ワインの個性を決める!酵母の種類とその役割を解説
ワインの個性を決める重要な要素のひとつである、酵母の種類とその役割を詳しく解説。自然酵母と培養酵母の違いや、それぞれの特徴がワインの風味にどのように影響するのかをご紹介します。
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ワイン酵母、種類はたくさん、おもな役割は発酵
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ワイン造りにおける酵母の役割は「アルコール発酵」
ワインとは、酵母の力でブドウ果汁を発酵させて造るお酒です。
酵母は、目に見えないほどのサイズの微生物ですが、糖を分解して、炭酸ガスとアルコールを生成するはたらきがあり、これが「アルコール発酵」と呼ばれます。
ワイン造りでは、原料となるブドウの果実に含まれる糖分を、酵母の力でお酒にします。酵母があって、はじめてワインが生まれると言えるでしょう。
酵母は自然界に数千種類も存在する
酵母は、ワイン造りだけでなく、ビールや日本酒、ウイスキーなどのお酒、さらには味噌や醤油、チーズなどの発酵食品造りでも重要な役割を果たします。
そもそも、酵母の種類は驚くほど多く、自然界に数千種類も存在すると言われているほど。その種類によって役割が異なり、ワイン造りに使われる酵母は「ワイン酵母」と呼ばれます。
ワイン酵母は、もともとワインの原料となるブドウに付着していて、ブドウの果汁を放置しておくだけでも酵母が自然にアルコール発酵を進めますが、それではなかなか良質なワインは造れません。酵母のはたらきをいかにコントロールするかが、各ワイナリーの腕の見せ所と言えます。
ワイン酵母の種類は大きく2つ
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ワイン酵母の種類、自然酵母
ワイン酵母には、大きく2つの種類があります。ひとつは「自然酵母」で、ブドウの果皮などに、もともと付着している野生の酵母のことです。
自然酵母のはたらきにより、収穫したブドウを放置しておくだけでも、自然にワインが造られます。ワインの発祥時から活躍してきた、ワイン造りの原点とも言える酵母です。
ワイン酵母の種類、培養酵母
ワイン酵母のもうひとつの種類が「培養酵母」です。自然に存在する自然酵母と異なり、酵母メーカーなどが純粋培養した酵母で、ワイン造りの際に、ブドウまたはブドウ果汁が入ったタンクに加えて発酵させます。
ワイン酵母、自然酵母と培養酵母どちらがよい?
ワイン酵母のうち、「自然酵母」と「培養酵母」のどちらがよいワインを造れるかは、一概には言えません。
自然酵母はブドウの生育過程で果皮に棲み着いたものなので、産地の気候風土や個性をかなり重要視するワイナリーは、こちらを選ぶ傾向が強いようです。ただし、ワインに適しない雑菌が混ざっていたり、発酵力が強くなかったりといったリスクもあります。
これに対し、培養酵母は選び抜かれた菌種で、すでに増殖させたものを添加するため、発酵力も強く、ワインの味も質も安定しやすくなります。
このように、自然酵母と培養酵母、どちらを選ぶかは、造り手の、そのワイン造りに対する姿勢や思想・哲学に委ねられていると言えます。
ワイン酵母の種類がワインの個性に大きく影響
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ワイン酵母の種類はグループ分けされて命名
ワインを発酵させる酵母には、自然酵母、培養酵母という大きな括りだけでなく、遺伝子学的な解析などから、いくつかのグループに分類されています。分類された各グループに、さらに多くの個別の品種が存在するため、酵母の種類はとても多いのです。
ワイン酵母の種類は産地が変わると異なる
ワイン酵母、とくにブドウの果皮などに付着する自然酵母は、ブドウの産地によって異なる特徴を持っています。
酵母などの微生物の種類は、気候や土壌などで異なります。ブドウ畑ごとの環境に順応した酵母が住みついているため、産地ごとに個性あるワインが造られているのです。
ワイン酵母の働きが、ワインの味と風味に個性を生み出す
ワイン酵母がブドウをアルコール発酵させる過程で、アルコール以外にもさまざまな物質を生成します。どんな物質を生成するかは、ワイン酵母の種類によって異なるため、酵母によってワインの風味も味も大きく変化します。
ワインの味わいはブドウの品種や質によって骨格が決まりますが、酵母の働きによっても個性が変わるのです。
ワインは酵母の働きによって「お酒」になります。ワインの複雑な味と香りも、酵母によって生まれるもの。ワインを味わうときはぜひ、思い出してみてくださいね。