貴腐ワインとは? 高価な甘口ワインの味わいやおすすめの飲み方、世界三大貴腐ワインも紹介!
貴腐ワインは貴腐ブドウ(貴腐葡萄)から造られる極甘口のワイン。独特の芳醇な香りと濃厚な甘味で、ワイン愛好家を魅了しています。今回は、貴腐ワインの特徴や貴腐ブドウができる条件、高価な理由、世界三大貴腐ワインの特徴、飲み方などについて紹介します。
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甘美な甘さを持つ貴腐ワインについて、知っておきたい特徴や魅力をチェックしていきます。
貴腐(きふ)ワインは甘口のデザートワイン
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「ワインの帝王」とも称される貴腐ワイン。その原料となる貴腐ブドウについてみていきます。
貴腐ワインは極めて糖度が高い貴腐ブドウで造られる
貴腐ワインとは、貴腐菌(ボトリティス・シネレア)と呼ばれるカビの働きによって糖度が高くなったブドウ(=貴腐ブドウ)を原料に造られるワインのこと。フランス・ボルドーのソーテルヌ地区、ドイツのモーゼル地方とライン地方、ハンガリーのトカイ地方は、世界三大貴腐ワインの産地として有名です。
貴腐ブドウは一般的なブドウと比べて甘味の強さが特徴ですが、その理由は貴腐菌がブドウの果皮を溶かして穴を開けることで、果実内の水分が蒸発して糖の濃度が高まるため。また、貴腐菌が糖や酸を分解・代謝するときに、独特の芳香が生まれるのも特徴です。
貴腐ワインが、凝縮された甘味と独特の豊かな香りや味わいを持つのは貴腐ブドウの特徴によるもので、その唯一無二の個性が世界中のワインラヴァーを魅了しています。
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糖度の高い貴腐ブドウが育つ条件
貴腐ブドウは、ブドウに貴腐菌をつければできるものではなく、ある一定の条件が整っていなければ作ることはできません。たとえば、湿度の高い環境下でブドウに貴腐菌がつくと、灰色カビ病が生じて腐敗してしまいます。また、ほかのカビ菌と共生して、ブドウに不快なカビ臭がつくこともあります。
貴腐ブドウ作りに適した環境は、日照量が多く乾燥している場所。ただ、乾燥しすぎると貴腐菌がうまく繁殖しないので、適度な湿度も必要です。そのため、夏は晴天の日が多く、9月から収穫までの約1カ月間については、夜間は湿度が高くて翌朝に霧が立ち、日中は晴れる場所が理想的とされています。
そうした環境で、貴腐菌が特定の熟したブドウに付着すると、菌糸がブドウの果皮に穴を開けます。その後、乾燥した天候が続いてブドウの水分が蒸発すると、樹についたまま干しブドウのような状態になります。これが貴腐ブドウで、極上甘口の貴腐ワインの原料となります。
ただし、適度な日照量と湿度がそろっている地域でも、毎年同じ条件が整うわけではありません。その年の自然条件に左右されるため、よい貴腐ブドウができなかった年は、貴腐ワイン造りを断念するワイナリーもあります。貴腐ブドウ作りの難しさが、貴腐ワインの希少性を高めているといっても過言ではないでしょう。
貴腐ワインが高価な理由
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貴腐ワインは、一般的に高価なワインとして知られます。その理由について、紹介します。
貴腐ブドウの栽培や収穫に手間がかかる
貴腐ブドウ作りはとても難しく、手間暇がかかります。栽培は自然条件に左右される部分も大きいですが、当然ながらすべてを自然に委ねるというものではなく、貴腐菌の繁殖状況を念入りに確認するなど緻密な管理が必要です。
また収穫時には機械は使わず、厳選したものだけをていねいに手摘みします。そして収穫したブドウの選果も、徹底的に行われます。
こうして集められた貴腐ブドウは圧搾機にかけられますが、水分量が少ないので通常よりもプレスに時間がかかるうえ、得られる果汁はごくわずか。必然的に少量生産になり、生産コストが高いため貴腐ワイン自体も高価になります。
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貴腐ワインは醸造にも気が抜けない
貴腐ワインは、基本的には白ワインと同じ醸造方法で造られますが、通常の白ワイン造りの何倍もの手間がかかります。
発酵時、貴腐ブドウには貴腐菌のほかにもさまざまな微生物が付着しているため、亜硫酸をやや多めに使うなどしてそれらの活動を抑える必要があります。また、貴腐ブドウは糖度が高くて発酵が進みにくいため、ゆっくりと長い時間をかけて発酵させなければなりません。
ワインの場合、一般的に酵母による発酵はアルコール濃度が約14~15%になると自然に止まり、発酵しきれなかった糖分がワイン中に残ることで甘口に仕上がります。または、甘口に仕上げるために、途中で発酵を止める場合もあります。ただ、ワイン中の糖分が多いと、再発酵したり変質したりすることもあるので、亜硫酸を加えるなど活動を抑えるための処理も必要です。
このように、貴腐ワインは醸造から瓶詰めまで、さまざまな手間をかけて造られているため、一般的な甘口ワインよりも価格が高めになります。
ヴィンテージものはさらに高価
一般的なワインよりも手間暇をかけて造られる貴腐ワインは、ヴィンテージものともなるとさらに高価になります。とくに当たり年のヴィンテージの需要は高く、100万円近い高値で取り引きされることもあります。
なかでも圧倒的な人気を誇るのが、100年もの超長期熟成にも耐えうるといわれるフランスのソーテルヌ。過去には200年以上前に造られたソーテルヌの「シャトー・ディケム」が、オークションで1本1,000万円ほどの高値で落札されました。
飲む人を魅了する貴腐ワインの味わい
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貴腐ワインは、高貴な琥珀色と芳醇な香り、濃厚な甘味が特長です。「貴腐香」と呼ばれる独特な香りを持ち、ハチミツやドライフルーツを想わせる芳香に魅了されます。
甘口といってもただ甘いだけでなく、しっかり酸味のあるタイプもあり、バランスのとれた奥深さをたのしめるのも魅力。上質な貴腐ワインを口にすれば、とろっとした舌触りと甘美な味わいに酔いしれるはずです。
世界三大貴腐ワインの種類
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ここでは、世界三大貴腐ワインについて、それぞれの特徴を紹介します。
ソーテルヌ(フランス)
貴腐ワインのなかでも有名なのが、フランス・ボルドー地方のソーテルヌ地区で造られている「ソーテルヌ」。なかでも前述した「シャトー・ディケム」は、1855年パリ万国博覧会におけるソーテルヌおよびバルサックの格付けにて、最上級の「プルミエ・クリュ・シュペリュール」に選出された唯一の銘柄として知られています。
ソーテルヌ地区は、ボルドー南東のガロンヌ川左岸と支流のシロン川を挟んだ地域にあり、ソーテルヌ村を中心に、バルサック、ボンム、ファルグ、プレニャックの5つの村で造られたものだけが、「A.O.C.ソーテルヌ」を名乗ることができます。なお、「A.O.C.バルサック」はバルサック村のみに認められた呼称で、バルサック産の貴腐ワインはどちらのA.O.C.も名乗れます。
「ソーテルヌ」の原料としては、ボルドー地方が原産といわれているセミヨンを筆頭に、ソーヴィニヨン・ブラン、ソーヴィニヨン・グリ、ミュスカデルの4種類の白ブドウ品種のみが認められています。とはいえ、「ソーテルヌ」の大半は、果皮が薄く貴腐化しやすいセミヨンが主体となっています。
トロッケンベーレンアウスレーゼ(略称TBA・ドイツ)
ドイツワインは、最上級ワイン、上質ワイン、地酒、テーブルワインの4クラスに分けられています。最上級ワインに分類される「プレディカーツヴァイン」には6つの肩書き(等級)があり、そのうちの最上級に格付けされるのが、「トロッケンベーレンアウスレーゼ(貴腐ワイン)」です。等級は、収穫時のブドウの果汁糖度によって決まるため、「トロッケンベーレンアウスレーゼ」はもっとも糖度が高いワインとなります。
「トロッケンベーレンアウスレーゼ」のなかでも有名なのが、モーゼル地方で造られている「エゴン・ミュラー」です。ドイツワインの最高峰との呼び声が高い銘柄で、世界中のワインラヴァーに絶賛されています。
トカイ・アスー(ハンガリー)
ハンガリーの北東部、トカイ地方で造られているワインを「トカイワイン」といい、そのなかでも貴腐ワインの「トカイ・アスー」は高い評価を得ています。トカイの貴腐ワインは、フランス国王ルイ14世に「王のワインにして、ワインの王」と称賛されたことでも有名です。
ハンガリーには、ワイン法による独自の格付けがあり、その最上クラスとなるのがD.H.C.。「トカイ・アスー」もD.H.C.の対象とされていて、この表示のあるものは品質の高さが保証されています。
トカイワインの原料の主体は白ブドウ品種のミルトン種で、ハールシュレヴェリューやサルガ・ムシュコタイ(イエローマスカット)をブレンドするのが一般的です。もちろん単一品種で造られるものもあり、「トカイ・アスー」のなかでも貴腐ブドウ100%で造られた「ナトゥールエッセンシア」は、品質の高さと希少性から「一度は飲んでみたいワイン」として憧れの的になっています。
貴腐ワインのおすすめの飲み方
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最後に、貴腐ワインのおすすめの飲み方や、貴腐ワインに合う料理などを紹介します。
貴腐ワインは食後にぴったり
デザートワインとも呼ばれる極甘口の貴腐ワインは、食後のデザートの代わりにもなります。食事の締めくくりに、芳醇な香りと甘美な味わいをゆっくりとたのしめば、満足感がさらに高まりそうです。
「飲むデザート」だけでは少し物足りないというときは、チョコレートやチーズケーキ、フルーツのシロップ煮、ハチミツをかけたブルーチーズなどを用意してみてはいかがでしょう。貴腐ワインとの相性がとてもよいので、ぜひ一緒に味わってみてください。
貴腐ワインをバニラアイスに少し垂らせば、特別感のあるデザートになりますよ。
食前酒としても人気
貴腐ワインは、フランス料理などの食前酒としても好まれています。食前酒には、食事の前に飲むことで会話を弾ませたり、アルコールで胃を刺激して食欲を増進させたりする役割があるといわれます。また、極上の貴腐ワインを食前酒にすることで、甘美なおいしさに誰もが笑顔になって一気に場が和みそうです。
貴腐ワインをおいしく飲むポイントは事前にしっかり冷やすこと。温度の目安は4~8度程度といわれています。比較的お手ごろ価格の貴腐ワインなら、氷を浮かべてカジュアルに味わうのもアリですよ。
食事と合わせるなら濃厚なフォアグラなどが好相性
貴腐ワインと料理をペアリングするなら、フォアグラのソテーがイチオシです。とろりとした舌触りの貴腐ワインと、リッチで濃厚な味わいのフォアグラを合わせれば、おいしいマリアージュが生まれます。
また、貴腐ワインにはクリーミーな牡蠣も合います。フランスでは生牡蠣と一緒にたのしまれてきた歴史があります。牡蠣のグラタンやバターソテーなど、こってりした牡蠣料理とも相性抜群ですよ。
「貴腐ワイン」は、手間暇かけて造られる甘口ワインです。自然条件に左右されやすく、よい貴腐ブドウができない年は生産が見送られることもあります。飲む機会があれば、造り手に敬意を払いつつ、じっくりと堪能したいものですね。