辛口の白ワイン「シャブリ」とは? 特徴や種類、シャルドネとの違い、おすすめのペアリングも確認
「シャブリ」は、フランス・ブルゴーニュ地方のもっとも北に位置する辛口白ワインの名産地。この地区で造られるワインもまた「シャブリ」と呼ばれ、広く親しまれています。今回は、「シャブリ」の特徴や種類、シャルドネとの関係性、おすすめのペアリングを紹介します。
- 更新日:
辛口白ワインの代名詞と呼ばれるシャブリの特徴や格付け、おいしい飲み方をみていきます。
「シャブリ(Chablis)」とはどんなワイン?
bergamou / Shutterstock.com
「シャブリ」とはどんなワインなのでしょうか。まずは基本情報から紹介します。
「シャブリ」はブルゴーニュ地方で造られる辛口白ワイン
「シャブリ」とは、ワインの銘醸地ブルゴーニュ地方のもっとも北にあるワイン産地。このシャブリ地区で造られるワインだけが、「シャブリ」「シャブリワイン」と名乗ることができます。
「シャブリ」はブルゴーニュ地方を代表する辛口白ワイン。日本でもその人気と品質の高さから「辛口白ワインの代名詞」とされています。
特長はエレガントでキレのある酸味と豊富なミネラル感。火打ち石を思わせる独特の香りがありますが、果実味や酸味とバランスよく調和し、おいしさを際立たせています。
Rostislav_Sedlacek / Shutterstock.com
「シャブリ」と「シャルドネ」の関係
「シャブリとシャルドネの違い」について知りたいという人もいるようなので、両者の関係を確認しておきましょう。
「シャブリ」とはワインの産地名にして、この地で育まれる辛口白ワインの呼び名にも使われる言葉です。
一方「シャルドネ」は、「白ワインの女王」とも称されるフランス原産の白ワイン用ブドウ品種のこと。
「シャルドネ」は「個性がないのが個性」といわれるニュートラルなブドウ品種で、栽培地の気候風土や造り手のこだわりが香りや味わいに反映されやすいことから、世界各国で広く栽培されています。
「シャブリ」がワインの産地やその地で造られたワインそのものを指すのに対して、「シャルドネ」はブドウ品種なのです。
覚えておきたいのは、「シャブリ(シャブリワイン)」はシャルドネ種のブドウ100%で造られているということ。「シャブリ」の魅力は、シャブリ地区で栽培される「シャルドネ」の個性によって育まれているといっても過言ではありません。
「シャルドネ」については、以下の記事でくわしく紹介しているので参考にしてください。
「シャブリ」のおいしさの秘密は気候と土壌にあり
barmalini / Shutterstock.com
「シャブリ」のおいしさの秘密は、シャブリ地区の冷涼な気候と独特の土壌にあるといわれています。
ブルゴーニュ地方の最北にあるシャブリ地区は、北緯48度付近にある土地。気候は緯度だけで決まるものではありませんが、通常の交通手段で行ける日本最北端の地、北海道・宗谷岬の突端は北緯45.31度で、北極点は北緯90度なので、冷涼な気候であることは想像がつくでしょう。
気温が低い土地ではブドウの糖度が上昇しにくいことから、辛口のワインに仕上がります。また、冷涼な気候で栽培されたブドウは、酸味が高くなる傾向があります。
「シャブリ」のおいしさを左右するもうひとつの要素は、シャブリ地区独特のキンメリジャン(キンメリッジアン)と呼ばれる土壌にあります。
キンメリジャンとは、小さな牡蠣の化石などが堆積したジュラ紀後期の石灰質地層のこと。この土壌は白ワイン用のブドウ、シャルドネを作るのに適しており、土壌のミネラル分をたっぷり吸って成長したブドウこそが、シャブリ独特の果実味とミネラル感に満ちたワインを生み出しているのです。
なお、「シャブリ」独特の火打ち石のような香りは、キンメリジャン土壌とは無関係というのが近年の定説とされています。
独自の4つの格付けを持つ「シャブリ」の魅力
Africa Studio / Shutterstock.com
「シャブリ」の畑には独自の4種類のランクがあります。ランクの高いものから順にみていきましょう。
シャブリ・グラン・クリュ(特級)
シャブリ地区のなかでも特級の畑に与えられたA.O.C. (原産地呼称)。
シャブリ・グラン・クリュの畑は7つあり、スラン川右岸の日当たりのよい丘の斜面に集中しています。冷涼な気候ながら日照に恵まれていることから、香り豊かで糖度の高いブドウに育ちます。この特級の畑で栽培されるブドウは、シャブリ地区全体の2パーセント程度といわれています。
ちなみにシャブリ・グラン・クリュの7つとは、ブーグロ、プリューズ、ヴォーデジール、グルヌイユ、ヴァルミュール、レ・クロ、ブランショ。これ以外の特例が「ムートンヌ」。
これはソムリエ試験での暗記必須項目ですね。
シャブリ・プルミエ・クリュ(1級)
シャブリ・グラン・クリュに次いでランクが高いのが、シャブリ・プルミエ・クリュです。
1級畑として認められた畑だけがシャブリ・プルミエ・クリュを名乗ることができますが、そのためには、収穫したブドウの最低糖度や最低潜在アルコール度数、最大収量などの規定をクリアする必要があります。
シャブリ・プルミエ・クリュに認定されている1級畑は全部で40区画。クリマ(区画畑)ごとに日照や土壌などが異なることから、シャブリ・グラン・クリュに比べて多様な個性の「シャブリ」がたのしめるといわれています。
シャブリ・プルミエ・クリュの畑では、フルショーム、ヴァイヨン、モンマンなどが有名です。
andre quinou / Shutterstock.com
シャブリ
シャブリ・グラン・クリュやシャブリ・プルミエ・クリュのまわりにある17カ村に認められたA.O.C.。ここの畑で収穫されたブドウで造られるのはもっともスタンダードな「シャブリ」で、生産量は「シャブリ」全体の過半数を占めています。
シャブリのワインは、シャブリ・グラン・クリュやシャブリ・プルミエ・クリュと比べると酸味がおだやかです。
プティ・シャブリ
もっともカジュアルなランクがプティ・シャブリ。A.O.C.シャブリよりも規定はゆるめで、キンメリジャンよりも1世代新しい土壌が割り当てられているため、比較的軽やかでフルーティーな味わいがたのしめます。
比較的若いうちに飲まれるのも、プティ・シャブリならではの特徴です。
辛口白ワイン「シャブリ」をたのしむ温度
Africa Studio / Shutterstock.com
「シャブリ」の飲みごろ温度は、格付けによって若干異なります。
順にみていきましょう。
◇シャブリ・グラン・クリュ:12〜14度程度
◇シャブリ・プルミエ・クリュ:10〜11度程度
◇シャブリ:10〜11度程度
◇プティ・シャブリ:8〜10度程度
「シャブリ」と相性抜群の料理はこれ
Evgeny Karandaev / Shutterstock.com
「シャブリ」は魚介類や肉料理、揚げ物、チーズ、新鮮な生魚など、さまざまな料理と合わせられますが、とくに有名なのは生牡蠣(なまがき)とのペアリングでしょう。
生牡蠣といえば、レモンとの相性が抜群。シャープな酸味を持つ「シャブリ」ともよく合います。「シャブリ」の個性の源ともいえるキンメリジャン土壌に牡蠣の化石などのミネラル成分が含まれていることも、生牡蠣との相性のよさを裏打ちしてくれそうですよね。
チーズやクリーム、ホワイトソースを使った料理やシーフード料理、肉料理などはもちろんですが、天ぷら、お寿司、焼き鳥などの和風料理ともよく合います。また、淡白な味つけの魚介料理とも絶妙に引き立て合います。
至高のペアリングを探して、「シャブリ」の魅力を堪能してください。
「シャブリ」というと、日本でもっとも流通しているA.O.C.シャブリを想像するかもしれませんが、実際は多様性が高いワインです。機会があったら、ワイン畑や格付け、熟成年数の異なる「シャブリ」を飲み比べてみてくださいね。