海底はワインの熟成に最適な環境! 注目度上昇中の海底熟成ワインの魅力に迫る
海底熟成ワインとは、海底で熟成させたワインのこと。水温が低く、光の届きにくい海底は、ワインの熟成に適しているといわれています。今回は、海底熟成ワインの特徴や、海底熟成のメリット、熟成の方法や期間、日本の海底熟成ワインなどについて紹介します。
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海底熟成ワインのロマンあふれる魅力や、日本の有名産地などを紹介します。
海底熟成ワインとは? 近年注目のワイン
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海底熟成ワインとはどんなワインで、なにをきっかけに注目されるようになったのかについて見ていきます。
海底熟成ワインの始まりは、沈没船から見つかった奇跡のシャンパーニュ
海底熟成ワインとは、文字どおり海底で熟成されたワインのこと。海底熟成が注目されるようになったきっかけは、沈没船から見つかったシャンパーニュでした。
1998年、スウェーデン沖で1916年に沈没した貨物船ジョンコピング号が引き揚げられました。船中には、第一次世界大戦中に当時のロシア皇帝・ニコライ2世に届けるためのワインやスピリッツが積まれていて、そのなかの「エドシック・モノポール」というシャンパーニュだけが品質を保っていたそう。
暗い海底には劣化の原因となる光が届かないことや、保管に最適な水温・水圧などの条件がそろっていたことに加えて、そもそも長期熟成向きの高品質なシャンパーニュだったことも功を奏したようです。
「奇跡のシャンパーニュ」として世間をにぎわせた「エドシック・モノポール」の「ディアマンテ・ブルー 1907」のなかには、パリのオークションにて6,010ユーロ(約85万円)で落札されたものもあったそう。
また2010年には、フィンランドのオーランド諸島が浮かぶバルト海の海底から引き揚げられた難破船の中から、168本のシャンパーニュが見つかりました。調査によって、推定1830年~40年ころの「ヴーヴ・クリコ」や「エドシック・モノポール」、今はなき「ジュグラー」というメーカーのボトルであることが判明。こちらもよい状態を保っていたそうで、オークションにかけられた「ヴーヴ・クリコ」は1本3万ユーロ(約400万円)ほどで落札されました。
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世界で海底熟成プログラムが始動! 日本の有名な産地は?
沈没船から200年前のボトル47本が見つかったフランスの「ヴーヴ・クリコ」のメゾンでは、2014年より海底での熟成過程を調べるために、「Cellar in the Sea(海底貯蔵庫)プログラム」を開始。海底にシャンパーニュを沈めて研究を続けています。
同じく2010年、沈没船から180年前のシャンパーニュが見つかったことを受け、フランスワイン販売専門店を運営する株式会社カイエは、フランスのユック・ペール・エ・フィス社とのコラボから生まれた深海熟成シャンパーニュ「Premium TOGA Champagne Heucq h-60(プレミアム トガ シャンパーニュ ユック h-60)」の販売を2017年より開始しています。
このほか、クロアチアの海底ワイナリー「Edivo Vina(エディーヴォ・ヴィナ)」では、海底約18~25メートルのワインセラーで700日間以上寝かせたワインを提供。スペインの「Crusoe Treasure(クルーソー・トレジャー)」では、バスク地方の海底で熟成されたワインを販売しています。
また日本でも、神奈川県三浦市の小網代や静岡県の伊豆半島沖などで、ワインの海底熟成プログラムが実施されています。ワイン以外にも、沖縄では泡盛を海底で寝かせる慣習があるほか、岩手県沖の海中熟成酒(日本酒など)や、静岡県伊豆沖の海底で寝かせたウイスキーなどもあります。
なぜ海底がよいの? ワインを長い時間をかけて海底で熟成させるメリット
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ここでは、海底でワインを熟成させるメリットを確認していきます。
海底はワインの熟成に適した条件がそろうワインセラー! 環境への配慮も話題
海底は、ワインの熟成に適した環境が整っているといわれています。暗い深海は劣化の原因となる光(紫外線)が届かないことに加えて、適度な温度(水温)や湿度が保たれます。ちなみに、バルト海で見つかったシャンパーニュは水温約4度で品質が保たれていたそうですが、一般にワインの保管温度は13~15度、湿度は75%前後が最適といわれています。
もちろん海底ならどこでもよいわけではないものの、光や温度などワインにとってよい条件がそろう海域の海底は、ワインセラー(貯蔵庫)としても活用できるのです。
また、自然の力だけで熟成される海底熟成ワインに注目が集まることによって地球環境保全への関心が高まることも期待されます。ワイナリーによっては、海底のワインセラーをダイビングで訪れるツアーなどが開催されています。
常設された海底ワインセラーに、魚や珊瑚などの生物が住まい、繁殖する漁礁となる場合もあり、海の生態系を守るという一面も持っています。
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通常の熟成では生まれない!? 海底熟成ワインの味わいと魅力
海底はワインの保存・保管に最適な条件がそろっていることに加えて、海中の一定の微振動が影響して、通常より熟成が進みやすいといわれています。一般的にワインは振動のないところで保管したほうがよいといわれますが、海底の砂や波、音などの微振動はお酒によい変化をもたらすようです。
科学的に証明されているわけではありませんが、一般的に海底で熟成させたワインは、アルコールの刺激がやわらいで、香りが開き、まろやかな味わいに感じられるようになります。
海底熟成ワインの魅力は味わいの変化だけでなく、海中で保管するため、ワインボトルの表面にフジツボや石灰藻などが付着して独特の雰囲気に変化するのも魅力です。自然に育まれた2つとないデザインが、コレクター心をくすぐります。ヴィンテージワインを想わせる佇まいから、ワイン好きの人などへの贈答品としても重宝されています。
ワインを海底熟成させる方法や熟成期間
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ワインを海底熟成させる方法はワイナリーやメーカーによってさまざまですが、一般的にはワインボトルの中に海水が入らないように栓からボトルのネック部分をコーティングしてから、専用のカゴなどに入れて船で運び、最適なポイントで海底に沈めるという流れになります。熟成期間は、半年から1~2年程度とさまざまです。
なお、通常は市販のワインボトルの形状で沈めるケースが大半ですが、前述のクロアチアのワイナリーでは、ワインボトルを古代ギリシャのアンフォラという壺を模したものに入れてから海底に沈めるものもあります。引き揚げたときの姿は、ワインボトルとはまた違った個性を放っていて、人気を集めています。
海底熟成は、目の前に海があれば気軽に誰でもチャレンジできると思うかもしれませんが、ワインボトルを沈めるのも引き揚げるのも天候次第。ベストタイミングがくるまで待つことも必要で、いつでもかんたんに海底熟成できるわけではありません。
また、海底でワインが紛失・破損しないように固定したり、盗難などの被害に遭いにくい場所を選んだりする必要もあり、各生産者は細部まで配慮したうえで進めています。
なお、海底熟成はだれでも自由にできるものではありません。海底熟成を行うためには、あらかじめ漁協や関係者等に許可を得る必要があるのは当然などでご留意ください。
日本でおすすめの海底熟成ワインを紹介
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日本で行われている海底熟成ワインのプロジェクトや、おもな生産者を紹介します。
三浦市小網代: 小網代観光振興活性化検討協議会
神奈川県三浦市小網代では、地域活性化などを目的とした、「小網代湾海底熟成ワインプロジェクト」が進行中です。有料で一般募集もしていて、応募後、好きなワインを送るか持ち込むことで海底熟成ワインを味わうことができます。
預けたワインは、地域の養蜂場で採れたミツロウでコーティングされ、ケースに入れて水深約10メートルの海底に沈められます。沈めるのは毎年12月で、引き揚げは約6カ月後です。
ちなみに、小網代の海底熟成ワインは、三浦市のふるさと納税の返礼品としても扱われています。
小網代湾海底熟成ワインプロジェクト(三崎観光サイト)
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南伊豆沖:SABRINA(サブリナ)
日本における海底熟成ワインの先駆け的存在のSABRINA。南アフリカのワイナリーでSABRINAのために造られたシラー種の赤ワインを、南伊豆の奥石廊(おくいろう)・中木(なかぎ)の沖、水深約15メートルの海底セラーで熟成させています。この海域は伊豆有数の透明度を誇ることで有名です。
海底での熟成期間は約7カ月間で、引き揚げられたワインは公式オンラインショップなどで購入可能。海底でワインボトルの表面に描かれたアートにはひとつとして同じものはないことから、1本1本シリアルナンバーのタグがついているのが特徴です。
なお、SABRINAの運営会社は、日本全国でさまざまなお酒の海底熟成をサポートしています。
SABRINA (運営:株式会社コモンセンス)
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公式オンラインショップはこちら
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西伊豆:VOYAGE(ヴォヤージ)
静岡県西伊豆沖の水深約15メートルの場所で、海底熟成ワイン作りを行っているVOYAGE。取り扱いワインは、フランス産やイタリア産、チリ産と複数種類あり、いずれも厳選したフルボディの赤ワインとなっています。海底での熟成期間は半年間です。
VOYAGEでは海底熟成ワインのほか、日本酒や梅酒、ジンなどの海底熟成酒も手がけていて、いずれも公式オンラインショップなどで購入できます。また、西伊豆海底熟成ワインは、西伊豆町のふるさと納税の返礼品にもなっています。
VOYAGE(運営:株式会社Enjoy)
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公式オンラインショップはこちら
ワインの保存・保管に適した海底で寝かせることで、ワインの味わいがまろやかに変化するといわれる海底熟成。機会があれば、海底熟成ワインを手にとって、その効果をぜひ味わって確かめてみたいものですね。