ワインの個性を引き出す“酵母”の存在

ワインの個性を引き出す“酵母”の存在

ワインや日本酒だけではなく、私たち日本人が昔から親しんできた味噌や醤油、更にはパンやチーズを作るのにも必要な酵母。酵母は土の中や水の中、植物の葉・花・果実の表面、哺乳類・鳥類などの皮膚や消化管などにも住んでいる神秘的な微生物です。今回は、そんな酵母がどの様にしてワインと関わっているかを紹介していきます。

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ワインの製造に欠かせない酵母

Federico Rostagno/ Shutterstock.com

ワインの製造というと、どんな光景を思い浮かべるでしょうか? ワインは、あらゆる酒類の中でもっとも単純なメカニズムで造られています。たとえば日本酒の原料である米とは異なり、ブドウはそれ自体にアルコール発酵の原料となるブドウ糖を多く含むので発酵が容易に起こりやすく、原則的には、人間の手を借りずとも自然発生的に酒に変化します。ただしブドウ糖そのものだけでは発酵は出来ないので、発酵させるには酵母が必要です。


酵母はアルコール発酵の過程で必要となり、どの酵母が発酵を担うかによって、ワインの個性が変わりうるということになります。

自然酵母と培養酵母

Rattiya Thongdumhyu/ Shutterstock.com

「酵母」といってもその種類は驚くほど多く、自然界に存在する酵母の種類は数千を超えるといわれています。この数千種類の酵母のすべてがワインの発酵に関わるわけではなく、そのうちの限られた種類の酵母がワインのアルコール発酵を担っています。

ブドウの果皮などには元々酵母が生息しており、昔からワインではその「野生」の酵母が用いられてきました。そのため腐敗果など雑菌が多いブドウで醸造したり、何らかの理由で自然(野生)酵母がうまく働かなかったりする場合には、ワインの質が落ちたり、ワインにならなかったりする事もありました。

そこで開発されたのが培養酵母です。培養酵母だと造り手が目指す味や、原料とするブドウに合った種類の酵母を前もって選べるので味や質が安定したワインが出来上がります。

アルコールと酵母の関係

Viacheslav Rubel/ Shutterstock.com

ブドウの果汁をワインというお酒に変化させるのは、前述したように酵母の働きによるものです。この酵母はブドウの果汁に含まれる糖を分解して、炭酸ガスとアルコールを作ります。この事は、「酵母によるアルコール発酵」と言われ、1860年にフランスの細菌学者ルイ・パスツールによって発見されました。

酵母菌は、ブドウ糖をエサにして生息しているので、ブドウ糖が多ければ多いほどたくさん働き、反対にエサになるブドウ糖が少なければその活動は遅くなります。ワインのアルコール度数は10~13度が一般的なので、酵母菌にたくさん働いてもらわなければこのアルコール度数に到達しません。つまり、大切なのはブドウの糖度であるともいえますね。

ワイン農家の人たちはワインにもっとも適した上質なブドウを作り上げるために、収穫を遅らせてブドウの糖度を上げたり、雨が降ってブドウが水っぽくならないうちに収穫したり、収穫したブドウを陰干しして水分を飛ばし糖度を上げたりと、いろいろな工夫をしています。

同時に発酵をどのくらい続けるかで甘口や辛口の違いが出ます。早めに発酵させるのをやめると糖分が多く残って甘く、アルコール度数の低いワインとなり、長く続ければアルコール度数の高い辛口のワインになります。酵母が糖分をどれだけ食べるかで出来上がるワインの味わいが変わるのです。

目に見えないけれど、私たちの生活に欠かせない酵母。その神秘的な微生物の魅力をワインという形で感じ取ってみてください。

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