【特別座談会】関西の食文化の「いま」と今後の「展望」
「天下の台所」で知られた大阪を中心とした関西地区では、どのような伝統食文化が残り、新しい食文化を築いているのでしょうか?関西地区での「食」に詳しい7名の有識者に集まっていただき、「たのしいお酒.jp特別座談会」を実施しました。
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江戸期から「天下の台所」として各地の食材が集まり、さまざまな食文化が発達した大阪、伏見の豊かな水に恵まれた京都など、関西の食文化は豊かです。
伝統ある関西の食文化から現在の流行までを「関西の食の有識者」7人で語ります。
【ゲストプロフィール】
里井 真由美氏(フードジャーナリスト/農林水産省 食料・農業・農村政策審議会委員)
館 太加志氏(大阪産(もん)6次産業化サポートセンター 企画推進員)
M三郎(松村 輝幸)氏(関西ランチ・大阪グルメのカリスマブロガー)
北岡 篤士氏(黄桜㈱ 研究所)
正垣 昌夫氏(㈱阪急オアシス 加工商品部 バイヤー)
寺西 亮氏(三田屋本店 川西荻原台 店主)
田辺 陽子氏(三菱食品㈱ 関西支社)
大阪府内で栽培・生産される「大阪もん」と大阪の特産品である「大阪もん」
舘氏 大阪もんのロゴは2種類あります。左のロゴは、平成18年に立ち上がり、平成20年以降の橋本前知事が大阪の伝統野菜などの一次産品を打ち出すためにこのロゴを使うようになりました。右のロゴは、大阪の名品や食文化を認定しているロゴ。大阪でとれない昆布のように、ストーリーがある商品が認定されています。取り組み初めの当初である平成20年には、府民の認知度は20%ほどでしたが、平成26年頃ころには60%までになりました。
里井氏 大阪もんといえば「泉州の水ナス」は大阪に住んでいたころ、当たり前に食べていましたが、東京にいくと水ナスは、高級品扱い!漬物屋さんでぬかに綺麗にくるまれて鎮座していますよね。いい意味でブランド化されていて高級イメージがあります。大阪の人はブランド化するのが上手なイメージです!
舘氏 シンクがすぐ詰まるから、ぬか漬けがなかなか広まらないので液漬けが主流になっているんですよ。ぬか漬けがうまくいくように研究もされているところです。
里井氏 大阪の食べ物といえば「たこ焼き」「お好み焼き」などをパッと思い浮かべる方が多いかと思いますが、地のものもたくさんあることは改めてアピールしなきゃいけないな、と思いますね。泉州水ナス、黄たまねぎ、きゃべつ…「大阪もん」をもっと知ってほしいです。
舘氏 大阪はぶどうのデラウェアが全国3位の生産なんです。羽曳野・柏原あたりが名産地。大阪もんとしてお酒やサイダーも関連して販売されています。
M三郎氏 大阪で上がったシラスは淡路島にいってしまって、大阪では値段がなぜかつかないんですよね。淡路島と大阪の間で獲られているのに…「たこ」もそう。他の場所でブランド化されてしまうんです。
舘氏 シラスは岸和田の「いわしきんちゃく」という組合が岸和田で捌けるようにしています。東京でもぼちぼち名前が出ているんです。水産物は大阪は量も少なく、なかなか名前が出てこないのが現状ですね。
司会 吹田名品のくわいはお正月に食べるイメージがありますが、どうでしょう?
舘氏 吹田のくわいは原種に近いです。野生に近いワイルドなくわいで、大きさ・形もバラエティがあります。生産者も今は数えるくらいで、伝統野菜の中でも栽培面積が少なく、作り手も少ないので広がらないんです。100年前から作られているのが20種類。これまで品種改良があり、作りやすくて病気になりにくく、食べやすいものが残っていますね。天王寺蕪(てんのうじかぶら)もかっこいい形がありますが、だいたい割れていて料理屋さんで扱いにくいものが多いのが現状です。こだわっている料亭では農家さんと一緒に取り組んでいますね。
司会 昆布などおだしのこだわりについてはどうですか?大阪のスーパーでの昆布の品揃えにびっくりしました。
北岡氏 関東は千葉で良質な醤油を造っていた一方で、関西に昆布が集約していました。昆布とだしの合わせ技が関西食文化のベースになっているのではないでしょうか。
M三郎氏 関西のラーメン屋さんはスープのだしに非常にこだわっていて何種類も魚介のだしを作っています。東京はだしよりも麺文化なのではないでしょうか。麺というと、関西はうどんですがが東京はそばですよね。
司会 大阪というと薄口醤油が多いイメージですが、実際のご家庭はでは濃口が8割と聞きました。
田辺氏 両方置いていますが、圧倒的に濃口ですね。もしくはだし醤油を使っています。主婦の方はだしをとっている方も多いですよ!
里井氏 カツオ削る人は少ないですが、昆布をちょきちょき切っている人は多いのでは?
司会 あと、関西で「お肉」というと牛肉のイメージがありますよね。なぜ豚より牛なのでしょうか?
里井氏 ほんとですね。なぜでしょう。言葉の使い方も違いますよね。特に東京で「カツ」というと、豚のカツを思い浮かべますが、関西ではビーフカツを思い浮かべる方が多いかと思います。
寺西氏 三田屋では、ヒレ肉かサーロインが中心ですね。一口大にした状態で鉄板にのせて、お客様が焼いて仕上げるスタイルが伝統です。そして、ハムも名物の一つでドレッシングが合わさると美味しいですよ。先代がドイツに留学して本格的に学んで三田屋をオープンしました。今は関西圏でしか召し上がっていただけないです。
里井氏 関東は脂があついイメージですが、関西はヒレのイメージですね。
(乾杯:黄桜さんのルビーエールを飲みつつ)京都のブルワリー「黄桜」のJ-CRAFT 豊香のルビーエールをいただきます。
全員 美味しい!!
里井氏 甘い味やパンチのあるお肉にも合いそう。個性があるようでいろんなものとなじむ魅力がありますね!
北岡氏 豊香のルビーエールは濃くて飲みにくいという意見もありますが、色の割にはすっと入りますよね。
M三郎氏 ルクアのフードコートに置いています。フードコート内ですぐ飲めますよ!
今の関西の食文化について
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