シャトー ラグランジュ。サントリーが所有するボルドー・メドック・グランクリュの歴史や評価とは?
シャトー ラグランジュはメドック特級格付第3級でトップクラスの高評価を受けるシャトー。1983年からサントリーが経営参画し、畑や設備に多額の投資をして品質向上に取り組んできたことでも知られます。2023年はサントリーが経営権を取得して40周年。その歴史やエピソードをあらためて振り返ります。
- 更新日:
目次
シャトー ラグランジュとは?
シャトー ラグランジュ(Chateau Lagrange) 公式サイトより
メドック・グランクリュ第3級のなかでもトップ水準の高評価シャトー
シャトー ラグランジュは、ボルドーの赤ワインの格付けである、メドック・グランクリュ第3級に格付けされているシャトーで、1983 年よりサントリーが所有しています。
シャトーを代表するシャトーワイン(ファーストラベル)は「シャトー ラグランジュ(Chateau Lagrange)」で、近年では毎年のように3級トップクラスの高評価を獲得する、高品質なボルドー産赤ワインです。美しい果実味と豊かで溶け込んだタンニンがあり、芳醇で長い余韻が感じられる長期熟成タイプ。750mlボトルの参考価格は、ヴィンテージによって異なりますが約1万円~です。
その他に、セカンドラベルとして「レ フィエフ ド ラグランジュ」同約5,000円~、サードラベル的なポジションの「ル オードメック ド ラグランジュ」同約4,000円~、辛口の白ワイン「レ ザルム ド ラグランジュ」同約6,000円~。
ボルドーの格付けとは?
ボルドーメドック地区には61の特級格付け(グランクリュ)シャトーがあります。この格付けは1855 年のパリ万博時に制定されたもので、ボルドーワインの頂点といってもいい存在です。特級格付けとなっているのはボルドーワイン全生産量のうち、わずか数%と、とても貴重な存在になっています。
【ご参考】
■シャトーとは?
シャトー ラグランジュ(Chateau Lagrange) 公式サイトより
「シャトー(Chateau)」とは、「お城、大邸宅」の意味で、おもにボルドー地方において、「ブドウ畑を所有し、栽培、醸造、熟成、瓶詰まで、ワインの製造を行う生産者および施設」のことを表す言葉です。
■シャトー ラグランジュの位置づけは?
ボルドーAOC ※1(AOP)と呼ばれる特定の産地で生産される上級赤ワインには、特級格付け(グランクリュ)シャトーが61ヶ所あり※2、「シャトー ラグランジュ」はそのひとつです。
※1 Appellation d‘Origine Controlee (アペラシオン・ドリジヌ・コントローレ)の略称で、フランスの原産地呼称制度のこと。特定の産地で生産される上級ワインで、地域やブドウ品種、栽培方法や醸造方法まで細かく規定されています。
※2 メドック特級格付61シャトー:第1級が5シャトー、第2級が14シャトー、第3級が14シャトー、第4級が10シャトー、第5級が18シャトーで61シャトー。
(60シャトーはメドック地区に位置しますが、唯一の例外はグラーブ地区ペサック・レオニャン村に位置する第1級「シャトー・オー・ブリオン」)
■シャトー ラグランジュの立地は?
「シャトー ラグランジュ」は、フランス ジロンド県 メドック地区 サン・ジュリアン村にあり、グランクリュでも最大級の118 ヘクタールという作付け面積を持つ、メドック第3級格付けシャトーです。
シャトー ラグランジュの歴史
17 世紀のワイン地図に「ラグランジュ」の記載が。
17世紀のワイン地図に、すでに「ラグランジュ」の記載がありました。※「ラグランジュ」とは「自立した小さな集落」という意味。19世紀には、ルイ・フィリップ朝で大臣を務めたデュシャテル伯爵の所有となり、当時のボルドーでも指折りの先進的な醸造設備が整えられます。この時代に生産量も大きく増加、1855年パリ万博時に制定された格付けでボルドー・グランクリュ第3級になります。
その後1929年の世界恐慌で、当時のオーナーだったスペイン系のセンドーヤ家が没落。畑は切り売りされてシャトーは荒廃します。ワインの品質も低下していき、「シャトー ラグランジュ」はこれ以降きびしい時代に。
それから50余年の時を経た1983年、サントリーが「シャトー ラグランジュ」の経営権を取得。買収後には長期的な視野と覚悟をもって品質向上に取り組むことに。ラグランジュを再生して最高のワインを造るため、多額の費用を投じて設備と畑に大幅なテコ入れをおこないます。60haの畑に、数年間掛けてブドウ樹を1本ずつ(約50万本)新たに植え付けたのもその一環。
こうした努力の結果、1990年代後半からラグランジュの品質は着実に向上し、徐々にかつての名声を取り戻していくことに。
2023年はサントリーが「シャトー ラグランジュ」の経営権を取得して40周年となる記念の年にあたります。
シャトー ラグランジュとサントリーの関係とは?
当時の赤玉ポートワイン
画像:サントリーホールディングス提供
サントリーの祖業はワイン
「シャトー ラグランジュ」の再建に奮闘してきたサントリーについて、かんたんに振り返ります。現代では、サントリーといえば「ザ・プレミアム・モルツ」をはじめとしたビール類や、「山崎」「白州」「響」「角瓶」などのウイスキーを思い浮かべる方も多いと思いますが、サントリーの祖業はワインというのも有名なお話です。
鳥井信治郎氏
画像:サントリーホールディングス提供
1899年、創業者の鳥井信治郎氏が大阪市に「鳥井商店」を開業し、ぶどう酒の製造販売を始めました。氏は自身が感銘を受けた、スペインのスティルワインを日本で売ろうと試みるも、当時の日本人には本格ワインの味わいはまだ受け入れられずに苦戦。そのため、甘くて飲みやすい「赤玉 ポートワイン」を開発して1907年に発売します。これが大ヒットしたことが現在のサントリーの基礎になっているのです。
1983年から2023年までの40年でサントリーが実施したこと
ラグランジュ復活の20年
ボルドーは、フランスでもトップを争う銘醸地です。また、階級意識が根付く保守的な風土であり、確立された商慣行やワイン造りの伝統があるなかにおいて、サントリーは徹底的に現地に寄り添う姿勢を保ち続けます。
「ラグランジュの潜在力」を信じて荒廃した畑と設備に大きな投資を行い、ひたすらに「ラグランジュの再生」を目指す過程で、徐々に地元の人々の評価・信頼を得ていきます。
その結果、1996 年にはシャトー経営が黒字化。その価値は買収時の数倍以上にも膨らむなど、顕著な成果に結びついていきます。
この長期的な取り組みに挑戦できたのは、オーナー企業であるサントリーならではのことかも知れませんね。
ラグランジュ飛躍の20年
グランクリュでも最大級の118 ヘクタールという作付け面積を持つラグランジュですので、広大な畑から高品質なブドウを得るために、畑のマネージメントも改革しました。例えば畑の位置によって完熟タイミングが異なるブドウの収穫をぎりぎりまで待つために、畑を103もの区画に区分し、区画ごとにブドウの熟し具合を細かく管理します。
区画ごとの仕込みを可能にするため、100基以上の小型醸造タンクを導入。また光センサーによる自動選果機をいち早く導入するなど、妥協を許さない高品質への取り組みを断行することで、「シャトー ラグランジュ」の品質はさらに向上していきます。
買収後に植えたブドウ樹は樹齢40年に達して本領を発揮し、より品質の高いブドウが収穫できるようになりました。
このような経緯を経て、ラグランジュのテロワールの魅力をより引き出したワイン造りが可能となり、その品質はさらなる高まりを見せているのです。
近年「シャトー ラグランジュの品質評価」は、かつて無いほどに高まっている
シャトー ラグランジュ(Chateau Lagrange) 公式サイトより
「ラグランジュ」は近年、定的に3級トップ水準をキープ
先述のような取り組みの結果、近年「シャトー ラグランジュの品質評価」はさらに高まり、以下のような高評価を各ヴィンテージで連続して獲得するまでになっています。
2019ヴィンテージの高評価の一例
Wine Advocate誌:95点
Decanter誌:96点
Vinous誌:95点
The Inside Bordeaux:96点
第1級が5シャトー、第2級が14シャトー、第3級は14シャトーです。
格付け通りであれば、1~2級で上位19位までを占めるはずですが、3級の「シャトー ラグランジュ」は、2016年20位、2017年22位、2018年19位、2019年22位の評価※を獲得。
※瓶詰後製品の評価点順位 専門誌「Wine Advocate」メドック・グラン・クリュ内 順位
直近では、ボルドーワインにおいて世界で強い影響力のある評論家の一人、ジェーン・アンソン氏(※)が、2022年に試飲した全ワインの総合評価 “Wines of the Year 2022”を発表したなかで、メドックのTOP5ワインに「シャトー ラグランジュ2016」が選ばれたそうです!
※イギリスの著名ワイン雑誌「デカンター」での執筆を約20年務めたのち、現在は「ジェーン・アンソン・コム」を立ち上げた。
「シャトー ラグランジュ2016」はカベルネ・ソーヴィニヨンが70%、平均樹齢は42年。この快挙は、1980年代から先人たちが想い描いていた理想を実現したワインなのでしょうね。
このように、「シャトー ラグランジュ」は第3級格付けシャトーのなかでトップクラスの高評価を獲得し続けていることがわかります。
シャトー ラグランジュ(Chateau Lagrange) 公式サイトより
ファーストラベルの「シャトー ラグランジュ」なら熟成によってその味わいの魅力がより広がります。セカンドラベルの「レ フィエフ ド ラグランジュ」や、サードラベル的存在の「ル オードメック ド ラグランジュ」ならば若いヴィンテージのうちから美味しくたのしめますよ。
サントリーが経営するようになってからの改革と品質向上により、いまではメドック第3級でもトップクラスの高評価と人気のシャトーに躍進を遂げた「シャトー ラグランジュ」。近年の急激な評価の上昇が、まだ価格に反映されていない言わばお買い得な状態なため、ボルドーで「コストパフォーマンスに優れる外さないワイン」を探したいとき、「ラグランジュ」は憶えておきたいワインです。
<シャトー ラグランジュ 商品概要>
■赤ワイン・フルボディ
■格付け:メドック格付け第3級
■オープン価格(参考価格:約1万円~)
シャトー ラグランジュのファーストラベル(シャトーワイン / グランヴァン)です。新樽比率50~60%のフレンチオークで約20ヵ月間熟成。美しい果実味と豊富で溶け込んだタンニンが織り成す、豊潤かつ気品漂うスタイルで、長い余韻が感じられる長期熟成タイプです。
<レ フィエフ ド ラグランジュ 商品概要>
■赤ワイン・フルボディ
■格付け:AOC. サン・ジュリアン
■オープン価格(参考価格:約5,000円~)
シャトー ラグランジュのセカンドラベル。セカンドとはいえ、その品質基準は非常に高く、クオリティは十分に他の格付けシャトーに匹敵すると評価されます。サントリー買収直後の1983 年より発売。
<ル オードメック ド ラグランジュ 商品概要>
■赤ワイン・ミディアムボディ
■格付け:AOC. オー・メドック
■オープン価格(参考価格:約4,000円~)
オー・メドック地区に購入した畑でつくったブドウを使用した、ラグランジュのサードラベル的存在の新ブランド。豊かな果実味と滑らかなタンニンが魅力のエレガントな味わいで若いうちから楽しめる。
<レ ザルム ド ラグランジュ 商品概要>
■白ワイン・辛口
■格付け:AOC. ボルドー
■オープン価格(参考価格:約6,000円~)
シャトー ラグランジュがつくる白ワイン。品種特有の柑橘系やハーブの香りが個性的。凝縮された果実味と、しっかりとした酸味、新樽使用による豊かなボディも特長。「レ・ザルム」とはシャトーの池に咲く白い花のこと。
■販売者:サントリー株式会社/株式会社ファインズ
公式ホームページ:サントリー株式会社 シャトー ラグランジュ