ワインを造る蔵元が増加中! 日本酒蔵元のワインならではの魅力とは
ワインと蔵元の取り合わせには、違和感を持つ人が多いのでは? 「ワインはワイナリーで造られるもの」というのが常識ですが、近年では、日本酒を造る蔵元がワイン造りに挑戦するケースも増えています。ここでは、日本酒造りだけでなく、魅力的なワイン造りでも注目されている蔵元を紹介します。
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ワインを造る蔵元が近年、増加中!
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ワイン造りに挑戦する蔵元が増加している理由と背景
「蔵元がワインを造る」と聞いて、驚く人も少なくないでしょうが、近年、ワイン造りに挑戦する蔵元が増えています。
ワインと日本酒は、どちらも同じ醸造酒。原料や製法は異なるものの、共通する点もあり、ヨーロッパでは日本の清酒が「ライスワイン」とも呼ばれるほどです。
日本酒の海外への輸出が増加するなか、海外で喜ばれる日本酒造りのため、ワイン造りに学ぼうとする蔵元は少なくありません。こうした取り組みを一歩進め、ワイン造りを肌で体得すべく、自らが日本酒だけでなくワイン造りにも取り組む蔵元も次々と登場しているのです。
日本酒とワインのさまざまな共通点
日本酒とワインには、料理とともにたのしむ「食中酒」という共有点があります。日本酒の輸出活性化が期待される一方で、日本人の食卓が洋食化するなか、洋食にも合う日本酒を追求するうえで、蔵元がワインを参考にするのは当然とも言えます。
また、ワインの生産者が重視する「テロワール(産地の気候や土壌などの風土など…)」を参考に、日本酒造りにおいても産地の風土との関わりを見直そうという「日本酒テロワール」を標榜する蔵元も増えています。
このように、ワイン造りに取り組む蔵元が増えている背景には、日本酒造りの現状を打破しようという、新時代の造り手たちの熱意があるのです。
ワイン造りに挑む蔵元の代表格は「醸し人九平次」の蔵元
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ワインから得たインスピレーションで日本酒に革新を起こす
ワイン造りに挑む蔵元として、まず名前が挙がるのが、江戸時代から続く愛知の老舗蔵、萬乗醸造です。
15代目となる現当主・久野九平治氏は、1997年にワイン造りにインスピレーションを得た新銘柄、「醸し人九平次(かもしびとくへいじ)」を開発。自らフランス・パリに売り込んだ結果、三ツ星レストランでも採用されるなど、まずは海外で注目を集めました。
さらに、原料となるブドウの栽培から手掛けるワイナリーのあり方に習い、2010年に蔵元自ら米作りを開始。翌年には自社栽培米のみを使用した日本酒を発売しました。
「醸し人九平次」蔵元によるブルゴーニュ地方でのワイン造り
萬乗醸造の挑戦は、日本酒の枠にとどまりません。“異文化の融合が進化を加速させる”との信念にもとづき、2015年にはフランスのブルゴーニュ地方にワイン醸造所を取得。ワインの本場でワイン造りを実践しています。
萬乗醸造によるワイン造りの歴史は、まだ始まったばかりですが、日本酒とワイン、双方の酒造りを通じて、さらなる高みをめざす蔵元の取り組みに、今後も目が離せません。
愛知の日本酒【醸し人九平次 (かもしびとくへいじ)】世界が認める新時代の日本酒
ワイン造りを行う蔵元は全国に拡大中
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ワインの名産地、長野の蔵元の取り組み
ワイン造りに取り組む蔵元は、山梨と並ぶ日本ワインの名産地、長野にも見られます。
長野県上高井郡の小布施(おぶせ)酒造は、明治以来の歴史を持つ蔵元ですが、ワイン造りに傾倒した4代目当主・曽我彰彦氏がブルゴーニュでの修行を経て帰国し、ワイン造りに邁進。現在では「小布施ワイナリー」として、自社農園のブドウのみを使用した「ドメーヌ・ソガ」シリーズなど、高品質なワインが高い評価を得ています。
「小布施ワイナリー」公式サイトはこちら
地域の果物を活かしたワイン造りを行う蔵元も
ワイン造りに取り組む蔵元のなかには、地元の農家と連携して、地元の名産品を活かしたワイン造りを行っているところも。
札幌の蔵元、日本清酒では、戦後間もない頃、北海道でも最大のブドウ産地である余市氏でワイン造りをスタート。地元の契約農家によって栽培されたドイツ系品種のブドウを使用した「余市ワイン」を造り続けています。
「余市ワイン」公式サイトはこちら
紹介したほかにも、茨城県の木内酒造、滋賀県の大田酒造など、全国には、日本酒造りで培った知見を活かしつつワイン造りに挑戦している蔵元が多々あります。日本酒の蔵元だからこそ生み出せるワインの魅力を、ぜひ味わってみてはいかがでしょうか。