日本酒なのにパイナップルみたいな香りがするのはなぜ?

日本酒なのにパイナップルみたいな香りがするのはなぜ?
出典 : 5 second Studio/ Shutterstock.com

日本酒には、パイナップルなどフルーツのような味わいと香りがたのしめる銘柄があります。日本酒はおもに米と水からできているお酒なのに、なぜそのような香りがするのでしょう? パイナップルのような香りが生まれる仕組みや人気の銘柄を紹介します。

  • 更新日:

パイナップルなどフルーツのような香りがする日本酒

パイナップルなどフルーツのような香りがする日本酒

tom hollett / Shutterstock.com

日本酒なのにまるでパイナップルの香り!?

「吟醸香」と呼ばれるフルーティーな香りを持つお酒の中には、パイナップルのような香りがするものがあります。この香りの正体は、香気成分である「カプロン酸エチル」です。とくに吟醸酒系のお酒に多く見られる香りの成分で、酵母が発酵するときに生成されるといわれています。

「カプロン酸エチル」由来の香りは、パイナップル以外にリンゴなどにたとえられることもあります。なお、このような香りのする日本酒のことを総称して、「カプ系」ということもあります。

パイナップルだけじゃない!? フルーツの香りの日本酒

「吟醸香」には、「カプロン酸エチル」系の香りのほかに、「酢酸イソアミル」系の香りもあります。この「酢酸イソアミル」由来の香りは、よくバナナやメロンなどにたとえられます。なお「酢酸イソアミル」系の香りのする日本酒は、先ほどの「カプ系」に対して「酢イソ系」などと呼ばれたりします。

日本酒には、「カプロン酸エチル」と「酢酸イソアミル」以外にも香気成分が存在し、洋ナシや白桃、マスカットなど、銘柄ごとにさまざまなフルーツの香りにたとえられます。

日本酒がパイナップルのようにジューシーに感じる理由

日本酒がパイナップルのようにジューシーに感じる理由

siro46/ Shutterstock.com

パイナップルのような吟醸香を生む「吟醸造り」とは

パイナップルのようなフルーツの香りは、「吟醸造り」と呼ばれる醸造方法によってもたらされます。一般的には、「精米歩合60%以下などに高精米した米を低温で長期発酵させ、かすの割合を高くして、吟醸香が生成されるように醸造する」ことで、結果的にフルーティーで華やかな香りを持つ酒が生まれるとされています。

つまり、低温でゆっくり発酵させることで、「カプロン酸エチル」や「酢酸イソアミル」などが生成されやすくなるとともに、ゆっくりと生成されていくので香りの成分があまり蒸発せず、もろみの中に蓄積されやすくなるのです。こうして、パイナップルなどの香りを持つ日本酒が誕生します。

パイナップルのような日本酒の香り成分を作る酵母

パイナップル香のもとである「カプロン酸エチル」は、吟醸造りだけでなく、酵母によってもたらされるものもあります。さまざまな研究の結果、カプロン酸エチルを高生産する酵母が開発されてきました。ここでは代表的な酵母を紹介しましょう。

【きょうかい1801号】

平成18年(2006年)に頒布が開始されて以来、1801号酵母を使用した銘柄が鑑評会で多数入賞しています。吟醸香成分高生産のエース的酵母で、まろやかな味わいと華やかな香りが特徴の酒を醸すことができます。

【きょうかい9号】

昭和28年(1953年)、熊本県酒造研究所のもろみから分離されて造られた熊本酵母で、昭和43年(1968年)より頒布されています。1990年代半ばまで、鑑評会用の出品酒にもっとも多く使用されていました。華やかで吟醸香が高い酒質に仕上がるのが特徴です。

【CEL-24】

CEL-24は高知県工業技術センターで開発された高知酵母のひとつ。1993年に実用化され、おもに高知県内の蔵元で使用されています。CEL24を使うと、甘酸っぱく香り高い酒質の、比較的アルコール度数の低い酒(アルコール分13度程度)に仕上がります。

パイナップルみたいな日本酒と言えばこの銘柄!

パイナップルみたいな日本酒と言えばこの銘柄!

FREEPIK2 / Shutterstock.com

パイナップルみたいな日本酒1「三芳菊(みよしきく)」

「パイナップルの味わいが口いっぱいに広がる」と、飲んだ人に強烈なインパクトを残す「三芳菊」。この酒を醸すのは、明治22年(1889年)に創業した徳島県の三芳菊酒造です。「飲む人のことだけを考えた」という5代目当主・間宮亮一郎氏が造る日本酒は、伝統を大切にしつつも型にはまらない、味も見た目も個性的なお酒。「吟醸造り」の逆をいく造りながら、独自に開発した徳島酵母と職人技で、パイナップルのような風味を持つ、唯一無二の味を生み出しています。

製造元:三芳菊酒造株式会社

パイナップルみたいな日本酒2「花浴陽(はなあび)」

華やかな甘味と酸味で、女性を中心に絶大な人気を誇る「花浴陽」は、埼玉県羽生市に蔵を構える南陽醸造の主要銘柄。蔵元と姉夫婦の3名で手造りにこだわって醸される「花浴陽」は、生産量が少ないため、入手困難な銘柄としても知られています。
芳醇で豊かなコクを持つ吟醸酒らしい味わいと、無ろ過生原酒らしいジューシーさで、多くのファンを魅了しています。

製造元:南陽醸造株式会社
公式サイトはこちら

パイナップルみたいな日本酒3「亀泉(かめいずみ)」

高知県が誇る高知酵母CEL-24を冠にした「亀泉 純米吟醸 生原酒 CEL-24」は、高知県土佐市の亀泉酒造が醸す銘柄酒。パイナップルやリンゴを思わせるはっきりとした吟醸香、バランスのとれた甘酸っぱい味わい、生原酒らしいジューシーさが特徴で、フルーティーな白ワインを思わせる人気銘柄です。

製造元:亀泉酒造株式会社
公式サイトはこちら

なぜフルーツを使用していないのに、パイナップルのような香りがするのか、謎は解けたでしょうか? どの日本酒を飲むか、選ぶのに迷ったときは「パイナップルみたいな日本酒」とオーダーしてみてもよいかもしれませんね。日本酒の香りに注目して、さまざまな種類をかぎ分けてみてはいかがでしょう。

おすすめ情報

関連情報

日本酒の基礎知識
広告掲載について

ビア検(日本ビール検定)情報

イベント情報

おすすめ情報

Ranking ランキング

おすすめの記事