焼き芋焼酎で名高い鹿児島酒造は黒瀬杜氏の系譜を受け継ぐ伝統の焼酎蔵【焼酎用語集】

焼き芋焼酎で名高い鹿児島酒造は黒瀬杜氏の系譜を受け継ぐ伝統の焼酎蔵【焼酎用語集】
出典 : KPG_Payless/ Shutterstock.com

鹿児島酒造は、明治半ばごろから昭和中期にかけ九州各地や中国地方で活躍した伝説の杜氏集団、「黒瀬杜氏」の流れを汲む焼酎蔵です。今回は、「やきいも黒瀬」や「さつま諸白(もろはく)」で知られるこの蔵の歴史やこだわり、おすすめ銘柄などを紹介します。

  • 更新日:

鹿児島酒造の歴史と功績

鹿児島酒造の歴史と功績

TungCheung/ Shutterstock.com

鹿児島酒造が蔵を置く阿久根とは

鹿児島酒造は、鹿児島市名山町に本社を置く蔵元です。鹿児島酒造が蔵を置く阿久根市は、古くから陸上交通や海上交通の要衝として栄えた土地で、琉球や東南アジアなどと交易を行い、1500年頃から焼酎造りが行われてきました。この地で造られた焼酎は「阿久根焼酎」と呼ばれ、重宝されていたといいます。2代目薩摩藩主島津光久が阿久根を訪れた際には、献上された阿久根焼酎を「諸白(上等の酒)」と称し、讃えたとのエピソードも残っています。江戸時代には国分煙草(こくぶたばこ)と並ぶ薩摩藩の名産とされ、江戸では灘の酒以上の高値がつくこともあったそうです。

鹿児島酒造は黒瀬杜氏の系譜を継ぐ焼酎蔵

阿久根に蔵を構える鹿児島酒造に質の高い技術を伝えたのが、黒瀬杜氏の系譜を汲む黒瀬安光(くろせやすみつ)氏です。黒瀬杜氏とは、明治30年代に南さつま市笠沙(かささ)町に誕生した伝説の杜氏集団のこと。黒麹を使用し、二次仕込み法を確立するなど焼酎の製造技術を飛躍的に進化させたことで知られています。安光氏は、その創設期のまとめ役であった黒瀬金次郎の三男にあたります。

昭和42年(1967年)、安光氏は30歳で鹿児島酒造の阿久根工場初代杜氏に就任。以来、真摯に酒造りに取り組み続け、「現代の名工」や「黄綬褒章」など数々の栄誉に輝きました。平成30年(2018年)に81歳でこの世を去るまで、「焼酎造りにゴールはない」という想いで焼酎を醸し続けたといいます。

安光氏亡き今は、黒瀬杜氏の厳しい指導のもとで伝統の製法を学び、技を磨いてきた弓場裕(ゆみばゆたか)氏が2代目杜氏に就任。平成25年(2013年)に阿久根工場から改称された「黒瀬杜氏伝承蔵」で、酒造りに邁進しています。

黒瀬杜氏伝承蔵の功績

鹿児島酒造初代杜氏の黒瀬安光氏は、阿久根工場に定着するまで、さまざまな場所で技術を磨いてきました。昭和35年に黒瀬純系の杜氏となる前は、九州各地の蔵で焼酎造りの技術を会得。杜氏に就任してからは、約7年間、九州全県で芋、麦、米など原料を問わずに焼酎造りを手がけました。それから、焼酎の製造技術だけでは飽き足らず、麹の神様・河内源一郎氏の娘婿で2代目河内源一郎を襲名した山元正明氏に師事し、麹造りの奥義を学んだのです。

安光氏は、極めた技術をもとに、白麹や黒麹、黄麹をはじめ、S型白麹、G(ゴールド)型白麹、ネオマイセル吟醸麹など多数の麹菌を操り、表情豊かな焼酎を生み出してきました。安光氏が開発した「やきいも黒瀬」「元祖やきいも」は、当時、革新的な技術として注目を集め、今も多くの人に支持されています。

「黒瀬杜氏」が“伝説の焼酎杜氏”と呼ばれる理由に迫る!【焼酎用語集】
河内源一郎氏が「近代焼酎の父」と呼ばれる理由とは? 【焼酎用語集】

「やきいも黒瀬」で知られる鹿児島酒造のこだわり

「やきいも黒瀬」で知られる鹿児島酒造のこだわり

sasaken/ Shutterstock.com

和を重んずる造りからおいしい焼酎が生まれる

鹿児島酒造では、社是に西郷南洲(西郷隆盛)の「敬天愛人」を掲げています。初代杜氏の黒瀬安光氏も、「和」から生まれる焼酎造りを重視していました。安光氏がもっとも大切にしたのが、従業員の和だったといいます。蔵人が一体となって笑顔でおいしい焼酎を育む。そうすることで、飲む人にも笑顔と幸せを届けることができると考えたのです。

このような、「和を重んずる造りからおいしい焼酎が生まれる」という信念のもとで生まれたのが、焼き芋焼酎「やきいも黒瀬」。老若男女に愛され続けるその味は、飲む人を笑顔にする魅力にあふれています。

鹿児島酒造の麹米へのこだわり

鹿児島酒造の黒瀬杜氏伝承蔵では、麹米にもこだわり、外国産と国産の2種類を使用しています。

外国産はタイ産米を使用。タイ米は国産米に比べてねばりの少ない蒸し上がりになるため、麹菌が米の中心まで浸透しやすいといわれています。蔵元は、このタイ米の品質検査も徹底して実施。現地と国内で安全が確認されたものを、精米を委託している加工場でもう一度チェックし、クリアしたものだけを厳選・使用しています。また、国産米は、華麗米(かれいまい)を中心に、鹿児島県内で栽培管理された「米こうじ好適米」を使用しています。

このように、麹米にもこだわった焼酎造りによって、旨い酒を醸し続けているのです。

鹿児島酒造のおいしい焼酎を飲み比べ

鹿児島酒造のおいしい焼酎を飲み比べ

kai keisuke/ Shutterstock.com

豊かな香りとやさしい甘味の焼き芋焼酎の特徴と魅力

薩摩焼酎の300年の歴史のなかで、どこよりも先駆けて焼き芋焼酎を造ったのが鹿児島酒造です。なかでも「やきいも黒瀬」は、「鹿児島酒造といえば焼き芋焼酎」といわしめるほど人気を集めています。

「やきいも黒瀬」は、黄金千貫(こがねせんがん)を主原料に、タイ産の米こうじ好適米と白麹菌で仕込んだ米麹を使用し、飲みやすく仕上げられた、誰からも愛される人気の1本です。その魅力は、焼くことで強調されたさつまいも由来の豊かな香りと、やさしい甘さにあります。香りを堪能するならお湯割りで、甘味に酔いしれるならロックでたのしんでみてください。

華やかな香りが好きな人は季節限定品の「やきいも黒瀬 紫」、焼き芋焼酎ならではの香味を満喫したい人には、アルコール度数37度の「やきいも原酒」もおすすめです。

こだわりの芋焼酎を飲み比べ

鹿児島酒造が手がける商品には、焼き芋焼酎以外にも魅力的な銘柄がたくさんあります。そのなかから、おすすめの芋焼酎を紹介しましょう。

【さつま諸白(もろはく)】

阿久根焼酎の伝統製法と黒瀬杜氏伝承の技が生んだ鹿児島酒造の代表銘柄。芳醇な香りと、白麹らしいまろやかな飲み口が心地よい酔いに誘います。平成26年度熊本国税局鑑評会「優秀賞」受賞。

【黒瀬安光(くろせやすみつ)】

初代杜氏の名を冠した銘柄。原料臭を和らげ、強い甘味を引き出すS型白麹と、清酒用の黄麹から培養した「ネオマイセル吟醸麹」で仕上げた極上品です。芳醇な香りとやわらかなのどごし、まろやかな甘味をたのしめます。

【竹香蔵(たけかぐら)】

江戸時代から伝わる仕込み方法に、黒焼きにした笹の葉を詰めた絹袋をもろみに入れる方法があります。これに倣って、現代の技術で竹炭を粉にし、さつまいもとともに仕込んだのが芋焼酎「竹香蔵」です。素直なのどごしがたのしめる、すっきりとした味わいに仕上がっています。

【初光(はつひかり)】

飲みやすさとコスパのよさで選ぶなら、乙類甲類混和焼酎の「初光」がおすすめ。地元のファンに愛されてきた、まろやかな口当たりの1本です。

鹿児島酒造は、初代黒瀬杜氏のもと、焼き芋焼酎をはじめ旨い焼酎を醸してきた蔵元です。商品ラインナップには、ここで紹介した銘柄以外にもこだわりの芋焼酎や麦焼酎など趣向の異なる焼酎がズラリ。原料や麹、製法から、ぜひお気に入りを探してみてください。

製造元:鹿児島酒造株式会社
公式サイトはこちら

おすすめ情報

関連情報

焼酎の基礎知識

ビア検(日本ビール検定)情報

イベント情報

おすすめ情報

Ranking ランキング

おすすめの記事