ビールと微生物、その知られざる関係を探る

ビールと微生物、その知られざる関係を探る
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「ビールと微生物の関係」と聞くと、なんだか物々しい感じがするかもしれませんが、ここで言う「微生物」とはビール造りに欠かせない「ビール酵母」のこと。今回は、「ビール酵母」と呼ばれる微生物のはたらきや、その発見の歴史、さまざまな種類などを紹介します。

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微生物は、ビールに限らずお酒造りに欠かせない存在

微生物は、ビールに限らずお酒造りに欠かせない存在

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微生物「酵母」は、お酒造りに不可欠な存在

「酵母」とは、直径が1000分の1ミリ単位の目に見えない極小の微生物で、「イースト」とも呼ばれます。
酵母は、原料に含まれる糖分をアルコールと炭酸ガスに分解する「発酵」と呼ばれるはたらきをします。
ビールだけでなく、ワインや日本酒、ウイスキーなど各種のお酒、さらには味噌や醤油などの発酵食品はすべて、こういった酵母による発酵のはたらきから造られています。

ビール造りの要となる微生物「ビール酵母」の働き

酵母のなかでも、とくにビール造りに用いられるものが「ビール酵母」と呼ばれます。
ビール酵母は、ビールの主原料となる麦芽とホップ、水をもとに造られる麦汁の糖分を、アルコールと炭酸ガスに分解する働きをします。同時に、さまざまな副生成物を生み出し、ビールの味や香りにも大きな影響を与えます。
同じ酵母であっても、その日の状態や環境によってはたらき方が変わり、ビールの仕上がりに大きく影響します。このため、酵母のはたらきをいかにコントロールするかが、ブルワーの腕の見せ所となっています。

ビールを造り出す微生物「酵母」の歴史

ビールを造り出す微生物「酵母」の歴史

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ビール酵母による発酵は神秘のチカラ

ビールの歴史は古く、紀元前8000~4000年頃の古代メソポタミア時代にさかのぼると言われています。人類はそれだけ古くから、目には見えない小さな微生物「酵母」のチカラを借りてビール造りを行ってきました。
しかし、当時の人々はビール酵母の存在を知っていたわけではありません。近代になるまで「上手にビールができるのは神の恵み」と言われたように、ビール酵母による発酵のメカニズムは、人々にとっては神秘的なものだったのです。

酵母の発見と、そのはたらきの解明

ビール酵母は、1680年にオランダの科学者・レーヴェンフックによって、その存在が確認されました。とはいえ、その時点では酵母がビール造りにおいてどんなはたらきをするかは不明でした。
その後、1876年にフランスの微生物学者・パストゥールが酵母のはたらきを解明し、雑菌の繁殖を防ぐ「低温殺菌法」を発明。続いて1883年に、デンマークの微生物学者で、カールスバーグ研究所の研究者であるエミール・クリスチャン・ハンセン氏によって発明された「酵母の純粋培養法」などを経て、酵母を使った近代的なビール造りが確立されました。
その後、現在まで世界中でさまざまな酵母が研究され、よりビール造りに適した酵母の培養が進められています。

「カールスバーグ」は世界中で愛されるデンマーク発のビール

ビールを造り出す微生物「酵母」のさまざまな種類

ビールを造り出す微生物「酵母」のさまざまな種類

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2種類の代表的なビール酵母

ビール酵母には、さまざまな種類がありますが、なかでも代表的なのが、エールビールなど上面発酵のビール造りに適した「上面発酵酵母」と、ラガービールなど下面発酵のビール造りに適した「下面発酵酵母」です。それぞれの特徴を簡単に紹介しましょう。

【上面発酵酵母】

「上面発酵酵母(エールイースト/エール酵母)」は、発酵温度が15~25度と常温に近く、発酵期間は3〜5日と短いのが特徴です。副生成物が多く、フルーティーで香り豊かなビールを造り出します。

【下面発酵酵母】

「下面発酵酵母(ラガーイースト/ラガー酵母)」は、発酵温度が10度ほどと比較的低温で、発酵期間は6~10日と、上面発酵酵母よりも長いのが特徴です。すっきりとしたキレあるビールを造り出します。

数千種類以上にもおよぶ酵母の多様な世界

紹介した「上面発酵酵母」と「下面発酵酵母」にもたくさんの種類があり、よりおいしいビール造りをめざして、世界中で新たなビール酵母の研究が進められています。その数は、なんと数千種類を超えるとまで言われています。
こうした研究によって、いずれ、これまでにない新たなビール酵母が発見され、今まで味わったことのないビールをたのしめる日が訪れるかもしれません。

目には見えない微生物、酵母のはたらきがあってこそ、おいしいビールをたのしむことができます。そう思えば、「ビール酵母」という自然が造り出す神秘のチカラに感謝の気持ちがわいてきませんか。

おいしいビールができるのは、酵母=イーストのおかげという事実

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