イギリスワイン復活の歴史を知ろう!
イギリスのワイン文化には、長い歴史があります。ワインの生産国としてだけではなく、消費国としても世界各地のワイン産業の発展に貢献してきました。最近は、スパークリングワインの産地としても脚光を浴びている、イギリスワインの歴史を紹介しましょう。
- 更新日:
イギリスワインは意外に歴史の長いワイン
Gill Copeland/ Shutterstock.com
イギリスがワイン造りで歴史のある国だということは、あまり知られていないかもしれません。
古い文献によれば、イギリスでワイン造りが本格化したのは、11世紀のこと。イングランド王ウイリアム1世がノルマン朝を開いた際、ヨーロッパ大陸からワイン造りに長けた聖職者を伴ったと言われています。
イギリスに移住した聖職者は、修道院でブドウを栽培し、ワイン造りを行いましたが、その後、16世紀の宗教革命によってカトリックの修道院や教会は解体されることに。これにともなってワイン造りも廃れ、イギリスのワイン産業は長い冬の時代を迎えます。
これに加えて、イギリスでワイン造りが長らく低迷した理由のひとつに、ブドウが育ちにくい寒冷な気候があります。
ところが近年、地球温暖化の影響なのか、ブドウ栽培に適した地域が、イギリスの南部を中心に広がっています。
もともと比較的温暖だった南部では、第二次世界大戦後の20世紀後半からワイン造りが復興していましたが、近年の気候変動が幸いし、現在、ワイン産地として世界の注目を集めるようになっています。
イギリスワインの歴史が育む豊かなワイン文化
MACH Photos/ Shutterstock.com
イギリスは、ワインの一大消費地として、ヨーロッパを中心に世界各地のワイン産業を盛り立ててきた歴史があります。
よく知られているのが、ワインの本場フランス・ボルドーとの関係。12世紀半ば、ボルドーを支配していたアキテーヌ公国のエレオノール女公が、後のイングランド王ヘンリー2世と結婚。イギリス領となったボルドーでは、イギリスへのワインの供給が拡大し、ワイン産業が大きく発展します。
14世紀以降は、イギリスとフランスが対立した百年戦争の影響もあり、イギリスは、スペインやポルトガルなど、フランス以外の国からワインを調達することになります。
そのなかで生まれたのが、ポルトガル北部特産の「ポートワイン」。その起源には諸説ありますが、一説にはポルトガルがイギリスにワインを運ぶ際、風味の劣化を防ぐため、ワインにブランデーを加えたものが始まりだと言われています。
イギリスがワインの歴史に与えた影響は、ヨーロッパだけにとどまりません。19世紀、オーストラリアにワイン造りの技術を持ち込んだのもイギリス人なのだとか。
イギリスは、世界のワイン産業の発展に大きな役割を果たし、豊かなワイン文化を育んできたのです。
歴史あるイギリスワインが再び注目される理由
Juan Nel/ Shutterstock.com
イギリスのワイン産業は、現在、同国の歴史のなかでかつてなかったほどの活況を呈しています。その大きな原動力となっているのがスパークリングワインです。
1997年に開催されたワインの国際コンクールで、イギリスのスパークリングワインが金賞に輝いたのを機に、続々と質の高いイギリス産スパークリングワインが誕生しているのです。
イギリスで優れた品質のスパークリングワインが登場している大きな理由が、一大産地であるイギリス南部の環境です。
その特徴である白亜質石灰岩の土壌と冷涼な気候は、高級スパークリングワイン「シャンパン(シャンパーニュ)」の産地、フランス・シャンパーニュ地方とそっくりで、スパークリングワインに適したブドウ品種の栽培に絶好です。
イギリス産スパークリングワインの大きな魅力のひとつが長期熟成です。スパークリングワインの製法はさまざまですが、このうち「シャンパーニュ方式」では、ワインを瓶に詰めて二次発酵させた後、しばらく熟成させます。フランスの場合、一般的なスパークリングワインの熟成期間は9カ月ですが、イギリスには5年間熟成させる銘柄も。
熟成をたのしむというワイン文化や造り手のこだわりも、イギリスワインへの世界的な評価につながっているのでしょう。
イギリスのワイン文化は、各国のワイン産業の歴史と深く関係しています。ワインをたのしむ際、その産地の背景にある物語にも目を向ければ、より味わい深く感じられるのではないでしょうか。