ワインを“寝かせる”意味とは?ワインの飲みごろを知る
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ワインの飲みごろはどんなところで決定する?
ご飯は炊きたて、牛乳は搾り立てがおいしいですが、ワインは必ずしも出来立てがおいしいとは限りません。むしろ、出来立てのワインは渋味や酸味が強くて飲みにくい事が多く、熟成するにつれておいしくなる事が良くあります。とはいえ、いつが飲み頃というのは明確に断言できるわけではありません。それは、ワインの産地や品種、ヴィンテージそして生産者によって大きく異なり、また、ワインの保存状態によっても変わるからです。単に寝かせて熟成させれば良いというものではなく、数十年経って開けてみたらスカスカで全く飲めなくなっていたという事も珍しくはありません。
同じワインでも当たり年のヴィンテージのものは飲み頃に達するのが遅く、平年並みのヴィンテージのものは飲み頃が早く訪れます。
ワインは農作物である以上、ブドウの生育に影響を与える気温や雨量などの気象条件による違いがあり、毎年様々に出来具合が変わっていきます。天候に恵まれ収穫量も十分に取れた年が「当たり年」と呼ばれる訳ですが、良い年ばかりが続いてもブドウの木自体が疲れてしまうので、バランスが必要になってきます。
フランスでは「良い年のワインには太陽の影響が多く、あまり良くなかった年には月の影響が多く見られる」という言い方をする事があります。どんな出来事であっても、そのワインにとって造られた意味があるということ。だからこそ、ワインはおもしろく奥深いのです。
赤ワインの味わいによる飲みごろ
一般的にボルドーの特級クラスのワインの様に、渋味が強く酸味の豊かなワインは酸化に強くゆっくり熟成するため、飲み頃は10〜30年以上という長い年月が経ったころであることが多いものです。一方、ボージョレーヌーヴォーの様に渋味が少なくフルーティーな味わいのワインは、半年くらいで早めに飲んでしまうのが良いでしょう。
長期熟成させる為にはワインセラーでの保存が好ましいですが、ワインセラーがない場合はワインが嫌う「光」「温度変化」「乾燥した場所」「振動」から避けるため、押し入れや、夏場は冷蔵庫の野菜室で香りが移らない工夫をして保存することをおすすめします。そうはいっても、やはり長期熟成をさせるのであればワインセラーの購入が一番です。
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白ワインの味わいによる飲みごろ
白ワインは赤ワインと比べて熟成させるという感覚が比較的薄い印象がありますが、もちろん熟成させた方がおいしく味わえるワインもあります。
さっぱりと酸のしっかりした辛口タイプのソーヴィニヨン・ブラン種やリースリング種の軽めのワインは約3年以内に飲んでしまうのが適しているのに対し、しっかりと樽熟成されたブルゴーニュのモンラッシェやムルソーなどシャルドネ種から造られるワインは、飲み頃が20年以上先ということもあります。
また、同じリースリング種でも貴腐ワインなど甘口ワインの多くは酸味が大変豊かで糖分が非常に多いため、中には50年以上長持ちするものもあります。
世界三大貴腐ワインと呼ばれるフランスのソーテルヌ、ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ、ハンガリーのトカイワインは飲み頃が平均して20年以上といわれています。
購入したワインを早く飲みたいという気持ちはなかなか抑えきれないものですが、そのワインをいちばんおいしく飲むためには多少の知恵と我慢が必要です。
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