ワインの注ぎ方、注がれ方。知っておきたいワインのマナー 《シニアソムリエ監修》
ワインには、注ぎ方や注がれ方などさまざまなマナーがあります。もちろん「自由にたのしく」が基本ですが、マナーを知っておけばレトランなど改まったシーンでも臆せずスマートに振る舞えますね。今回はワインボトルの持ち方やワインの注ぎ方、注ぐ順番、量、タイミングなど、ワインに関するマナー全般について紹介します。
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目次
ワインボトルの正しい持ち方
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ソムリエなどは、ワインボトルは片手で持つのが基本です。とはいえ、ボトルは片手で持たなければならないという決まりはないため、慣れていない場合は両手で持っても大丈夫です。
ボトルを片手で持つ場合は、底のくぼみに親指を入れて残りの4本の指でボトルの外側を支える持ち方と、5本の指でボトルの底部をつかむ持ち方があります。両手を使う場合は、もう一方の手でボトルのネックあたりを支えます。
冷たく冷やしたワインボトルを持つときは、手の温度がボトルに伝わってワインが温まるのを防ぐため、ボトルに清潔なナプキンをあててから支えるといいですね。
ボトルを持つ際は、ラベルが上にくるように持つのもポイントです。ラベルを上にすることで、ワインを飲む人(注がれる人)に銘柄が分かると同時に、雫でラベルが汚れるのを防げます。
ワインを注ぐ方法
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ワインを注ぐ際は、グラスをテーブルに置き、グラスから数センチメートル上のところからゆっくり静かに注いでいきます。これは、ワインはデリケートな飲み物であるため、あまり勢いよく注ぐと味わいが損なわれることがあるためです。
また、ワインボトルの底には成分が結晶化した「澱(おり)」が沈殿している場合もあるため、「澱」が舞ってグラスに入らないようにするためにも、ていねいに注ぎましょう。
注ぎ終わりには、ボトルの口を少し上に向けてから、ボトルをやや回転させ、ひねるようにして持ち上げるのがポイントです。これにより、ボトルの口からワインが垂れるのを防ぐことができます。ワインの雫が垂れそうなときは、清潔な布や紙ナプキンなどでサッと拭うとスマートです。
ワインを注ぐ順番
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ワインを注ぐ順番はレディーファーストが基本で、女性から先に注いでいきます。女性が複数いる場合は、年上の人から順に注いでいくのがマナーです。
ただし、高級レストランなどでテイスティングをする際はホストである男性がテイスティングを行うため、まずはホストの男性に少量のワインが注がれます。テイスティング後は、先に女性のグラスにワインを注いでから、改めて男性のグラスにワインが注がれる流れとなります。
ワインを注ぐ量
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グラスに注ぐワインの量は、グラスの3分の1程度が目安です。ワインをグラスになみなみと注がずスペースを空けておくことで、グラス内に香りをためることができ、より香りをたのしみやすくなります。また、グラスをくるくると回し、ワインを空気に触れさせて香りと味わいを高める「スワリング」を行うこともできます。
ワインを注ぐ相手が複数いる場合には、全員の量を同じくらいにするのもポイントです。
ワインを注ぐタイミング・注ぎ足すタイミング
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ワインを注ぐ順番は、前述のとおり、レディーファースト、年功序列が基本です。しかし、パーティーなどでワインを飲んでいる人にお代わりを注ぎ足す際には、どのようなタイミングで注げばよいのでしょうか。
ワインの注ぎ足し方は、フランス式とイギリス式で異なります。フランス式ではワインをすべて飲み干す前、グラス内のワインが少量になったタイミングで継ぎ足し、イギリス式ではグラスが空になってから注ぎ足します。
日本では、どちらの方法が正しいという決まりはありません。みんながたのしく過ごせるよう、状況や相手に合わせて工夫するしかないようです。
スパークリングワインの注ぎ方
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スパークリングワインは泡があるため、スティルワインとは注ぎ方の手順やポイントが異なります。まず、スパークリングワインはよく冷やしてから栓を開けるのが基本です。
スパークリングワインの瓶内には高い圧力がかかっているため、持ち運んだ直後や、とくに夏場など気温が高い状態で常温のまま開けてしまうと、中身が勢いよくあふれ出したり、コルク栓が飛んでしまったりする恐れがあります。また、中身があふれるのを防ぐためには、抜栓の際にボトルを垂直ではなく、斜めに保つようにするのもポイントです。
抜栓したら、ゆっくり静かに注いでいきましょう。スパークリングワインでは、一般的にフルートグラスと呼ばれる細長いグラスを使用します。まずグラスの8分目くらいまで注ぎ、泡立ちが落ちついて2~3分目くらいまで減ったら、今度は泡が立たないように静かにゆっくりと6分目をめざすように注ぎます。
ワインを注ぐマナー
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ワインを注ぐ際には、ボトルの持ち方や注ぐ手順のほかにも、知っておきたいマナーがあります。レストランやパーティーなどでスマートに振る舞えるよう、基本的なマナーを知っておくと安心ですね。
女性はワインを注がない
フランスをはじめとする国際的なマナーでは、女性がワインを注いだり、お酌をしたりするのは望ましくないとされています。ソムリエか、ソムリエがいない場面では同席する男性が率先して注ぐようにします。
高級レストランでは自分でワインを注がない
カジュアルにワインをたのしむ居酒屋やファミレスなどは別として、ソムリエがワインを注いでくれるレストランなどでは、一般的にワインを手酌したり同席の相手に注いだりするのは望ましくないとされています。ソムリエや店員さんが気づかない場合には、目で合図するなどして注いでもらいましょう。
なお、お代わりを注ぎに来てくれたソムリエや店員さんに「もう結構です」という意思を伝える際は、声に出さずに、グラスの縁に軽く指を置いたり、グラスの上に手をかざしたりする動作で伝えることができます。少しだけ飲みたい場合などは、「少なめでお願いします」など希望を伝えても問題ありません。
気をつけたいワインのマナー
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ワインを注いだり、注がれたりする状況以外でも、ワインをたのしむ際にはさまざまなマナーがあります。さまざまなシチュエーションでワインをスマートにたのしめるよう、確認しておきましょう。
ワイングラスの持ち方
ワイングラスを持つ際、日本ではグラスの脚(ステム)部分を持つ人が多くみられますが、国際的にはワイングラスのボウル部分を持つ場合も多いようです。
日本で主流のステム部分を持つ持ち方には、手の温度がワインに伝わりにくいというメリットがあり、特に冷たい状態を保ちたい白ワインを飲むときや、赤ワインでも室温が高いときなどに、特に合理的な持ち方と言えます。
乾杯の仕方
ワインで乾杯をするときは、グラス同士をぶつけてはいけません。ビールのジョッキなどとは異なり、多くのワイングラスはとても繊細なため、ぶつけると破損してしまう恐れがあるためです。
ワインで乾杯する際は、軽くグラスを持ち上げて、アイコンタクトをして行いましょう。
ワインをたのしむ際は香りに注意
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ワインは味わいだけでなく香りも大きな魅力であるため、ワインをたのしむ場では香水など香りの強いものは控えるのがマナーです。
香水はつけないか、つける場合にも香りの弱いものを足元だけにつけるなど、周囲の人に十分配慮しましょう。香水のほか、たばこなども控える必要があります。
ワインの注ぎ方などのマナーを知っておけば、レストランなどでもスマートにワインをたのしむのに役立ちます。とはいえ、ワインについてのマナーは、絶対にこうしなければならない、というものではありません。こだわりすぎずに、みんながたのしめるのがいちばんですね。