00
定休日/土


VINOSITY magisの詳細はこちら

※価格やデータは取材時のもの。価格はすべて消費税を含みます。

さてロゼワインがどのようなワインがご理解いただけましたでしょうか? 肩肘張らずに飲める価格で、料理にも合う。何より美味しいとなれば、日常に取り入れないわけにはいきませんね。チャーミングなルックスでも、日々のワインライフを盛り上げてくれること間違いなしです。

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、営業日・時間などが変更になる可能性があります。お出かけの際は公式HPやSNS等のご確認をおすすめします。

ライタープロフィール

とがみ淳志

(一社)日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート/SAKE DIPLOMA。温泉ソムリエ。温泉観光実践士。日本旅のペンクラブ理事。日本旅行記者クラブ会員。国内外を旅して回る自称「酒仙ライター」。

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