あなたの街の居酒屋で、隣の街の小洒落たバーで。
誰もが名を知るチェーン店から、名も無き小さな路地裏の店まで。
日本全国津々浦々、あらゆる街の、あらゆる酒場で、
毎日毎夜生まれては消えていく、
お酒がとりもつ一瞬の景色を切り取ります。
名古屋駅から市営東山線で約10分。静かな住宅街・高畑にあって、今年で10周年を迎えるという和風居酒屋「 ちょいから 」。
「この辺りは高畑という名前の通り、昔から畑や田んぼだらけの土地なんです。地下鉄が通るようになってから、やっとお店が増えたんですよ」と言うのは、生粋の地元民であるお店の大将、村田広喜さん。
「ちょいから」の目玉メニューである新鮮な旬のお刺身は、毎朝、大将自ら市場で仕入れたもの。お店をオープンするまでの2年間、名古屋の卸売市場で働いていたという大将。その目利き力で選ばれた鮮魚を楽しみに通うお客さんは多い。
▲写真左・日替わりのおすすめメニュー。10年前のオープン時に描いてもらったという大将の似顔絵に注目! 写真右・軽快なトークで接客する大将の村田さん。
来店するお客さんのほぼ全員が注文するという「刺身の盛り合わせ」は、その日の朝に市場で仕入れたものによって変わる日替わりメニュー。この日は、トロサーモン、北海だこ、つぶ貝、ヒラメ、キハダマグロ、アイナメなどが並んだ。天然ものにこだわった鮮度の良い旬の魚は、脂がのって旨みがありどれも抜群に美味しい。
そんな新鮮なお刺身の味をさらに引き立てるのが蔵しぼり生酒「8PM」。特に、白身魚の繊細な味と、しっかりとした旨みのある純米吟醸は相性が良く、余韻も心地いい。温かい店内でキリッと良く冷えた生酒を飲むひとときは、ほのかな吟醸香とともに、気分まで贅沢にしてくれる。
▲脂ののったトロサーモンは、炙りにして出すことも。
「ちょいから」では、生酒を一升瓶ではなく4合瓶で提供。「生酒は、フレッシュ感と香りが命です。開封後もなるべくいい状態で飲んでもらうため、早く飲み切れるように4合瓶を選びました」と村田さん。お刺身も生酒も鮮度を大切にして、最良の状態を見極めて提供してくれる心意気がうれしい。
お店のもうひとつの名物は「どて揚げ」。名古屋名物のどて煮と大阪名物の串カツをミックスした「ちょいから」のオリジナルメニューだ。どて煮は、牛スジや豚モツを八丁味噌などを使い、煮込んだもの。「どて揚げ」は、そのどて煮を揚げたもの。やわらかく煮込まれて串に刺さりづらくなってしまった肉を、バラして蒸して固めるなどの工夫と改良を重ねて完成した大将自慢の一品なのだ。
▲濃厚で甘辛いどて煮を、カリッとした衣に包んだ「どて揚げ」。からしマヨネーズとの組み合わせもクセになる。
名古屋名物の手羽先も、少しスパイシーな「ちょいから」流で、お酒がすすむ。比較的味の濃い、揚げ物などの料理も、和食で腕を磨いた大将の手にかかると、どこか上品な味わいに。軽快な香りの奥に米の旨みが感じられる純米吟醸の蔵しぼり生酒「もだん」なら、口のなかをほどよくリセットし、また違った相性を楽しませてくれる。ジャンルを問わずに、多彩な料理に寄り添うことができる万能な一杯だ。
▲オリジナルの魚粉と塩をブレンドした「手羽先唐揚げ 和風SIO(しお)」
ガッチリ鍛えた体格で日本男子の風格ある大将だが、実は甘いものが好き。「もともと和食ではなくお菓子づくりに興味があって、パティシエになりたかったんですよ」という意外な一面も。そんな大将が趣味で続けてきたというデザートメニューもぜひ試してほしい。愛知県西尾産の抹茶でできた「濃い抹茶のカタラーナ」は、アイスクリームのような生地に、甘くてパリパリのカラメルソースがのったもの。お茶の甘みと渋みがバランス良く、〆にもぴったり。女性にも好評なのだとか。
▲研究熱心な大将オリジナルの「濃い抹茶のカタラーナ」。もともとカタラーナは、スペイン・カタルーニャ地方のデザートだ。
和食に少しスパイスをきかせた「ちょいから」風の料理の数々は、お店を始めてからの試行錯誤でうまれたもの。今後も、和がらしや柚子胡椒、青唐辛子など、和の辛さを生かした「ちょい辛」なメニューを増やしていく予定だとか。
お店には、17時のオープンとともに来店して、閉店の0時までゆっくりと会話やお酒を楽しむ地元の方も。お酒の飲める店が少ないという高畑駅周辺。村田さんは、和食のお店やさまざまな飲食店で修行をしていた時代から、独立するときは地元の人が集まれるお店にしようと心に決めていたそう。和の趣きある店内には、そんな村田さんの温かい人柄が感じられる、優しい雰囲気が漂っている。
▲写真左・大将とスタッフが笑顔で迎え入れてくれるカウンター席。写真右・お店の奥にある座敷席は、仕切りを外して10名〜20名などの団体客も対応可能。
福光屋
8:00pm 純米吟醸 生酒
720ml
朝日酒造
もだん 純米吟醸 生酒
720ml