東京・brew lounge市ヶ谷/Made in Tokyoのクラフトビールを飲み、Myジンを創る

東京・brew lounge市ヶ谷/Made in Tokyoのクラフトビールを飲み、Myジンを創る

東京・市ヶ谷で営む『brew lounge(ぶりゅー・らうんじ)市ヶ谷』。カウンターのタップから注がれるクラフトビールとオリジナルクラフトジンが評判のビアパブです。じつはどちらも、都内の自社工場で製造しているMade in Tokyo! お店と工場を訪ね、その魅力をレポートします。

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東京のど真ん中で味わう多彩な自社製造ビール

コンセプトは、“市ヶ谷で一番フレッシュな「乾杯」ができるお店”。

コンセプトは、“市ヶ谷で一番フレッシュな「乾杯」ができるお店”。

2019年12月にオープンしたbrew lounge市ヶ谷は、春になると桜が咲き誇る外堀の近くにたたずんでいます。オフィスビルが多いエリア中で目立つのが、ヨーロッパで見かけるような石造りの堅牢な外観。扉の向こうのどんな空間が広がっているのか期待が高まります。

外壁に埋め込まれたプレート。ビール好きを笑顔にしてくれます。

外壁に埋め込まれたプレート。ビール好きを笑顔にしてくれます。

店内はカウンターとテーブル席に個室もあり、天井が高くて開放的。席の間隔も大きく取られているので、ゆったりと過ごせそう。ドイツのビアホールのようなガヤガヤと賑やかな空間を想像していましたが、静かにビールと料理に向き合える雰囲気ですね。

整然とタップが並ぶカウンター席。

整然とタップが並ぶカウンター席。

ペパーミントグリーンの壁がスタイリッシュなテーブル席。

ペパーミントグリーンの壁がスタイリッシュなテーブル席。

外光が入り、木の温もりが感じられる個室も。

外光が入り、木の温もりが感じられる個室も。

数えたところ、カウンターに設置されたタップ(樽からの注ぎ口)は10。
「常時7~8種類のクラフトビールを用意しています」とオーナーシェフであると同時に店のすべてを切り盛りされている宮智彦(みや・ともひこ)さん。

オーナーシェフの宮さん(右)と、セカンドシェフの高瀬嘉一(たかせ・よしかず)さん(撮影時のみマスクを外しています)。

オーナーシェフの宮さん(右)と、セカンドシェフの高瀬嘉一(たかせ・よしかず)さん(撮影時のみマスクを外しています)。

この日に提供されるビールの名前が黒板に記されていましが、最初から読んでいくと、『市ヶ谷ペールエール』『番町IPA』『千代田ヴァイツェン』…ほとんどに付近の地名が入っているじゃありませんか!

「はい。当店でお出ししているビールはすべて都内にある自社の工場で造ったオリジナルなんですよ」とにっこり。そう、こちらは東京のど真ん中という立地でMade in Tokyoのビールをたのしめるという、なかなか貴重な店なのです。

名称に続いて苦さの目安となるIBUの数値とアルコール度数が併記されています。

名称に続いて苦さの目安となるIBUの数値とアルコール度数が併記されています。

さらに特筆すべきが昨今ブームのクラフトジンまで置いてあること。しかもこちらもオリジナルで、ビールと同じ工場で造っているのだとか。次章ではこれらのビールとジンを製造している工場に伺います。

ビールはもちろんジンも都内で造っているんです。

ビールはもちろんジンも都内で造っているんです。

ビールを造っているのは“羽田”の隠れ家的工場

「手作業で仕込むことで味わいを微妙に調整できます」と野呂さん。

「手作業で仕込むことで味わいを微妙に調整できます」と野呂さん。

向かった先は、羽田麦酒(はねだびーる)。営業部長でありながら醸造長も任されている野呂駿佑(のろ・しゅんすけ)さんが迎えてくれました。名前は“羽田”ですが、工場があるのは大田区の多摩川沿いで、蒲田の近く。閑静な住宅街にある小さなビルの1階です。

「東京の玄関口・羽田空港が近いので、このネーミングに。インバウンドの方に日本のビールをアピールしたいという意味も込めているんですよ」。
なるほど製造販売しているボトルビールのラベルには、東京の観光名所とともに愛らしい飛行機の姿が描かれています。

キュートでカラフルなラベルが目を引きます。

キュートでカラフルなラベルが目を引きます。

寄ってみると東京の上空を飛ぶ飛行機の姿が。

寄ってみると東京の上空を飛ぶ飛行機の姿が。

羽田麦酒が醸造をスタートしたのは2014年12月のこと。創業者で現在取締役の鈴木祐一郎(すずき・ゆいいちろう)さんは東京農業大学で醸造を学び、『銀河高原ビール』のプラントの起ち上げや銀座で自家製の地ビールを出す有名店『八蛮(はちばん)』の初代ブルワーを務めたという人物。

「社労士の資格を持ち、ビール工場のコンサルティングなどをやっていたんですが、自分のビール工場を持ちたいという気持ちが高じて、このブルワリーを開業したんです」。

地元の商店や企業などからのオーダーなどを受けて製造していたそうですが、より多くの方々にクラフトビールをたのしんでもらいたいとグループ会社がオープンしたbrew lounge市ヶ谷にオリジナルビールを供給することになったのだとか。

そのタイミングで、以前は『横浜ビール』で働いていた野呂さんも営業担当として入社。2019年の暮れから醸造も担当、クラフトジンの製造と合わせると“三足のわらじ”⁉ というご活躍ぶり。この後は野呂さんとともに市ヶ谷へ戻り、実際にビールとジンの味わいと食との相性を確かめます。

1回の仕込みが150ℓという小規模ブルワリー。熟成の時を経て出荷されます。

1回の仕込みが150ℓという小規模ブルワリー。熟成の時を経て出荷されます。

市ヶ谷の店へは、こちらの樽で運びます。

市ヶ谷の店へは、こちらの樽で運びます。

多種多彩なオリジナルビールとおすすめ料理

すべて飲みたくなるような、個性豊かなラインナップ。

すべて飲みたくなるような、個性豊かなラインナップ。

再びbrew lounge市ヶ谷。野呂さんが醸すビールのコンセプトは
「食事と合わせやすいビールです。すっきりした味わいを表現しているものが多いですね」。
具体的には糖化温度や発酵温度を調整して、甘味と苦味のバランスが取れたビールに仕上げているそうです。

取材当日は7種類のビールが用意されていましたが、今回は3種類を紹介。宮さんにはそれぞれに合うメニューをセレクトしていただきました。宮さんはイタリアンのシェフなので、基本的にはイタリア料理ですが、
「最近厨房に加わった高瀬は和食の出身なので、和のエッセンスも取り入れています」。

ペールエール×ピザ

『市ヶ谷ペールエール』(1000円/1パイント)。

『市ヶ谷ペールエール』(1000円/1パイント)。

ずばり“市ヶ谷”の名を冠した定番のペールエール。カスケードホップによる柑橘類系の華やかな香りがある「しっかりした苦味を持つアメリカンペールエールです」(野呂さん)。

登場した料理はピザですが、あまり見たことのない具材が…。
「岩海苔とタマネギです。生クリームで仕上げているから白いんですよ。ビールの苦味を、クリームの甘味が穏やかにしてくれる組み合わせですね」(宮さん)。
ちなみに料理名の「パンナ」とは“生クリーム”のことです。

『岩海苔とタマネギのピッツァパンナ』(1080円)。

『岩海苔とタマネギのピッツァパンナ』(1080円)。

セッションIPA×レバー

『セッションIPA』(1000円/1パイント)。

『セッションIPA』(1000円/1パイント)。

香りと苦味がかなり強いことで知られるIPA(インディアンペールエール)ですが、
「こちらは苦味はそのままですが、アルコール度数を下げて飲みやすくしてあります」(野呂さん)。

爽やかで切れ味のある飲み口に合わせたのは、フレッシュな生レバーの食感を大切にするために低温調理したひと品。マルサラソースの甘さが、ビールの苦味を和らげてくれました。

『とろとろレバーのマルサラソース』(580円)。

『とろとろレバーのマルサラソース』(580円)。

ポーター×牡蠣

『九段ポーター』(1000円/1パイント)。

『九段ポーター』(1000円/1パイント)。

イギリス生まれの黒ビール・ポーター。見た目通りしっかりとしたボディですが、それと裏腹なフルーティーな香りもあって、複雑な味わい。隠し味に沖縄産の黒糖を用いているそうです。

青森産の牡蠣はアンチョビとバターにスルメイカの肝を混ぜた肝バターでソテー。和を感じる仕上がりになっていました。「焦がしバターが黒ビールの香ばしさに合う」(宮さん)というペアリングに納得です。

『牡蠣のソテー』(880円)。

『牡蠣のソテー』(880円)。

オンリーワンのジンを創って味わえるのも魅力

キットを使って、自分だけのジンを調合できます。

キットを使って、自分だけのジンを調合できます。

最後に紹介するのはクラフトジン。まずジンとはどんなお酒か復習しましょう。

ジンとはスピリッツに分類される酒で、醸造酒からアルコール分を蒸留した蒸留酒のカテゴリーに属します。

ハーブや果実、スパイスといったボタニカルを加えて蒸留し香りを抽出しているのが特徴。松のような香りのあるジュニパーベリーをベースにし、ほかのボタニカルは自由に用いて香りや味を表現しています。

こちらでは野呂さんが調合したジンが味わえるほか、『テイスティングコース』(90分1500円)を頼めば10種類以上のフレーバーのついたジンを自分の好みで調合して飲むことができます。もし気に入ったジンができたら、200CCのボトルを購入して持ち帰ることも可能なのです(追加料金2500円)。

ジュニパーベリーをベースにして、気になるフレーバーをチョイス。

ジュニパーベリーをベースにして、気になるフレーバーをチョイス。

ボタニカルそのものの香りを体験することもできます。

ボタニカルそのものの香りを体験することもできます。

『BATH LAB GIN』というネーミングが気になったので尋ねてみたら、
「禁酒法の時代にバスタブでジンを密造していたというエピソードが残されていて、それを引用させていただきました」と野呂さん。ちなみに“LAB”は“laboratory(ラボラトリー)”で、研究所や実験室の意。センスを感じる名前ですね!

ちなみに東京都のヒノキとスギを原料とし、まるで森林浴をしているかのようなフレッシュな香りがたのしめる『BathLabGin #002 ~奥多摩の香り~』は、クラウドファンディングという形で支援を集めています。

クラウドファンディングの詳細はこちら(2021年3月末で終了)

桜葉のフレーバーが心地よい“野呂スペシャル”は1杯580円。ロックのほか、ストレートやソーダ割りなど飲み方は自由。

桜葉のフレーバーが心地よい“野呂スペシャル”は1杯580円。ロックのほか、ストレートやソーダ割りなど飲み方は自由。

ビールと同様に、宮さんにお願いしてジンに合う料理も用意していただきました。
「フライドチキンなんですが、うちのは鶏もも肉のコンフィを揚げているんです。食感がホクホクして身離れがいいんですよ」と宮さん。

このペアリングのポイントは、「料理にハーブが効いているところですね」。
なるほど、ボタニカルという絆で結ばれた組み合わせなのでした。

『フライドチキン』(1280円)。揚げ物には“泡”で、ソーダ割りに。

『フライドチキン』(1280円)。揚げ物には“泡”で、ソーダ割りに。

“東京発”のビールとジンをたのしめるビアパブはいかがだったでしょうか? お酒に合う料理をすすめていただけるのもポイントが高いですね。個人的にはジンの調合にはまりました。ぜひフレーバーを考えて合わせるという体験にチャレンジしてみてください。

※価格やメニューは取材時のもの。すべて税抜き価格です。

brew lounge市ヶ谷
東京都千代田区九段北4-3-6 カーサフジマ102
TEL/03-6272-3227
営業時間/<月~金>ランチタイム11:30~15:00・ディナータイム 17:00~23:00<土のみ>ランチタイム11:30~14:30・ディナータイム 17:00~22:00
定休日/日・祝
アクセス/ 都営地下鉄新宿線「市ヶ谷」駅より徒歩3分ほか

※定休日や営業時間などは新型コロナウイルス感染症対策で変更になる場合もあるので、事前に確認を。

brew lounge市ヶ谷の詳細はこちら

ライタープロフィール

とがみ淳志

(一社)日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート/SAKE DIPLOMA。温泉ソムリエ。温泉観光実践士。日本旅のペンクラブ会員。日本旅行記者クラブ会員。国内外を旅して回る自称「酒仙ライター」。

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