ビオディナミとは? 自然派ワイン(ヴァンナチュール)との関係性やオーガニックとの違いを確認

ビオディナミとは有機農法(オーガニック農法)の一種で、天体の動きや自然界の循環を重視し、土壌や周囲の生態系のポテンシャルを最大限に高める「生体力学農法」とも呼ばれる栽培方法です。ここでは、ビオディナミの概要や、自然派ワインとの関係性、オーガニックとの違い、認証制度などについて紹介します。
- 更新日:
ビオディナミとは、ワインの個性を左右するブドウの農法のひとつ。あの「ロマネ・コンティ」や「ルイ・ロデール」にも採用されている農法として、世界中の注目を集めています。
ビオディナミ(Biodynamie)とは?

RobertJunoy / Shutterstock.com
ビオディナミとは、オーストリアの人智学者ルドルフ・シュタイナー氏が提唱した有機農法の一種です。天体の運行や自然界の循環を重視し、土壌や周囲の生態系の生命力を高めることで、持続可能な農業の実現を目指す、哲学的要素を含む栽培方法とされています。
ビオロジック(有機農法/オーガニック農法)に近いものですが、より厳格な規則が設けられている点が特徴です。
自然派ワインの原料となるブドウの農法のひとつ
世界的に注目を集め、ワインの一ジャンルを築き上げた自然派ワイン。人工的・科学的なものを極力排除して造られるワインのことで、ヴァンナチュールとも呼ばれています。ビオディナミは、自然派ワインの原料になるブドウの代表的な栽培方法のひとつです。

図表作成:たのしいお酒編集部
まずは、自然派ワインに使われる代表的な栽培方法についてみていきましょう。
◇リュット・レゾネ(減農薬農法)
「リュット・レゾネ」は「合理的な対応」という意味をもつフランス語で、化学肥料や農薬などをできるだけ使わずにブドウを栽培する減農薬農法のこと。一般的な農法と有機農法の中間的な位置づけで、栽培方法は生産者に委ねられています。
◇ビオロジック(オーガニック農法/有機農法)
オーガニック農法の総称。化学的な農薬や肥料、除草剤、殺虫剤などを一切使用せず、鶏糞などの有機肥料のみに限定した有機栽培で環境負荷を抑えます。ブドウの収穫は手摘みで行われます。
◇ビオディナミ
ビオロジック農法のなかでも、とくに厳格な農法。オーストリアの思想家で人智学者のルドルフ・シュタイナー氏が提唱した理論に基づき、天体の動きに合わせて農作業を行い、天然由来の特別な調合剤(プレパラシオン)を使用して、土壌の生命力を高めることを重視します。

Francescomoufotografo / Shutterstock.com
ビオディナミは別名「バイオダイナミック」
「ビオディナミ(Biodynamie)」はフランス語で、英語圏の表記で「バイオダイナミクス(Biodynamics)」「バイオダイナミック(Biodynamic)」、またはその農法を指して「バイオダイナミック農法(biodynamic farming)」と呼ばれることもあります。
先述したように、ビオディナミは自然派ワインの原料になるブドウの農法のひとつ。ビオロジックという、いわゆるオーガニック農法の基本を踏襲したうえでルドルフ・シュタイナー氏の思想に基づき、自然界のエネルギーによってブドウがもつ生命力を活性化し、持続可能な生産を目指すというもの。
ユニークな理念や哲学に根ざしているので、農法の特徴やワイン造りへの応用とともにみていきましょう。
【基本理念】
自然・宇宙・人間が調和して生命の循環をつくる。
【哲学/考え方】
◇精神・自然・宇宙を一体としてとらえる
◇土は「生きている存在」で育てる対象
◇植物は宇宙エネルギーを地上に伝える媒介者
◇農場全体を有機的な生命体とみなし、動物・植物・土壌・人の共生を重視
【農法の特徴】
◇農事暦を採用し、月や惑星の動き(天体リズム)に合わせて農作業を行う
◇化学肥料や農薬を一切使わず、天然由来の調合剤(プレパラシオン)を使用
【ワイン造りへの応用】
◇醸造にも自然リズムを尊重
◇人的介入を最小限にし、土壌の個性(テロワール)を最大限に引き出す

kabatyan / PIXTA(ピクスタ)
ビオディナミは宇宙のリズムや自然の力を積極的に取り入れた農法
独自の理念や哲学をもとにしたビオディナミの農法を特徴づけているのは、以下の4つのポイントです。
◆農場(畑)に生息する生命体の維持
単に植物(ブドウの樹)を育てるのではなく、畑や周囲に生息する微生物や益虫を含む生物多様性を重視。生態系のバランス維持しながら、植物が病害や天候によるストレスに強くなる環境を育みます。
◆土壌や植物がもつ生命力の活性化
土壌を改善させ、農場を取り巻く生態系のポテンシャルを高めることで、ブドウの樹などの植物がもつ生命力の活性化を目指します。これによって、持続可能な農業生産が可能に(循環型農業)。
◆プレパラシオン
土壌の活性化には、天然由来の調合剤「プレパラシオン」のみを使用。化学肥料、除草剤、殺虫剤などの農薬は一切使いません。
◆自然のリズムの尊重
月の満ち欠けや惑星・星座の運行に合わせて、作業のタイミングを決定。種まきや剪定、収穫から、瓶詰め、樽に使う木材の伐採まで、農事暦をもとに行います。
ビオディナミワインと自然な農法で造られたワインの違いは?

metamorworks / PIXTA(ピクスタ)
ビオディナミ農法で造られたワインを「ビオディナミワイン」と呼ぶことがあります。
このビオディナミワインは、その他の自然な農法で造られたワインとどう違うのでしょうか。
ビオワインとの関係性
「ビオワイン」とは、有機農法(オーガニック農法/ビオロジック)で栽培したブドウを原料に造られるワインのこと。「ビオ(Bio)」は有機農法を意味するフランス語の「ビオロジック(biologique)」やイタリア語の「ビオロジコ(Biologico)」に由来し、「ワイン(Wine)」は英語。つまり「ビオワイン」という言葉は日本で広まった和製英語で、日本国内では明確な法的定義のない曖昧なカテゴリー。認証を受けなくても「ビオ」と表示される場合があります。
海外では、「ビオ(Bio)」は「有機」の意味で広く使われ、フランスやEU諸国では「Vin Bio(ヴァン・ビオ/有機認証ワイン)として流通しています。アメリカでは「Organic Wine(オーガニックワイン)」と呼ばれるのが一般的です。
「自然派ワイン(ヴァンナチュール/Vin Nature)」と重なる部分もありますが、こちらは有機栽培のブドウを原料に、醸造時に亜硫酸塩(酸化防止剤)の添加物を極力控えるなど、より自然な造りを重視したワインを指します。明確な定義をもつ「ヴァン・ビオ」に対し、「自然派ワイン」は「ビオワイン」と同様に明確な定義がありません。

Kitreel / Shutterstock.com
なお、EU諸国で「ビオ(Bio)」と表示するには、専門機関の認証を受ける必要があります。
有機認証を受けた「ビオ(Bio)」ワインは、ビオロジック農法またはビオディナミ農法で栽培されたブドウを原料とし、認証機関ごとの厳しい規定をクリアしています。
日本における「ビオ(Bio)」は、令和4年(2022年)のJAS改正で有機JAS対象となりましたが、令和7年(2025年)10月より、有機表示規制の対象となりました。今後は、有機JAS認証を受けていないワインが「Bio」と表示すると、「有機」オーガニック」と同様に取り締まりの対象となります。

AJPhotouniverse / Shutterstock.com
ビオディナミワインとオーガニックワインの違い
「オーガニック」とは「有機の」という意味の言葉です。オーガニック農法は化学肥料や農薬を使わず、自然がもつ力を活かした農法や栽培方法のことで、「ビオロジック」とも呼ばれています。
「オーガニックワイン」は、ビオロジック(オーガニック農法)で育てたブドウを原料にしたワイン。一方の「ビオディナミワイン」は、「ビオロジックワイン」のなかでも、ルドフル・シュタイナー氏の人智学に基づく農法を採用したブドウから造られるワインを指します。
ビオディナミワインの味わいと魅力

NPeter / Shutterstock.com
ビオディナミワインの味わいの特徴と魅力についてみていきます。
ブドウの個性や土地の力をダイレクトに感じる味
ビオディナミワインは、化学肥料や農薬を使わずに、ブドウの樹を取り巻く環境のポテンシャルを最大限に引き出して造られるだけあって雑味が少なく、ブドウ本来のピュアな果実味や複雑ながら調和の取れた味わいになる傾向があります。人的介入が少ないぶん、生き生きとした躍動感や生命力、ボリューム感や奥行きが感じられるのも魅力です。
テロワールやブドウ品種の際立つ個性や、土壌の独特なニュアンスをダイレクトに堪能できるのも、ビオディナミワインを味わうたのしみのひとつです。

barmalini / Shutterstock.com
造り手の哲学が反映される“ストーリー性”のあるワイン
自然のサイクルとともにブドウが育つ環境を育むビオディナミは、単なる農法にとどまらない哲学としての側面ももち合わせています。その土地土地で持続可能なワイン造りを行ううちに、造り手の哲学を投影した壮大なストーリー性が息づくのも、ビオディナミならではの魅力といえるでしょう。
機会があったら、効率を重視せず、自然を尊重しながら造られるビオディナミワインを味わい、その土地の息吹や風景、造り手の思いを感じ取ってみてはいかがでしょう。
魅力は多いが、価格は少し高め
ビオディナミワインは、人の手を極力加えず、自然のなかで育まれたブドウで造られますが、醸造は基本的に手作業です。手間暇とコストをかけて造られるうえ生産量が少なく、気候や病気などの影響から収量が落ちることもあるため、一般的なワインに比べると価格は高くなりがち。ブルゴーニュなどの銘醸地の生産者が手がけるビオディナミワインは、1本数万円もする高級ワインも少なくありません。
ビオディナミワインには認証が必要?

Alex Tarassov / PIXTA(ピクスタ)
ビオディナミの認証とは、ビオディナミ農法が厳しい基準と哲学にのっとり、正しく実践されていることを証明するものですが、いずれも民間認証であり、ラベルに認証マークは必須ではありません。詳しくみていきましょう。
ビオディナミワインの認証制度
ワインのラベルに「有機(オーガニック)」と表示するには、日本を含む多くの国や地域においては認証マークが必須です。一方、ビオディナミはルドルフ・シュタイナー氏の哲学に基づく農法であり、厳格な決まりは存在するものの、法律で定められたものではないため、認証マークは必ずしも必要ではありません。
とはいえ、ラベルに有機認証マークに加えてビオロジック認証マークがついていれば、飲み手にとって信頼性が高まり、ワインを選びやすくなるのは間違いないでしょう。
国際的なビオディナミ認証団体をいくつか紹介します。
◆Demeter(デメター/デメテル)
ドイツ最古の民間認証団体。認証を受けられるのは、ビオディナミ農法で造られた有機食品のみ。世界一基準が厳しいことで知られています。
Demeter-International
公式サイトはこちら(英語)
◆ビオディヴァン(Biodyvin)
フランスのビオディナミ生産者組合による団体。独自のガイドラインをもとに認証を行います。
BIODYVIN
公式サイトはこちら(英語)

JP / PIXTA(ピクスタ)
認証マークがなくてもビオディナミ農法実践のおいしいワインがある
ビオディナミワインのなかには、認証マークがなくてもおいしさを堪能できるワインが存在します。ブドウ造りからワインの醸造まで一貫して行うのがビオディナミの基本的な考え方ですが、ルドルフ・シュタイナー氏が掲げた哲学に基づき土壌を育てていくには、数年におよぶ年月が必要になります。
そのうえ、ビオディナミ認証を取得するには、高額な諸費用と煩雑な手続きが必要なため、認証の準備を進めつつ、おいしいワイン造りに挑む生産者も少なくないのです。
日本にも、登美の丘ワイナリーやドメーヌ・ヒデ、ドメーヌ ミカヅキなど、ビオディナミ農法を取り入れたワイナリーが複数あります。隠れた名ワインを探すのも、たのしみのひとつ。機会があったら手に取ってみて、テロワールの個性やストーリー性を感じ取りながら、ビオディナミワインの魅力を堪能してください。
ビオディナミは、世界的なワイン生産者も積極的に実践する持続可能な農法。一般的なワインに比べて生産数が少なく、価格もやや割高ですが、機会があったら手に取って、造り手の哲学や独自性、テロワールの個性に触れてみてください。



















