農口尚彦研究所とは? “酒造りの神様”と呼ばれる農口尚彦氏の偉業やこだわり、醸した日本酒の特徴を紹介

農口尚彦研究所とは? “酒造りの神様”と呼ばれる農口尚彦氏の偉業やこだわり、醸した日本酒の特徴を紹介
出典 : Luce / PIXTA(ピクスタ)

農口尚彦研究所は、伝説の杜氏・農口尚彦氏の技術の継承を目的に誕生した酒蔵。石川県小松市観音下町(かながそまち)の山里で、おいしいお酒を醸しています。今回は、農口尚彦氏の偉業やこだわり、醸した日本酒の魅力や、農口尚彦研究所のおすすめ商品などを紹介します。

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農口尚彦研究所は2017年に石川県で創業した日本酒蔵。比較的新しい蔵元が日本酒ファンの熱視線を浴びる理由や、伝説の杜氏が貫く酒造りのこだわりなどを紐解きます。

農口尚彦(のぐちなおひこ)氏とはどんな人? “酒造りの神様”の異名を持つ伝説の杜氏

農口尚彦氏は酒造りの神様と呼ばれる伝説の杜氏

shige hattori / PIXTA(ピクスタ)

農口尚彦研究所とは、農口尚彦氏の名を冠した研究所ですが、そもそも農口尚彦氏とはどのような人なのでしょうか。

農口尚彦氏は、昭和7年(1932年)に現在の石川県・能登町に生まれ、16歳から酒造り一筋に生きてきた伝説の杜氏。静岡県や三重県の蔵元で経験を積み、28歳の若さで菊姫(石川県)の杜氏に就任。以来、「おいしい酒を造りたい、飲む人に喜んでもらいたい」という一心で酒造りに向き合い、日本酒の発展に貢献してきました。

広く知られている農口氏の功績に、以下のようなものがあります。

◆吟醸酒を研究し、ブームの火つけ役に
◆手掛けた大吟醸酒がJALのファーストクラスに日本酒として初めて導入される
◆失われかけていた山廃仕込み復活の立て役者
◆全国新酒鑑評会で最高12回連続、通算27回金賞受賞


このほかにもたくさんの美酒を世に送り出し、現代の日本酒造りに、さらには日本酒文化に多大な影響を与えてきました。

平成9年(1997年)には最初に杜氏として就職した石川県の菊姫を65歳で退職しましたが、同年、加賀の鹿野酒造の杜氏に就任。平成18年(2006年)、厚生労働省「卓越した技術者(現代の名工)」に選定され、平成20年(2008年)には黄綬褒章を受章しています。

平成22年(2010年)3月、NHKの人気ドキュメンタリー番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』が「魂の酒 秘伝の技」と題して農口氏の仕事現場に密着。その仕事を掘り下げてからは、その名は全国に広まっていきました。

農口氏は現在も能登杜氏四天王の1人として知られ、“酒造りの神様”“日本酒の神”として語り継がれています。

農口尚彦研究所は2017年に創業した石川県の蔵元

農口尚彦研究所は小松市観音下町の蔵元

キタデザ(北村笑店) / PIXTA(ピクスタ)

ここから先は、農口尚彦研究所についてみていきましょう。

農口尚彦研究所は農口尚彦氏の技術や生き様を未来に継承すべく誕生

令和5年(2023年)12月で91歳になる農口尚彦氏。80歳を迎えた平成24(2012年)年に引退したものの、翌年には農口酒造の杜氏に就任。2年で退社するも、2年後の2017年には、農口尚彦研究所に杜氏として招かれます。すでに84歳になっていた農口さんが現場に戻ることを決意したのは、酒造りに関わるのはもちろんですが、若手杜氏を育成するためでもありました。

農口尚彦研究所は、長きにわたって酒造りに人生を捧げてきた農口氏の精神と技術にほれ込んだ蔵元が、その生き様を未来に残したいという思いから、平成29年(2017年)に誕生。研究所としての側面もありますが、日本酒造りを行う酒蔵としても稼働しています。

農口尚彦研究所は美しい自然が残る小松市観音下町にある

農口尚彦研究所があるのは、石川県小松市観音下町(かながそまち)という自然に恵まれた山里。町名の由来である観音山(かなんぼやま)の山頂に祀られた観音様と向かい合う位置に研究所はあります。農口尚彦氏と選ばれし若き蔵人たちは、この地に湧き出る白山の伏流水を仕込み水に、日々酒造りに励んでいます。

農口尚彦研究所の酒造り

農口尚彦研究所の酒造り

Benjamin Lissner / Shutterstock.com

農口尚彦研究所の酒造りのこだわりと、酒造りの神様が育むお酒の特徴などをみていきます。

農口尚彦氏が次世代へ受け継ぐ技術と酒造りに懸けるこだわり

農口尚彦氏が未来の杜氏たちに受け継ぐのは、氏が70年以上かけて培った技術と精神。情熱を持って日本酒造りにのぞむ若者たちとともに米や酵母、水、そして気候と向き合いながら、そのまなざしと一挙手一投足で伝えていきます。

新しい技術は積極的に導入してきましたが、テクノロジーを取り入れるところと、人が手をかけるべきところは明確に線引きする。それが農口さんの流儀。完全手造りの時代から数値を分析し続け、近年は最新技術を用いたデータも取り入れながらおいしいお酒を醸していきますが、人の手が必要なところにはとことん目をかけ、妥協することはありません。

技術の伝承はもちろんのこと、農口尚彦研究所が重要視しているのは、農口氏の生き様を次世代に伝えること。愛情を持って醸し、自分を犠牲にしてでもお酒と向き合う。そんな農口氏の姿勢は、匠の技とともに脈々と受け継がれ、日本酒の文化を支えていくことでしょう。

農口尚彦研究所の酒造りに対するこだわり

NOV / PIXTA(ピクスタ)

農口尚彦研究所がめざす酒の特徴と評価

農口氏が手掛けてきた名酒は、「飲む人が喜んでくれるお酒」をめざした結果、生まれたもの。農口氏の功績として挙げられる山廃仕込みの復活にしても、東海地方から北陸へ移り住んだ氏が、寒い地域の人々がおいしいと感じる酒質を一から追究し、研究を重ねた末に誕生したものです。

山廃仕込みは濃醇なコクとキレのよさが魅力のお酒ですが、濃い酒をめざしたのは、農口氏のお酒を飲む地域の人々がそれを求めていたからです。地域が違えば、好まれるお酒も違う。生活スタイルが変化すれば、求めるお酒のタイプも変わってくる。大切なのは、飲む人が本当にうまいと思うお酒を造ること。これこそが、農口尚彦研究所がめざすお酒の特徴といえるでしょう。

「賞をもらうよりも、飲む人にうまいといってもらえることがうれしい」と農口氏はいいます。そんな農口氏が大切にしているのは、米の旨味と絶妙なキレ味。原料米の旨味がしっかり感じられて飲み飽きしない、心地よく余韻が残ってすぐまた飲みたくなるような酒質をめざしているそう。

農口氏が手掛けた日本酒は、全国新酒鑑評会で連続12回を含む、通算27回の金賞を受賞していますが、農口尚彦研究所としては、内閣府や農水省、経産省などが後援する「ふるさと名品オブ・ザ・イヤー」で、クラウドファンディング部門賞に輝くなど、高い評価を得ています。

農口尚彦研究所のおすすめラインナップと味わいの特徴を紹介

農口尚彦研究所のおすすめラインナップ

kaka / PIXTA(ピクスタ)

農口尚彦研究所のラインナップのなかから、おすすめ商品と味わいの特徴を紹介します。

観音下(かながそ)

研究所がある観音下町の美しい自然風土と大地の恵みを農口尚彦氏の感性で表現。穏やかな香りとなめらかな口当たりに仕上げています。旨味や酸味など五味のバランスが絶妙で、静かに消えていく余韻も魅力です。冷酒や熱燗など、さまざまな飲み方で味わえるほか、幅広い料理とのペアリングがたのしめます。

YAMAHAI GOHYAKUMANGOKU 2018 vintage

寒冷地向きに開発された酒造好適米「五百万石」を原料に、山廃仕込みで仕込んだ無濾過生原酒のヴィンテージ酒。オレンジを想わせる甘酸っぱい香りとクリーミーなコクが特長で、複雑かつ重厚感のある味わいながら、スッキリとキレるのどごしも魅力です。脂っこい料理とも相性がよく、20度前後の常温から50度程度の熱燗まで、幅広い温度帯でたのしめます。

DAIGINJO YAMADANISHIKI 2018 vintage

“酒造りの神様”が酒米の王様「山田錦」を原料に醸した純米大吟醸の無濾過生原酒。農口尚彦研究所ブランドの最高峰ともいうべき逸品で、ライチやパパイヤ、パイナップルのような芳醇かつさわやかな果実香と上品な酸味、透明感のある旨味が特徴です。また、長く心地よく続く余韻も魅力で、淡白で繊細な味わいの和食と合わせれば、極上のマリアージュがたのしめます。気品のある香りを堪能するなら、ワイングラスでいただくのがおすすめ。

農口尚彦研究所のお酒はオンラインストアでも購入可能ですが、「杜庵」と呼ばれる茶室をイメージした研究所併設のテイスティングルームでたのしむこともできます。農口尚彦氏の醸したお酒を飲み比べてみたい人は、ぜひ現地を訪れてみてください。

製造元:株式会社農口尚彦研究所
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