日本酒を造るお米って?食べるお米とは違う「酒造好適米」を知ろう!
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酒造好適米でなければならない理由
日本酒の主原料のひとつに米があります。どんな米であっても日本酒を造ることはできますが、食べておいしい米があるように、日本酒にしておいしい米もあります。実は私たちが普段食べている米と日本酒造りに向く米とでは、性質が違うのです。
日本酒造りに適した米のことを「酒造好適米」といいます。酒造好適米と一般の米の大きな違いは、大粒であることと、米の中心に心白(しんぱく)と呼ばれる円形の部分があること。組織の隙間が多いので食べるとパサつきを感じますが、酒造りにおいては菌糸が入り込みやすく、麹菌の育成がしやすいというメリットがあります。また、心白が大きいものほど吸水率がよく、酒母や「醪(もろみ)」の中で溶けやすいという特徴もあるのです。
加えて、タンパク質や脂肪が少ないことも「酒造好適米」の条件の1つです。タンパク質が多過ぎる米は、「醪」の中で溶けにくくなってしまいます。また、タンパク質は麹の酵素で分解されるとアミノ酸になりますが、このアミノ酸が多過ぎると雑味になります。このため余分な成分が少なく、デンプン純度が高い米が日本酒造りには向いているのです。
酒造用米は栽培が難しい?
おいしい酒造りにはなくてはならない「酒造用米」ですが、その生産量は日本の米の生産量の5%しかなく、そのうち「酒造好適米」は1%しかありません。じつはとても貴重な米なのです。その理由として挙げられるのが、一般の米よりも育てにくいこと。「酒造好適米」は稲穂の背が高く、一粒一粒が大きいため、強風などで倒れやすいのが特徴です。また、密生しやすいことから害虫被害も受けやすく、そのわりに収量が少ないため手間もコストもかかります。さらに高い技術を必要とするため、専業農家でなければ栽培するのが難しいのです。
このような状況から、食用米に比べて「酒造好適米」は値段も高く、よい酒をつくるためによい米を求める蔵元にとっては、頭の痛い問題となっています。このため、一般的に安価で流通している日本酒は、食用米でつくられたものの方が多いというのが現状です。
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代表的な酒造好適米
それでは、「酒造好適米」にはどのような種類があるのでしょうか? まずもっとも有名なのが、日本酒好きなら誰もが知っている「山田錦」です。この「山田錦」は酒米のなかでも大粒で、心白が大きく、雑味の原因となりやすいタンパク質や脂質が少ないという特性を備えており、高精米の酒にも適しています。栽培が非常に難しい品種ではありますが、50%以下まで米を削る「大吟醸」レベルの酒造りにはなくてはならない酒米といえます。
また最近では、地域色豊かなご当地米も登場しており、岡山県の「雄町」や東北から九州まで幅広く栽培されている「五百万石」、長野、秋田などの「美山錦」、山形の「出羽燦々」、北海道の「吟風」、新潟の「越淡麗」、白鶴酒造によって開発された「白鶴錦」など、その種類も広がりを見せています。
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