おうちでビールを美味しく飲むための3つのポイントとは?ビール業界の重鎮2人が伝授します!

おうちでビールを美味しく飲むための3つのポイントとは?ビール業界の重鎮2人が伝授します!

今回は、キリンビールで、ビール・RTDの全味わいを決めるマスターブリュワーの田山智広さん(写真左)と、日本ビアジャーナリスト協会代表で、京都の与謝野でホップ生産も手がける藤原ヒロユキさん(写真右)のお二人に「ビールをより美味しく飲むための3つのポイント」をアドバイスいただきました。

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ポイントその1:まずは、バラエティ豊富な“ビール”の魅力を知ろう!

ビール マスターブリュワーの田山智広さん(写真左)と、日本ビアジャーナリスト協会代表で、京都の与謝野でホップ生産も手がける藤原ヒロユキさん(写真右)

クラフトビールの定義と誕生した背景について

藤原:最近クラフトビールという言葉をよく耳にするようになりましたが、日本ではクラフトビールの定義については、誰もしっかりした定義を語っていないのです。田山さんはどのようにお考えですか。

田山:クラフトビールは、造り手の情熱や創造性が伝わるとか、造り手の顔が見えることで、そのビールのストーリーや想いが語れるとかが大切だと思っています。規模の大小は関係なく、製品と造り手がリンクしているのがクラフトビールといえると思います。

藤原:私も規模はあまりこだわっていなくて、やはり、造り手の顔が見えるというのはとても大切だと思います。実際に、“〇〇ブルワリーのヘッドブルワー(醸造責任者)”と言われれば、顔と名前が浮かんできますからね。

付け加えて、歴史的なことから考えると、アメリカ西海岸で1960年代に起きたビールのムーブメントから影響を受けた人々が、造り手としてビール造りを始めたのがクラフトビールの始まりです。24時間365日、ビールのことばかり考えている造り手が造るビールがクラフトビールとも言えると思います。

田山:アメリカでクラフトビールのムーブメントが起こったのは必然的だと思います。それは、ヨーロッパの各国では昔から様々な種類のビールがあり、多様なビールを飲むことができましたが、アメリカのビール文化は古くからの伝統はありません。

当時、『自分たちの周りにある、味わいが画一的でドリンカブルなビールではない、自分たちが飲みたいビールを造る』
というアメリカならではの新しいカルチャーとして生まれ、ヨーロッパなどのビールを参考にして、アメリカ流のアレンジをしてアメリカのクラフトビールは発展しました。

クラフトビールは、多彩なビアスタイルに注目しよう!

藤原:クラフトビールが日本やアメリカなどで注目されているのは、やはり「味わいの多彩さ」ということがあると思います。
「ビール」といって、今までの日本人が思い浮かべるものは、日本で普段数多く販売されている黄金色のビールだと思います。

「ビールは苦手」とか「ずっとビールばかり飲んでられないよ」、という場面に出会うことがありますが、ビールには、多彩なスタイルがあるので、実際は、ずっとビールで楽しむことができます。

実際に100種類以上のビアスタイルがあり、これだけ、幅広いレンジとバラエティに富んだお酒はほかにないと思います。これが、ビールの強みだと思います。

田山:クラフトビールは、多彩なスタイルがあるので選べるところがいいですね。いつでも自分の好きなビールを選ぶことができます。

今は、身近なお店でいろいろな味わいのビールが購入できます

田山:今日は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで購入できる、バラエティに富んだビールを用意していますので、見ていきましょう。

ラガービール・エールタイプのビール・アメリカンタイプのペールエール

田山:向かって左の3種類のビールが、ラガービールです。
苦味もしっかりあり、かつ飲んだあとの切れがいいタイプです。

真ん中から右の白系とブルー系の缶の2種類は、小麦を使ったベルジャンホワイトとヴァイツェンというエールタイプのビールです。フルーティーな香りが感じられると思います。

藤原:ヴァイツェンは、バナナの香りとかクローブの香りとか言われていますね。
苦味も弱いので、苦味の苦手な方にはおすすめです。
その右隣の黄色と黒の缶が、アメリカンタイプのペールエール「よなよなエール」です。

田山:「よなよなエール」はアメリカのホップを使っていますね。
いちばん右側が、「インドの青鬼」というホップをたくさん使った苦味の強いIPAというスタイルのビールです。

IPAスタイルのビール

藤原:IPAには、いろいろなスタイルがありますね。
アルコール度数がやや低めのセッションIPAや、にごりのあるジューシーなヘイジーIPA、ここにある桃の果汁を使ったフルーツ系のIPAなど、IPAも進化しています。
こういうところがクラフトビールの面白いところですね。

田山:アメリカでクラフトビールブームを牽引したのがIPAでしたね。
以前は、押しなべて苦くて、ウエストコースト系の重たい香りが支配的なIPAが多かったですが、最近は、嗜好性の幅が広がったこともあり、飲みやすいIPAを造るところが増えてきていますね。

話がはずむ田山智広さん藤原ヒロユキさん

ポイントその2:ビールを美味しく飲むためにグラスも選ぼう!

ビールとグラスには相性がある

クラフトビールは、グラスにこだわればもっとおいしくなる

ビールとグラスの相性について語る藤原ヒロユキさん

藤原:3種類のビールのタイプに合ったグラスを選んでみましたが、形がそれぞれ違います。

田山:どうして形が違うのか、藤原さんから話をしてもらえますか。

藤原:ビールの良さを引きだすために、どういった形のグラスがよいかを考えると、ビールのスタイルによってグラスの形が違ってきます。

田山:いちばん左のラガータイプのビールに、このグラスを選ばれたのは?

藤原:口の部分が少しすぼまっているので、香りが閉じ込められやすいということと、飲む時に、スッとビールが口の中に入ってきやすいグラスになっています。

田山:香りだけでなく、のど越しも楽しめるグラスなんですね。

藤原:中央のヴァイツェンの場合は、グラスの底から一旦すぼまって、膨らんで、またすぼまる、という形状ですね。このビールは苦みがなく、フルーティーな香りを楽しむために口の部分がこもるような形になっています。

田山:このグラスは、飲む時にしっかりとグラスに鼻がはいりますから、香りを楽しめますね。

藤原:右側のチューリップ型のグラスは、しっかりと香りを閉じ込めるので、香りも楽しむタイプのビールに向いています。

グラスの形や注ぎ方のひと工夫で、より美味しく飲むことができます

田山:それでは、実際にビールを注いでみます。

ビールを美味しく飲むには注ぎ方も大切

■ラガー系タイプが美味しく飲めるグラス

田山:「SPRING VALLEY 豊潤<496>」は、炭酸の爽快さも味わってほしいので、最初は、泡立てるように注ぎます。そのあとは、泡の下にビールを流し込むように注ぎます。

藤原:ラガー系のビールは、ホップの爽快さとモルトの旨味が感じられるように、ビールが口にスッと流れ込むようなグラスをおすすめします。このグラスは、飲み口の部分が大きく少しすぼんでいるので、香りもたまりやすく香りも楽しめます。

飲み口の部分が大きく少しすぼんでいるグラスは、香りもたまりやすく香りも楽しめる

■ヴァイツェンタイプが美味しく飲めるグラス

藤原:ヴァイツェン用のグラスは、グラスの真ん中あたりがくびれていて、細長く上に行くとまた膨れて、口がすぼまるという形です。これは、ビールの泡立ちを良くすることと、香りをグラスの中に閉じ込めるという働きがあります。

ヴァイツェンは、泡立ちやすいので、最初、少し泡を作り、そのあとグラスを横に寝かせて、ゆっくりと注ぎ、最後にグラスを立たせてそっと注ぐときれいな泡がこんもりと作れます。

濃色系のビールには、胴回りが大きく膨らみ、飲み口部分がすぼんでいるグラスが向いている

■黒ビール(濃色系)が美味しく飲めるグラス

藤原:濃色系のビールは、コーヒーのようにローストした麦芽を使用しているので、香ばしさが魅力の一つです。その香りを感じられるように、グラスは胴回りが大きく膨らみ、飲み口部分がすぼんでいるものがいいです。

ビールは、たっぷりと注がず、グラスの上の部分をあけて、そこに香りがたまるようにすると、濃色ビールの香りが楽しめます。

ポイントその3:ビールと料理の色を合わせるとピッタリの相性に!

インタビューの様子

藤原:お酒と料理の相性を、ワインではマリアージュといいますが、ビールの世界では、ペアリングということが多いです。日本の場合、お酒は食中酒ということで考えられています。ビールは特にそうです。

田山:ワインは白には魚、赤には肉を合わせると言われます。
ビールはどうしたらよいのか。悩まれる方もいらっしゃると思うので、そのコツを伝授してください。

料理の色とビールを合わせると失敗しません。

藤原:ビールと料理のペアリングでは、同じ国のビールと料理を合わせるとか、味のバリエーション・味覚のコンビネーションやバランスで合わせるとかがあるのですが、一番わかりやすいのは、ビールの色と料理の色で合わせるということです。

色の濃いビールは、焦がした麦芽(ロースト麦芽)が原料に使われています。料理にも揚げ物や焼き物のように焦げ感があるものがあります。色の濃いビールには、焦げ感のある色の濃い料理が、色の薄いビールには、色の薄い料理が合うと思います。
色で合わせると、とても分かりやすいと思います。

料理の色とビールを合わせると失敗しない

田山:ビールの色と料理の色で合わせるのですね。
実際にペアリングの例を見ていきましょう。

■焦げ感のない「ポテトサラダ」とホワイト系ビールの「銀河高原ビール ヴァイツェン」:白と白のペアリング

焦げ感のない「ポテトサラダ」とホワイト系ビールの「銀河高原ビール ヴァイツェン」

藤原:焦げ感の全くないポテトサラダに合うビールは、いわゆるホワイトビールといわれる“ヴァイツェン”タイプのビールになります。

■少し焦げ感のある「フライドチキン」とほぼ同じ色の「SPRING VALLEY 豊潤<496>」:ブラウンとブラウンのペアリング

少し焦げ感のある「フライドチキン」とほぼ同じ色の「SPRING VALLEY 豊潤<496>」

藤原:フライドチキンの衣の香ばしさが、ビールの麦芽の旨味を引き出して、口の中で
混然一体となる幸せな組み合わせです。

■焦げ感のある黒色の「チョコレートケーキ」と黒系色の「ヤッホーブルーイング 東京ブラック」:黒と黒のペアリング

焦げ感のある黒色の「チョコレートケーキ」と黒系色の「ヤッホーブルーイング 東京ブラック」

藤原:黒色のビールには、スイーツが合うんです。気持ち悪いという人もいますが、是非、試していただきたい組み合わせです。焙煎して黒色に焦げた麦芽とチョコレートケーキの焼いた香ばしい香りと味わいがぴったりです。

おうちクラフトビールのすすめ

さまざまなクラフトビール

Happy Job/ Shutterstock.com

藤原:これだけバリエーション豊富なビールが、手軽に飲める今の時代というのは、少し前から考えると考えられません。
味わいやビアスタイルの多彩さを語れるのが、クラフトビールの魅力だと思います。

田山:ビールの味わいの好みが、人それぞれ違っていてもよくて、自分が好きならそれでよい、といえるのもクラフトビールの魅力ですね。

以前は、“クラフトビール“というと敷居が高かったですが、今は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアや酒類専門店などで、多彩な種類のクラフトビールが、手頃な価格で購入できるようになり、ご家庭でもたのしめるようになってきています。

是非、いろいろな味わいをご家庭でも気軽に楽しんで欲しいと思います。

おうちでビールをより美味しく飲むための3つのアドバイスのまとめ

1. ビール(クラフトビール)の多彩さ、バリエーションの多さを楽しもう!
2. ビールを飲む時には、グラスにもこだわろう!
3. ビールと料理は、色で合わせれば相性ピッタリ!

いつもお買い物をしているお店で、たまには飲んだことのないビールも買って、いろいろな味わい体験をして、自分の好みのビールを見つけてみてはいかがですか。

あとは、きれいなグラスに注いで、ビールの色に料理を合わせれば、楽しいビールライフが過ごせると思います。

是非、ご家庭でたのしんでみてください。

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