白ワインがお好きならアルザスワインはいかがですか?
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ドイツとの国境近く、独自の文化を持つリースリングの産地
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フランス北東部、ライン河を隔ててドイツの国境と接するアルザスは、その歴史的背景からフランスとドイツの両方が根付いたワイン文化を持ちます。アルザスワインの90%以上は白ワインで、リースリングを中心に、ピノ・グリ、ピノ・ブラン、ゲヴュルツトラミネールなどが栽培されており、多くの場合単一品種で仕立てられます。
標高が高く寒暖の差が激しい地域のため、酸度が高く辛口で凝縮感のあるワインが造られます。また、自然派の生産者が多く、天然酵母を使用し、発酵・熟成にはステンレスタンクや長年使用された大樽を用いるなど、豊かな酸とフレッシュな果実味を活かした味わいが魅力。
ドイツのモーゼルワインと同様、フリュートと呼ばれる細身の緑色のボトルに瓶詰めされ、ラベルには葡萄品種が表示されます。これは他のフランスワインにはあまり例がありません。以下にいくつか代表的な生産者を紹介しましょう。
1639年からこの地でワインを造る老舗「ファミーユ・ヒューゲル」
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「アルザスといえばヒューゲル」といわれるほど有名なワイナリーです。ヒューゲル家は、アルザス地方で最も高貴なワイン産地の一つとされるリクヴィールに25ヘクタール以上のブドウ畑を所有。しかも、ほぼ半分が平均樹齢30年のグラン・クリュの畑で、化学肥料を使用しない、過剰な収穫はしない、余分な房は落とし、収穫は手摘みで行うなどを実践し、常に高品質なワインをつくり続けています。
「ワインはすでにブドウの中に存在している」という考え方のもと、収穫したブドウはゆっくりと丁寧にプレス。大樽やステンレスタンクの中で自然酵母によって発酵します。樽の香りをつけたり、補糖をしたりするような人工的な作業は一切行わない、伝統的なアルザスワインのスタイルを手ごろな価格でたのしめると評価が高く、フランスの最高級レストランにも多くリスティングされ、その名は世界に広がっています。
アルザスの頂点と称される信念の生産者「マルセル・ダイス」
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1744年から続くダイス家は、フランス・アルザス地方コルマール市の7キロメートル北方、ベルクハイム村に位置しています。ワイン造りの基本哲学は、ブドウ品種、ヴィンテージ、テロワールという3要素それぞれの特徴や個性を、バランスよくワインに表現すること。アルザスは、太古の地殻変動に由来する極めて複雑で多様な土壌。マルセル・ダイスは、とくにブドウと土の関係に徹底してこだわり、個々の土地の強烈な個性をそのままワインに表現することを大切にしています。
そうして造られたワインは、豊かな酸とミネラルが際立つ一般的なアルザスワインとは異なり、複雑な味わいと美しい芳香を伴い、どれも個性的な仕上がりです。 ミシュラン3ツ星レストランでのリスティングはもちろん、フランスでもっとも権威あるワイン評価本「レ・メイユール・ヴァン・ド・フランス(現:クラスマン)」で最高の3ツ星評価を獲得するなど、その実力を高く評価されています。
『アルザスのロマネ・コンティ』と称される名門ワイナリー「トリンバック」
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1626年に創業し、4世紀13代にわたって歴史と伝統を家族経営で育んできた、アルザスきってのワイナリー。1898年には、8代目フレデリック・エミールの造ったワインがブリュッセルで行われた国際ワインコンクールで最高位の賞を獲得、世界の脚光を浴びます。
トリンバックの輝かしい成功を支えるものの1つが、「アルザスのロマネ・コンティ」とも呼ばれるクロ・サンテューヌの単一畑でしょう。トリンバック家が200年にわたり管理を行ってきた1.67ヘクタールの畑で、造られるのは年産わずか8000本程度と大変稀少性の高いワインです。
現在は12代目となるピエールとジャン、姪のアンによって経営され、4世紀に及ぶ歴史と伝統を大切にブドウ栽培から醸造まで全ての工程が、家族経営で守られています。
2006年には、ピエールが世界的権威とされるイギリスのワイン専門誌Decanter誌にて 「世界のTOP10白ワインメーカー」の一人に選出されたことでも話題になりました。
アルザスワインはフランスには珍しい、スラリとしたボトルが特徴です。ぜひお店で探してみてくださいね。